速読は実在するのか? ②ひらがな飛ばしに挑戦
「速読なんて、無理無理」とは思うものの、できるものなら身に着けたい! せめて「少しは速く」を追い求める企画の第2回です。
余談飛ばしの欠点
前回は長い長い『白鯨』を例に、いわば"余談飛ばし"とでも呼べる方法を紹介しましたが、これにはひとつ欠点があります。あらかじめ著書の方向性がわからないと、どこが余談か見分けられない場合があるのです。あるいは文章が、以前も触れた読みやすい文章特有の文体(=先に読者の関心をひいて、あとで説明するスタイル)になっていればいいんですけどね。
でも、おもしろく読める本ならむしろじっくり読みたいくらいですし、読みにくい本こそ早く読み終えてしまいたいですよね。ところが、読みにくい=関心をひかれない本や文章で"余談飛ばし"すると、うっかり全体を飛ばしてしまいかねません。
ひらがな飛ばしに挑戦
というわけで今回は、関心が薄い文章でも使えるテクニックとして"ひらがな飛ばし"に挑戦します。
ひらがな飛ばしは、その名のとおり文章のひらがなを飛ばして、漢字を中心に目で追っていく読み方です。
「ぼくの意識は、過去と未来をつなぐ力を持っている」を、
「~~~意識~~過去・未来~~~~力・持~~~~」という感じでジャンプしていくわけですね。名詞と動詞のほとんどは抑えられるので、概ね内容をつかめます。
この方法を試してみたのには、2つの理由があります。
ひとつは、脳の一部に障害を負って失読症になったときに、日本人は「漢字の部分だけを認識できなくなるケース」と「ひらがな部分だけを認識できなくなるケース」があるという話を聞いたからです。
表意文字(漢字)と表音文字(ひらがな)の違いなんでしょうね。漢字とひらがな両方の認識には脳の別々の箇所の働きが必要だとすると、日本人は日頃から脳コスト2倍(?)の面倒な文章を読んでいることになります。
そこで、文章を速く読むというよりは、むしろ脳の働きを偏らせることで楽をすれば、読書を気軽にできるのではないかと思ったのです。
なお、英語圏の失読症では一部の文字が読めるという現象はないそうです。ひょっとすると、逆に"脳プリント型の速読"も英語等の文書では可能で、日本語では不可能ということがあるかもしれませんね。特に漢字は"情報圧縮文字"とも言えますから、なかなか瞬時には展開できません。
もうひとつの理由は、あるシンポジウム参加のために集まった日本、中国、韓国の学者3人が、お互いに外国語は話せないが、紙に漢字を書くことで意思疎通を行なえたという話から。日中韓で使う漢字とその文法はまあまあ違うのですが、きっと「空腹」「店探」「求肉」とか書けば通じるのだろうということはわかります。「後甘」も忘れないで!
どちらの話も"又聞き"なので真実性はともかくなのですが、「だったら、ひらがないらないのでは? 漢字だけ読んでみよう」と考える動機としては充分です。
そんなこんなで実際に"ひらがな飛ばし"を試してみると……確かに、かなり速く読めます。
先ほど例に出したように、漢字を追って行けば、多くの主語と動詞を抑えられるので話の概要はわかります。たまに「ん、なんだっけ?」となることはありますが、戻って確認すればいいという感じ。
ただし、本当にひらがな(漢字以外)を読み飛ばせているかというと、実はそうでもありません。漢字から漢字へと視線をジャンプさせるとき、なんだかんだでひらがなやカタカナも目にとまるのです。
例文にあった「ぼく」といった名称にしても、「つなぐ」といった動詞にしても、そこにあるべき主語や動詞が漢字としては見つからなければ、ひらがなを勝手に拾ってしまう感じです。結局、本当に読み飛ばせているのは「てにをは」などの一部の助詞くらいかもしれません。
処理している情報は大して変わらないのに速く読めるのは、おそらく漢字の解読に集中している副作用のようなものだと思われます。表音文字であるひらがなを軽視することで、"脳内音読"をしなくなっているのです。ぼくの周囲にいる読書の速い人たちは、もしたこれに近い読み方をしているのでしょうか?
オンラインゲームで訓練!?
ところでこのひらがな飛ばしは、本だけでなく、ちょうど1年ほど前に始めたMMORPG『ドラゴンクエストX』(ドラクエ10)でも活用しています。初期のドラクエ10のストーリーは手短にわかりやすく伝えるものが多かった気がするのですが、追加ストーリーはかなり冗長なものが多くて困っていたのです。
ドラクエはネタバレ禁止を徹底してきたカルチャーが背景にある(ことに開発者が甘えている)ので、最後の最後にプレイヤーに「アッ」と言わせようとする"オチ偏重"の物語になりがちなので、長い前振りに付き合わなければいけないことがあります。
むむむ。なんだか『白鯨』と似ているような気がしますね。
とはいえドラクエ10はあくまでMMORPGなので、クエストなどの会話をあとからログリストで見返すこともでき、これが都合良いのです。
まずウィンドウに表示されたメッセージをひらがな飛ばしで読んでみて、わからなくなったらログを見返す、ということができるので訓練に最適!
漢字を使えなかったファミコンのドラクエではできないことなので、時代の進歩や技術の発展のありがたみをしみじみと感じています(こんなところで)。
スピードアップの余地
さて、まだまだ"脳プリント型"の速読にはほど遠いのですが、前回の"余談飛ばし"も、今回の"ひらがな飛ばし"も、見る目を養うことで、より読書スピードをアップできる余地がありそうです。
こうなると読みにくい本や関心の薄い本に挑戦したくなるので、常に読書が楽しみで仕方ない状態になります。おかげで読書量が例年の2~3倍になり、近頃は知らなくていいことまで知ってしまうことが増えました。速読を身に着けられるかどうかはともかく、自分にあった読書スピードアップ法を求めることだけでも、それなりの効果が得られるかもしれませんね。
ドラクエ10のようにゲームでも試せる場合があるので、「そもそも読書が苦手」という方も、挑戦してみてください。ドラクエ10は来月、新たな拡張パックが発売されるそうなので、どんな手強い物語が追加されるのか、ぼくも今からとても楽しみにしています。
またなにか、読書スピードを上げられる方法を思いついたら試してみます。みなさんもなにか良い方法を知っていたら、ぜひ教えてください!
(つづく?)
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