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【医師論文まとめ】アルコールによる手袋消毒が感染対策に役立つ可能性!?

はじめに

医療現場における感染対策は重要な課題です。世界保健機関(WHO)では、「5つのタイミングでの手洗い」を推奨していますが、実際の遵守率は低いといわれています。本研究では、5つのタイミング内で手袋内部にアルコール消毒スプレーを使用する試験法の感染防止効果を、従来法と通常行動法と比較することで、新たな感染対策を提案することを目的としています。

方法

試験は2017年3月から2018年12月に、メリーランド大学医療センターなど4か所の医療機関で行われました。対象は631人の医療従事者。無作為に試験法群、従来法群(手袋外での手指消毒後の新手袋使用)、通常対応群の3群に割り付けられました。手袋上の菌植息数と病原菌検出率を主要評価項目とし、質的調査も行いました。統計解析はχ2検定、Mann-Whitney U検定を用いた。本試験はCONSORT基準に則って実施されました。

結果

試験法群と通常対応群を比較すると、手袋上の菌植息数と病原菌検出率は有意に低かったです(p<0.01)。一方、従来法群との比較では統計学的有意差は認められなかったです。試験法では手洗い時間が14秒と短くなり、効率性が高かったです。質的調査では利点として効率性が、懸念事項として手袋の乾き時間と感染防止力不足が挙げられました。

考察

本研究では直接スプレー法は通常行動法よりも感染リスクを低減し、時間もかからない実用的な方法であることが示されました。ただし従来法と同程度の感染防止効果は認められなかったです。日本でも手袋使用が一般的な医療現場にとっては、実用性が高い可能性があります。ただし手袋の微小穴開きリスクも考慮する必要があります。

結論

直接スプレー法は通常行動法より感染予防効果が高く、時間もかからない実用的な手法だが、従来法と同等の効果は認められなかったです。WHOやCDCなどは、単独患者対応中の手洗い機会にこの方法を勧告するべきではないかと考えられます。ただし手袋材質の安全性も考慮すべきでしょう。

感想

本研究は手洗い遵守率が低い現場の感染対策として、新しいアプローチを提案している意義があります。手袋内の消毒法は実用性が高い一方、感染防止効果を高めるためにはさらなる研究が必要でしょう。医療現場の実情も考慮した対策検討が今後の課題だと思われます。

文献

Thom, Kerri A et al. “Alcohol-based decontamination of gloved hands: A randomized controlled trial.” Infection control and hospital epidemiology, 1-7. 23 Nov. 2023, doi:10.1017/ice.2023.243

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