【医師論文解説】大麻使用で喉頭癌リスクが8倍に急上昇!?【Abst.】
背景:
大麻は世界で最も広く使用されている薬物です。
しかし、大麻使用と頭頸部癌(HNC)との関連性については、これまで明確ではありませんでした。
この研究は、大麻使用と頭頸部癌の臨床的関連性を評価することを目的としています。
方法:
この大規模な多施設コホート研究では、64の医療機関から20年分のデータ(2024年4月まで)を含むデータベースを使用しました。研究者たちは、大麻関連障害のある成人と、そうでない成人の医療記録を検索しました。対象者は外来病院クリニックの受診歴があり、頭頸部癌の既往がない人々です。
人口統計学的特性、アルコール関連障害、喫煙習慣に関して傾向スコアマッチングを行いました。その後、頭頸部癌全体およびその部位別のリスク比(RR)を計算しました。さらに、60歳未満と60歳以上の年齢層に分けて同様の分析を行いました。
主要な評価項目は、頭頸部癌全体および各部位の診断でした。
結果:
対象者の特性
大麻関連障害群: 116,076人(女性51,646人、44.5%)、平均年齢46.4歳(標準偏差16.8歳)
非大麻関連障害群: 3,985,286人(女性2,173,684人、54.5%)、平均年齢60.8歳(標準偏差20.6歳)
マッチング後の分析(各群115,865人)
頭頸部癌全体のリスク: 大麻関連障害群は非大麻関連障害群と比較して3.49倍高い(RR 3.49、95%信頼区間 2.78-4.39)
部位別分析
口腔癌: リスク2.51倍(RR 2.51、95%信頼区間 1.81-3.47)
中咽頭癌: リスク4.90倍(RR 4.90、95%信頼区間 2.99-8.02)
喉頭癌: リスク8.39倍(RR 8.39、95%信頼区間 4.72-14.90)
その他、鼻咽頭癌や唾液腺癌でもリスク増加が見られた
年齢層別分析
60歳未満と60歳以上の両グループで、一貫して大麻関連障害群のリスク増加が観察された
議論:
この研究結果は、大麻関連障害と頭頸部癌の発症との間に強い関連性があることを示唆しています。特に喉頭癌、中咽頭癌でリスクが顕著に高くなっていることが注目されます。また、この関連性は年齢に関係なく観察されたことから、若年層でも高齢層でも大麻使用が頭頸部癌のリスク因子となる可能性が示唆されます。
しかし、この研究にはいくつかの限界があります。データベースの性質上、大麻使用の頻度や量、使用期間などの詳細な情報が得られていません。また、他の交絡因子(例:食生活、職業暴露など)の影響も完全には制御できていない可能性があります。
結論:
この大規模コホート研究は、大麻関連障害を持つ成人患者における頭頸部癌発症リスクの増加を明らかにしました。特に口腔、中咽頭、喉頭の癌リスクが顕著に高くなることが示されました。
文献:Gallagher, Tyler J et al. “Cannabis Use and Head and Neck Cancer.” JAMA otolaryngology-- head & neck surgery, e242419. 8 Aug. 2024, doi:10.1001/jamaoto.2024.2419
この記事は後日、Med J Salonというニコ生とVRCのイベントで取り上げられ、修正されます。
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所感:
この研究は、大麻使用と頭頸部癌との関連性に関する重要な知見を提供しています。特に、大規模なデータベースを用いた長期的な観察研究であることから、信頼性の高い結果が得られたと考えられます。しかし、観察研究の性質上、因果関係を断定することはできません。
今後の研究では、大麻使用の詳細(使用頻度、量、期間)と癌リスクとの用量反応関係を調査することが重要です。また、大麻使用が頭頸部癌を引き起こす可能性のある生物学的メカニズムの解明も必要です。
臨床的には、この研究結果は頭頸部癌のリスク評価や予防策の立案に重要な示唆を与えています。医療従事者は、大麻使用障害のある患者に対して、頭頸部癌のスクリーニングをより積極的に行うことを検討すべきかもしれません。同時に、大麻使用の健康リスクに関する啓発活動の重要性も高まったと言えるでしょう。
ただし、研究の限界を踏まえ、これらの知見の解釈には慎重さが必要です。今後のさらなる研究によって、この関連性の強さと機序が明らかになることが期待されます。
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