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【医師論文解説】毎日酢を飲むだけでメンタルヘルスが良くなる!? 新しい抑うつ改善法が話題【OA】


はじめに

うつ病は世界で最も一般的な精神疾患の1つで、患者数は増加傾向にある。

一般的に処方される抗うつ薬には副作用のリスクがあり、効果もまちまちである。そのため、簡単で効果的な補助療法の開発が求められている。酢は発酵由来の酢酸溶液で、血糖管理、心臓病リスク、肥満の改善などに関連する健康的な食品補助として注目されている。先行研究では、酢の摂取がうつ症状を改善する可能性が示唆されている。

方法

対象は18-45歳の健康的な過体重成人(BMI:25-40 kg/m2)で、うつ病や胃食道逆流症などの慢性疾患のない者。

VIN群(n=24)には1日2回、食事と一緒に赤ワイン酢(酢酸2.95 g)を摂取させ、CON群(n=21)には1日1回ビネガーサプリ(酢酸22.5 mg)を摂取させた。4週間の介入前後で、うつ症状(CES-D、PHQ-9)とメタボロームを評価した。

結果

4週間後のCES-Dスコアは、VIN群で26%低下、CON群で5%低下と有意差はなかった(p=0.544)。一方、PHQ-9スコアはVIN群で42%低下、CON群で18%低下と、群間に有意差を認めた(p=0.036)。メタボローム解析の結果、VIN群では経時的にニコチンアミドが86%増加、L-イソロイシンが35%減少していた。ニコチンアミド代謝に関与する酵素の活性上昇も認められた。

議論

本研究では、4週間の酢の日常的な摂取がうつ症状を改善し、ニコチンアミド代謝の亢進が関与することが示唆された。先行研究でも、酢のトリプトファン代謝への影響が報告されていることから、酢はうつ症状の改善に複数の代謝経路を介する可能性がある。一方で、サンプルサイズが小さいことや、臨床うつ病患者を対象にしていないことが限界として挙げられる。

結論

健康的な過体重成人において、4週間の日常的な酢の摂取がうつ症状を改善し、ニコチンアミド代謝の亢進が関与することが示唆された。今後は、臨床うつ病患者を対象とした大規模な介入研究が望まれる。簡単に摂取できる酢は、うつ症状の改善に寄与する可能性のある食品だと考えられる。

文献 Johnston, Carol S et al. “Daily Vinegar Ingestion Improves Depression Scores and Alters the Metabolome in Healthy Adults: A Randomized Controlled Trial.” Nutrients vol. 13,11 4020. 11 Nov. 2021, doi:10.3390/nu13114020

この記事は後日、Med J Salonというニコ生とVRCのイベントで取り上げられ、修正されます。

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所感

本研究の結果は、うつ症状改善における酢の有用性を示唆する重要な知見である。特に、ニコチンアミド代謝の亢進が機序の一端を担う可能性は興味深い。しかし、サンプルサイズが小さく、臨床うつ病患者を対象としていないことから、今後は大規模な介入研究が必要である。また、酢のうつ症状改善効果には複数の代謝経路が関与する可能性があり、さらなる機序解明が重要と考えられる。簡便で安価な酢は、うつ病治療の新たな選択肢となりうるが、より強固な科学的根拠の蓄積が不可欠だ。

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