ほやたろう

アフター6ジャンクション2のコーナー、週間映画時評 ムービーウォッチメンに送付した感想…

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アフター6ジャンクション2のコーナー、週間映画時評 ムービーウォッチメンに送付した感想メール公開用。 原文ママ。木曜に先週分を公開。 メール投稿用の文章って、記事としては読みにくい。ネタバレお気をつけください。 文章書く用 https://note.com/kuronokou/

最近の記事

恋するプリテンダー

2024/5/23 ほめです。 正直、これほどまでに多幸感に満ちたエンディングを迎えるとは。 全く予想していませんでした。 NG集でもなく、物語の締めくくりとして、各シーンのコラージュのような演出。 それまでは要所々々でニヤつきながら鑑賞していて、 ちょうどよい塩梅で締めくくったくらいに思っていたのに、 あのエンディングで持っていかれちゃったんですよね。 5億点は流石に言い過ぎですが、500点くらいは叩き出したかもしれない、 そのくらい言葉では表現しがたい良さがあったんです

    • 猿の惑星/キングダム

      2024/5/16 ダメです。 確かに猿の惑星の続編ではあるのですが、 過去作が描いてきた社会問題や人種差別への提起、提言といった内容は含まれず、 エンターテイメント重視の印象を受けます。 それ自体は長寿シリーズの新たな取り組みとして期待が持てる点でもありますが、 いかんせんポストアポカリプスの作品群がこれだけ世の中に溢れた現状、 世界観や場面設定がありきたりな範疇に収まってしまったと言わざるを得ないのではないでしょうか。 確かに、前作より進化しているVFXでの猿の表情は人

      • 悪は存在しない

        2024/5/8 ほめです。 山中での生活を切り取ったドキュメンタリーと見紛うような丁寧な描写と、 長回しの数々は静かで淡々とした時間を感じさせます。 動物を含めた他者との共存関係ができあがっているところに、 土足で踏み込んでくる異物に対する拒否感は冷たく、深い。 たしかに登場人物それぞれが自身の立場で物を考え、 意にそぐわなければ対立するということは当たり前なのだけれど、 時間をかけた互いの視点での描写に感情移入させられ、一概にどちらが悪いとは言い切れない。 生活の基盤が

        • 辰巳

          2024/5/2 ほめです。 血と汗、よだれにまみれた本作は登場人物全員がオラついている中、 いわゆる絆のような人のつながりで成り立っています。 理屈よりも筋、メンツと欲望。 むき出しにされた衝動の数々は痛々しくも、どこか滑稽。 生死の境で行動する彼らに対し、 うわー、それは流石にやめたほうがいいのでは……の連続に目が離せない、 そんな鑑賞体験でした。 物事の解決手段が脅しと暴力しかなく、不用意な行動が簡単に死につながる世界に生きると、 こうも後には引けないヒリつきに満ち

        恋するプリテンダー

          パストライヴス 再会

          2024/4/25 ほめです。 今世では一緒になれなかったから、また来世で会いましょう、 なんてあまりにも手垢がつきすぎた、それこそ往年の少女漫画かのような設定ではあるが、 くどすぎずおセンチにならず、病気や死を描かず、感情を不必要に暴走させない上で、 一歩引いた視点で初恋に囚われた2人の愛情と執着を描くとどうなるか。 うっすら甘く、そしてさみしい大人の話に仕上がるから不思議。 2人がどうこうなる展開は望んでいなかったが、帰り道にどこか寂しい気持ちになるのはなぜだろう。

          パストライヴス 再会

          オッペンハイマー

          2024/4/18 ほめです。 伝記映画というジャンルにおいて、これほどまでに事実をエンタメとして成り立たせ、 かつ作品がもつテーマをはっきりと観客に示している作品は他に覚えがありません。 そのメッセージ性の強さにちょっとあてられてしまうのですが、 これこそまさに抑止たり得るものなのではないでしょうか。 また、核分裂による原子爆弾を作った彼が、核融合により起こる水素爆弾の開発には反対したという歴史的事実と、 それに伴う対立、批判、貶められる様を描いたどちらにせよつらい展開に

          オッペンハイマー

          デューン 砂の惑星 PART2

          2024/3/28 全体を通してほめですが、ちょっと納得のいかない部分もあります。 語るべき内容が多すぎる中、一気に詰め込んでしまったためか、 見せ場以外の心理描写や、ここはもっと描いてほしいのにといった要約が多いと感じます。 とくに後半にその傾向が見られ、命の水を飲むくだり以降や、ベネ・ゲセリットの思惑とその行方、 ポールが救世主として演説するシーン等々ご都合主義かつベタともいえる展開が続きます。 そのあたりに引っかかりを感じてしまうのが、残念。 一方で、サンドワームの迫

          デューン 砂の惑星 PART2

          ビニールハウス

          2024/3/21 どちらかといえばダメです。 まずもって、ビニールハウスという舞台をもっと活用できたのではないか。 真っ黒でポツンとそびえる外観は冒頭からなかなかのインパクトを残しますが、 以降効果的に使われることがなく残念。 象徴としてそびえるものが、やがて崩壊するというプロセスは変化の具体例ですが、 そうであるならもっとあの場所自体に感情が乗らないとカタルシスに至らない。 とはいえ、終盤のたたみかけは緊迫感が高まり、何より最後の帰宅以降はなるほど、そうきたか!とテンシ

          ビニールハウス

          アメリカン・フィクション

          2024/3/14 ほめです。 物語を作るということにおいてリアル、とはなんでしょうか。 本作では、皮肉や批判も逆に受け取られて称賛されたり、 一方でありのままでいることが受け入れられなかったりと、 現実で容易に起こり得ることが露悪的に散りばめられています。 その構造をわかりやすく提示するための黒人と白人の比較ですが、 その中で”売れる”ということとやりたいことの差異が大きいモンクが、 頭の中で空想の人物に会話させるだけ、と卑下する作品づくりで苦悩し思いもよらぬ結果を生む流

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          落下の解剖学

          2024/3/7 どちらかといえばほめです。 事故か自殺か、はたまた他殺か。 この映画の着地点として真実そのものよりも、どう考えたいのか、どう判断すれば合理的か、が重要であって、 何が起きたかの過程は明示されず、想像を駆使して推測するしかありません。 見ようによってはサンドラは冤罪、もしくは本当に殺していたかのどちらとも取れますし、 ダニエルの証言も曖昧で母親をかばっただけのようにも受け取れます。 しかし夫婦仲の証言動画を撮る際の、口元に焦点をあてた不自然なカットや、 ダニ

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          夜明けのすべて

          2024/2/29 ほめです。 良い映画だったのに、どこか感情面で足りない部分、 整理できず腑に落ちなかったモノが残るのはなぜでしょうか。 寄る辺なき生活における、まさに一筋の光明ともいえる関係があっさり終わってしまったことでの、 一抹の寂しさゆえやもしれませんし、 尺的にも語るべき点においても不要だったのかもしれないけれど、 もっとこの2人が抱える病と向き合うさまを見たかった。 それは症状が改善するといった安易な展開ではなく、 分かりあえる部分が少なからず見いだせた他者と

          夜明けのすべて

          梟 フクロウ

          2024/2/22 ほめです。 これほどまでに映画館で鑑賞することをオススメできる作品も珍しいかもしれません。 大半のシーンが暗闇であり、視覚障害者であるギョンスのキャラクター性も相まって闇に沈んだ画が多いのですが、 映画館内の薄暗い空間までもが一体化したかのように感じられることでの没入ぶり、臨場感はそうそう体験できるものではありません。 よくよく考えてみれば、映画を鑑賞する時って観客は闇の中から見つめていますもんね。 ギョンスの命はあまりにも軽く、内医院での生活は些細な

          梟 フクロウ

          ダム・マネー ウォール街を狙え!

          2024/2/15 ほめです。 美談に仕上げすぎているきらいもありますが、 しがない庶民達が団結し権力者、金持ちに一矢報いるという、 物語のフォーマットとして古来より使い古されているといってもよい枠組みに、 コロナ以降、直近のショートスクイズを題材とした本作は、 さほど金融関連の知識がなくとも楽しめるエンタメとなっており、 あくまでフィクションとしての味付けが多分にあるとはいえ、劇中で描かれるヒリつきはまさしく手に汗握ります。 ギャンブルにおける心理状態(自分だけは損したく

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          哀れなるものたち

          2024/2/8 ほめですが、手放しでというわけでもないです。 ベラ自身のみならず、構成される世界のすべてが作り物、箱庭、閉じられた舞台であり、 さながら遊園地めいた数々のシーンはとても意図的な、ミニチュアかのような印象を受けます。 そこに描き出される人々の有り様はこの現実世界の縮図であり、 生から死、成熟、選択の数々によって人生が変遷するさまは目を見張ります。 ではこの物語から何を学ぶのか、何を見出すのかという点において、 受け手である観客の視点や認識の違いによって大きく

          哀れなるものたち

          僕らの世界が交わるまで

          2024/2/1 どちらかといえばほめです。 ありふれた親子の衝突や人生の挫折、そういったどこにでもある風景が、 アメリカンビスタと画質の雰囲気が相まって程よいさじ加減になっています。 自身の考えが拒絶され、思い通りにならないことや、 受け入れてもらえないことへの悲しみと苦しみ。 思い入れが強ければ強いほど、より大きな反動がある中、 思いがけない機会に恵まれたりもするというのは、人間関係の機微だなあと。 とはいえ、表層的な対立、ありきたりな帰結に見えてしまうのも確かで、 そ

          僕らの世界が交わるまで

          カラオケ行こ!

          2024/1/25 ほめです。 前半のオフビートとも言える雰囲気の中、不意に差し込まれる笑いの要素に思わずクスクスと声が漏れてしまう。 場面ごとにおけるワードチョイスは原作さながらですが、実写である以上間とテンポが非常に重要となってきます。 作品のリズムとも合わなかれば文字通り滑ってしまうところを、なんとも軽妙な形に仕上がっていることが素晴らしく、 その分後半におけるシリアス展開との落差が生まれることで、鑑賞後の印象は良いものを見たな、でした。 「カラオケ行こ!」というセ

          カラオケ行こ!