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パストライヴス 再会

2024/4/25

ほめです。
今世では一緒になれなかったから、また来世で会いましょう、
なんてあまりにも手垢がつきすぎた、それこそ往年の少女漫画かのような設定ではあるが、
くどすぎずおセンチにならず、病気や死を描かず、感情を不必要に暴走させない上で、
一歩引いた視点で初恋に囚われた2人の愛情と執着を描くとどうなるか。
うっすら甘く、そしてさみしい大人の話に仕上がるから不思議。

2人がどうこうなる展開は望んでいなかったが、帰り道にどこか寂しい気持ちになるのはなぜだろう。
寂しい、と感じる程度には彼らに感情移入しているのだろうし、
やはり観客一人ひとりの胸の中にある自身の過去、
多かれ少なかれ類似する記憶や琴線にふれる部分があるからではないか。
もう会えないあの人は、どこでどうしているのだろう、幸せに過ごしているのだろうか、
なんてそれこそ感傷的ではあるが、この映画は嫌味のない範疇でそれらを思い起こさせる。
鑑賞後、このストーリーを思い返し、そして自身の人生をも反芻する。

20そこそこの若造にはわからない、夢と現実の境。
学生と社会人や、それこそ男女の意識の差、そういった状況からくる違いを当時のヘソンは理解できていない。
こういう振られ方する奴は世の中にごまんといるし、当然身に覚えもある。辛い。
12→24→36ときて、それこそ彼らの縁、つながりを考えると48でも会っていてほしい。
韓国へヘソンの家族(妻子)をアーサーと尋ねる、みたいな。
あの去り際は捨て台詞めいていたけれど、それすら若かったと思える日が来るはずだから。

運命を阻む邪悪な米国人こと、
アーサーの状況に対する解像度の高さには笑ってしまうし、感心する。
現実をメタ的に指摘し、苦しみながらもノラの気持ちを優先させ、しかも理性を崩さない彼の思慮深さたるや。
「僕がわからない言語で夢を見る」
これはずいぶんと胸をつくセリフであり、彼が感じる心の距離を表すにはあまりにも詩的。
鳥肌モノだった。

冒頭の3人、左に偏った構図はキャラクター間の関係性を象徴していたが、
メリーゴーランド前でも中心を左に外した画となっており、類似させているのだなと。
また、雨とタバコ、逆光によるシルエットはスタイリッシュだったが、
船着き場の2人もそうであったように、心の内を隠すかのような見せ方は美しくもある。
そして左から右へ流れていくラストは定番ではあるものの、
未来に向かって走っていく。嫌いじゃないです。

悲しくはなく、どちらかといえば区切り、精算の類。
現実ではそんな駆け落ちのようなことは起こり得ない。
だからこそのifなんだけど。言い出したらキリがない。



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