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ダム・マネー ウォール街を狙え!

2024/2/15

ほめです。
美談に仕上げすぎているきらいもありますが、
しがない庶民達が団結し権力者、金持ちに一矢報いるという、
物語のフォーマットとして古来より使い古されているといってもよい枠組みに、
コロナ以降、直近のショートスクイズを題材とした本作は、
さほど金融関連の知識がなくとも楽しめるエンタメとなっており、
あくまでフィクションとしての味付けが多分にあるとはいえ、劇中で描かれるヒリつきはまさしく手に汗握ります。
ギャンブルにおける心理状態(自分だけは損したくない)に加え、
離脱者が出れば出るほど損をする構造は、さながらチキンレースの様相を呈した集団ヒステリーめいていますし、
彼を信じればもっと儲かるのでは、というあまたの願望も含め、
ローリング・キティが半ば宗教じみた崇拝対象として祭り上げられるあたりが欲望の縮図すぎてなんともリアル。
盲目的に追従する人間に支えられたその狂騒ぶりは、発生〜消滅までが非常に短いスパンの信仰であり、
自分たちの未来をベットするさまは一概に褒められたものではありません。
どう転んでも賭け事でしかなく、これをきっかけに人生を棒に振った人も多数存在するはず。

また、本作ではキース・ギルのヒーロー的側面を切り口としていますが、
法律の範囲内での経済活動から生まれた金持ち達に非があるかと問われれば必ずしもそうではなく、
それが成り立つ構造自体を批判するべきですよね。
彼の証言はそのあたりを押さえていて、まっとうだと感じます。
十把一絡げに金持ちを追い落とせ、とするのはいわゆる大衆のひがみの極地、
ある意味いわれのない中傷や炎上に近しい部分も少なからずあるのではないかと。
単純に金持ち=悪とする構図はフェアではないと思いつつ、
とはいえ爽快さも少なからずあることは否めませんでしたが。

フェイブルマンズぶりのポール・ダノがなんともギークな男を演じていますが、
見た目にそぐわぬ意思の強さ、逆境にめげず初志貫徹する姿はそのギャップも相まってより人を引き付ける。
そういった意味でも、先導者として立場や外見の具合が”我々”の代表として、SNS的に映えたのではないか。
結末を含め、時代の徒花という表現がしっくりきます。



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