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たけとりものがたり 7枚目

そのうち僕は大人になって、お嫁さんをもらった。
 
僕が住む中野はめちゃくちゃ田舎だから、
せっかく相思相愛になった大好きなおなごんこに、
ここには住みたくないと思われて逃げられたら大変。
夜のうちに、周りが見えないうちに、どんなところか分からないうちに、
こっそり連れて来られることが多かった。

だから、
「だまされたのよ!」
と言って当時を笑うお嫁さんが中野には多い。

僕のお嫁さんのおかあさんも車の中で
「まんだ山奥か、まんだ山奥か。どげなとこに嫁に行かされるか」
と不安がってたらしい。
 


僕のお嫁さんも中野の山に一緒にキノコを採りに行く。
初めてのキノコ採り。
かごいっぱいキノコを採って、満面の笑みを浮かべ得意そう。

「お義父さん、たくさんキノコがあったわ。嬉しいわ。」
「そげん食べられん毒茸何にするか」
ガーーーーーーン。

かごいっぱいのキノコがほとんど食べれんキノコで、
捨てられてしまってショックをうけて、
何度も山にあがらんうちに、
「私は食べる方になるわ」と。
すねた僕のお嫁さん。僕は君が愛おしい。
 
そのうちオババにキノコ料理を教わって、
「香茸のくずまわし」
「松茸の吸い物」
「雑茸の白和え」
僕のお嫁さんの料理は本当に美味い。
オババの味もすぐにぬすんでしまったよ。
僕のお嫁さんは天才だと思う。


僕のお嫁さん

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