「私を、あなたは」

「私を、あなたは」

カン・ジョン(1971~)


忘れないで さらにたくさん忘れなければいけない時が来ますよ

あなたの記憶のなかに咲く花とは言わないで もっと大きくて広い

花びらたちをあなたは忘れるべきでしょう 私はあなたにあげるものがなかったのです

血も涙も自分のものは一つもない私の肉塊をあなたが引き取られたら


愛しているといったことはありませんでしたね あなたの唯一な愛でありたかった

私を、なき宇宙となき海の底で息づこうとするあなたは探したく

なかったのでしょう この常世のいずこにも私はおりませぬ あなたが私のなかから逃げて

しまったがゆえに私がまたいましょう なき常世が実に消えてしまったのですから


再度来ると信じておりますよ 来なければまたいかがなさいます 鳥たちが毎朝

私の部屋の窓枠にしがみついて鳴くけれどなんとお答えいたしましょう?昨夜の悪夢のなかでも

あなたは平然と朝の出社をして 私は再び悪夢の蜜壺のなかへ

はまり込みまする 起きたら正午が過ぎています お昼ご飯召し上がりに行かれるあなたが、嗚呼おられません


それでも私は未だあなたの花瓶のなかの春の花でございますよ 春は過ぎ去っても

私は去りませぬ 行き先なんかあるはずがないのではありませんか あなたが去りませぬのに なき宇宙

なき海のど真ん中あなたが浮いていらっしゃいますよ まだ死なないで 私が止めて差し上げるよ

忘れないで もっとたくさんの忘れるべきものを持って私があなたのなかに生きておりますゆえ

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