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楽曲探訪:欅坂46 「誰がその鐘を鳴らすのか?」

いつもの。

イオンカードのCMでサビだけ最初に聴いた時から、すごく耳に残ってたんですよね。歌詞全体の文字が多くて、詰まって急な感じ。でも耳触りは悪くなくて、フルで聴いたらどんな感じなんだろうなあって思ってました。
この曲のイオンカードのCMが初めて流れて、フル解禁されるまで結局半年かかったわけですが、この曲と欅坂46の顛末って、本当に数奇でしたよね。その分、フルで聴いた時の味わいもなかなか深かったわけです。

映画の主題歌として作られた曲

まず、この曲は欅坂46のドキュメンタリー映画「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」の主題歌として作られました。
映画の内容を見てみると、確かに「当時の欅坂46」にぴったりな曲だなあって思うわけです。

坂道グループをはじめAKB48グループもそうなんですが、たびたびこういうドキュメンタリー映画を公開するんですよね。全盛期のAKBなんか一年を振り返るかのごとく毎年上映していた印象です。
私が思ってることがあって、こういうドキュメンタリー映画の主題歌って本当にハズレがないんですよね。

私ってこういう曲が好き!っていう明確な好き嫌いはなくて、かなり感覚的に曲たちと接しています。
シングルでも表題よりカップリングの方がいい曲だな、とか今回のシングル収録曲全部微妙だな、とか毎回思うんですが、ドキュメンタリー映画の主題歌ってもれなく全部「いい曲」なんです。

AKB48だったら「少女たちよ」「ファースト・ラビット」。SKE48は「僕は知っている」、NMB48は「道頓堀よ、泣かせてくれ!」、HKT48は「Chain of love」。そして乃木坂46は「悲しみの忘れ方」が印象に残ってます。

思いつく限り全部挙げてみましたが、ここに挙がらなかった曲もいい曲ばっかりなんですよね。
個人的には、特に姉妹グループの曲のクオリティが高すぎると思います。「僕は知っている」と「Chain of love」はファン人気だけじゃなく、メンバー人気も高い印象があります。とにかく、映画の主題歌は、絶対ハズレがないんです。

私はその理由を「流用」がないからと考えます。よくメンバーや秋元さんが言ってることに私が推測を加えてるんですけど、秋元さんら制作サイドって、未発表の曲をめちゃくちゃ姉妹グループや坂道グループ間で流用してると思うんですよね。

例えば、まず、秋元さんが普段の仕事として曲を作る(いわゆるストック)。未発表の曲なら、グループ間でそれの「流用」ができるわけですよね。
作成時は漠然と乃木坂をイメージした曲を作ってあったわけだけど、近日発売される予定のAKBのカップリング曲にした、とか。HKTっぽい曲を作ってみたけど、やっぱ日向坂の楽曲にするためにちょっとリメイクした、とか。
間違いなく、日常的に行われてますよね。

まあでも、たくさんのグループを抱えるクリエイター側としてはむしろ自然なことだし、効率的とも言えますよね。仕事としては適応的で、柔軟な創造と言えると思います。
秋元さんが抱えるすべてのグループについて、毎回のシングル収録曲全曲、身を粉にして全身全霊で曲を作れ!とは思わないんですよね。そういう仕事は、各グループの偉い人の仕事だと思うので。あくまで私にとって秋元康さんはプロデューサーであり、楽曲の供給者・クリエイターだという認識です。

でもドキュメンタリー映画はそのグループの歴史と未来を描いてます。グループには各自、重厚なそれと、メンバーや裏方、何よりファンの想いがあります。秋元さんが個別に伝えたいこともあるでしょう。それらに「替え」は絶対ないんです。
だから秋元さんはそのグループのことだけを考えて歌詞を練るわけだし、練って磨かれた歌詞には最高のメロディーをつけて魅力を引き立てるように音をアレンジして、提供される。これが、私が提唱する「ドキュメンタリー映画の主題歌ハズレ曲絶対ない説」の理由だと思うんですよね。

だからこの「誰がその鐘を鳴らすのか?」(以下:誰鐘)も良い曲なんです。
良い曲に決まってます。生まれるべくして生まれたんです。たくさんの人にとって「いい曲」と感じられるような、一定以上のクオリティとなっています。
何よりその映画、グループを象徴するような意味付けを持たされているんですよね。
尋常じゃない丹精を込めて制作されてるんですから、ハズレって可能性は限りなく低いわけです。個人の感じ方に差はあれど。

でもそれと同時に「ラストシングル」になってしまった曲

だから私は、そんなこの曲が欅坂46のラストシングルも兼ねてしまったことに並々ならぬ複雑な感情を覚えました。
最初からラストシングルを兼ねることが意図されてたとは、どうしても思えないんですよね…。

聞いた時はびっくりしました。欅坂の改名、活動休止。なくなっちゃうんですか、何だそれって思いました。
ですが改名と今後の活動に至った経緯は、もはや言及するところではありません。

だって本当にいろいろなことがあったし、さまざまな状況の中、メンバーもファンもみんな頑張ってました。欅坂に関わる全員が、いろいろなことがあっていろいろなことを思って、それを受け止めては苦しんだはずです。
それで、考えて考えてやっと出した答えがこれだったんです。ひとりの受け取り手として個人的に思うこともあるんですけど、こうやって答えを出して前に進むって決めた以上は、それを見守ろうかなって思えたんですよね。

さっきも使った言葉なんですけど、ファンの方々や私って、こうなるに至った「経緯」を知ってるんですよね。メンバーのことはよく知ってるし、運営の考え方もなんとなくはわかります。
そして何より、今まで一緒に過ごしてきた時間っていう否定されるわけでも肯定されるわけでもなく、ただ私たちの心の中に「ある」だけなんですよね。一緒に見てきた景色は絶対変わらないわけです。楽しかった思い出や、その節々で感じたこと。それはただずっと、そこに「ある」だけなんです。
その「経緯」は変わらないし、心の中にずっとあるし、そのことをよくわかってるんですよね。

まあでも個人的には失われたシングル「10月のプールに飛び込んだ」は初めて聴いた時はワクワクしたし、見たかったなあ、惜しかった…って思っちゃいましたがね。まあそれも今は思い出です。
「砂塵」と一緒に、没曲になることはなく、音源として最後に世に出てよかったなと今はただただ思ってます。

とにかく語りかけて来る「メッセージ性」強め

曲の内容についてお話したいですね。というか、こっちの方が本題っぽいタイトルなんですが。

誰鐘はとにかくメッセージ性強めです。
私のようか聴き手やファンはもちろん、メンバーにも語りかけているような歌詞がとっても印象的です。内容を一個一個取り立てて解釈する気にはならないんですけど、全体を通して秋元康さんが伝えたいメッセージだと思います。
とにかく優しく、諭すような歌詞です。イントロに小林由依さんのソロのセリフ部分があるんですけど、そこでまずハッとさせられて、強く印象に残ります。

““耳を澄ますと聴こえて来る
色々な声や物音
人は誰もその喧騒に
大事なものを聴き逃している

ねえ ちょっと静かに…
ほんの少しでいいから
自分の話じゃなく
他人の話 聴いてみて欲しい
冷静になろうって
合図をくれればいいのに…””

このセリフを皮切りに、全体を通してとにかく優しく、諭すような歌詞なんですよね。
でもそれでいて、サビでは「鐘を鳴らすは誰なのか?」と疑問を投げかけてきます。
まあ全体の歌詞の中で「鐘を鳴らすのは実は誰でもよくて、鐘が鳴るそのことによって‘‘何か’’に気づいて、それを考えたり行動をすることに意味があって、大切なんだよ」と言っている。
私なりの解釈です。まあでも、「鐘」はだいぶ比喩的な表現だと思いますがね。曲の解釈は受け取り手の自由です。
まあただ、メンバーはどんな気持ちで歌ってるのかは少し気になります。

あと、私が好きなのはこのフレーズ。

““愛の救世主””

なかなか官能的な響きなんですよね。この部分って、歌詞の前後では繋がりがなくて、どうしても独立した表現に私には見えてしまうんです。だから印象に残るのかなと。
普通に考えれば「鐘を鳴らす人」を愛の救世主って表現してるんだと思うんですけど、‘‘愛の救世主’’です。
「人々の心を救うヒーローは、誰なんだい?誰でもいいから、出てくればいいんだよ…」ということを秋元さん的に言いつつ、メロディーに合わせるとこんな感じになるんですかね。彼特有のボキャブラリーを感じますよね。結構好きです。

私、誰鐘めっちゃ好きなんですよね。心に響くんです、歌詞もメロディーもサウンドも。
終期の欅坂46って、「黒い羊」以降かなり長い間新曲が出なくて、それにも思うことがあったり、いろいろあったりして、気持ちが遠ざかってたんですけど。誰鐘はパッと差した光みたいなイメージです。

これからの欅坂46改め櫻坂46について、メンバーとファンの皆さんが納得いくような素敵な活動ができたらいいなとただただ思いますね。

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