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インサイドセールスの光と影~挫折と失敗を繰り返した、立ち上げ2年間の軌跡~

「つつみ、フィールドセールス向いてないよ」

2018年、夏___



会社から宣告を受けた。



僕はホットリンクに入社した当時、フィールドセールス志望だった。



前職でインサイドセールスを担当していたが、「フィールドセールスより立場が下」という扱いに嫌気がさしていたからだ。



また、経験がないフィールドセールスへの憧れもあり、チャレンジしてみたかった。



しかし、4月に入社し約3か月間フィールドセールスをやって、1件の受注をあげる事もできなかった。



「つつみ、フィールドセールス向いてないよ」



ショックだった。自分はやれると思っていたから。



しかしこの宣告には続きがあった。



「インサイドセールス部を作りたいと思っている。立ち上げをやってくれないか?」



当時ホットリンクにはインサイドセールス部がなく、フィールドセールスが自分でアポイントを取り商談するスタイルだった。その体制に限界を感じ、分業しようと言うのだ。



「もともと未経験のフィールドセールスで今から一人前になるにはかなりの時間がかかる。それなら経験のあるインサイドセールスのスキルを伸ばした方がいい」



そんな話をされ、正直迷いはあったものの、社内で、インサイドセールス経験者、SFA、MAを扱えるという要素を全て持っていたのは当時僕だけだった。



僕がやるしかない__



こうして僕は、ホットリンクのインサイドセールス部を立ち上げる事になった。



①何でも屋時代(2018年4月~7月)

当初、僕はIS、FS、CSを兼任していた。

(※IS:インサイドセールス FS:フィールドセールス CS:カスタマーサクセス)



新規事業だった事もあり、全部門で人が足りておらず、舞い込む仕事を全て受けていた結果そうなってしまった。



ホットリードが入ってきているのに、CSの緊急対応に追われ、FSとして外出、夕方になりようやくISとしてホットリードにコンタクトしたものの不在・・・。そんな繰り返しで、全く成果はあがらなかった。



まずはこの状況を変えなければいけない・・・。



FS業務からは外れたものの、IS、CSの兼任はまだ続いていました。



そこで僕は、インサイドセールスの仕事は片手間にやれるほど簡単な仕事ではない事をメンバーに説明しました。



まずはCS業務の中でも固定した時間内で行える業務だけ請け負い、IS業務に集中する時間を確保するようにしました。


★ポイント

インサイドセールスは「ただテレアポをしている人」と見られがちです。

人が足りていない組織の場合、他部署で手いっぱいの状況になると「テレアポの合間にこれやれるよね?」と依頼されがちだったりもします。

しかし実際はやる事は山ほどあります。


■リードへのコンタクト前の事前調査

事業内容、部署、課題の仮説立て、SNSアカウント、IR情報、関連ニュース記事・・・WEB上で調べられる事は全て見ます。


■呼吸を整えてコール

準備した情報をもとに話します。不在であれば、調査した内容を盛り込んだ個別に作り込んだメールを作成、送付(電話とメールは基本的にセットで行う)


■SFAに履歴入力

自分用メモではなく、後に誰が見ても分かるように詳細に書く。また、表記ゆれを直すなど、データ整備も同時に行う。


■コンタクトリスト作成

業種、企業規模、部署・・必要な要素でセグメントし、質の高いリストにする。この作業を行う為にも、前提としてSFAへの地道な情報入力が大事です。


■SNSでの情報発信

ホットリンクの特徴的な部分ですが、各社員がSNS発信する事により、SNS上でDM問い合わせがありアポイントに繋げています。

例えば僕はこのように、各SNSを行き来できる導線を作り、日頃リードに送付しているメールの署名欄からもSNSに入れるようにしています。

大事なのはこれを1人ではなく、複数名で行う事です。ホットリンクではマーケ、IS、FS、CSのメンバー全員でSNS発信を行っています。

お互いがリツイートやシェアをし合う事で情報拡散できますし、問い合わせの窓口もそれぞれが持っています。

インサイドセールス以外のメンバーにDMで問い合わせが来た場合も、インサイドセールスに連携してアポイント取得できます。



このように、いくらでもやる事はあるという事を、インサイドセールス担当者自身はもちろん、他部門のメンバーも理解し、協力しましょう。



②地獄のデータ修復作業(2018年8月)

当時ホットリンクではSFA導入タイミングで分社化が起こった影響で、SFA活用ルールが社内に浸透していない状況でした。



入力方法はバラバラ、そもそも入力していないメンバーもいました。



もちろん正しいデータ抽出などできません。



いっそクレンジングしてゼロからスタートしたかったのですが、請求情報だけはしっかりと紐付いており、下手にいじると既存のお客様の請求書発行などに支障が出てしまう状態でした。



結果、手作業で数万単位あるデータの整備を行う事になりました。



業務の隙間を見ては一人コツコツとデータのマージや入力項目作成を泣きながらやっていました。(泣きながらというのは盛りましたが、心の涙は流しました)


★ポイント

SFAの情報が荒れてからのデータ整備は地獄です!

必ず導入タイミングで必要な入力項目や入力ルールを設計しておきましょう。



③FSが入力しない問題(2018年9月)

データの整備や入力項目の作成が進み、ようやくISではSFAが活用できるようになりました。



しかし・・・あるあるですがFS担当者が入力しない問題が弊社でも勃発しました。



何故入力しないのか?聞いたところ、こんな回答が返ってきました。



・エクセルでいいじゃん

・読み込みに数秒かかるのが嫌だ



・・・・・がーん・・・嘘だろ・・・(つつみの心の叫び)



そこで僕はSFA活用、入力の重要性や手順を資料化し社内に展開するなど、活用推進をしていきました。

※当時の資料の一部


★ポイント

■SFAの活用は、最終的なアウトプットをイメージした上で、入力項目、入力ルールを逆算して作る

・マネージャーがダッシュボードでどんな指標を見たいのか?→その為に必要な入力項目は?→その為に必要な入力ルールは?

という逆算で設計を行うとズレが起こりません。

そしてルールを定着化させる為には、トップダウンで行うのがオススメです。必ず、情報入力しないメンバーは出ますので、ある程度強制力があった方が定着させやすいです。


■入力の重要性
SFAは新鮮なデータに常に更新されていて、いつ誰がどこからアクセスしても同じ情報が見れ、共通認識を持って戦略を立てられる事が醍醐味です。ダッシュボードで視覚的に示唆が得られる事も大きなメリットです。


また、WEB上に公開されている顧客の情報を調べる事は大事ですが、それは誰でも知る事ができます。

それ以上にIS、FSがお客様から聞けた生の情報(導入しているツール、検討時期、予算など)を蓄積すれば、希少価値の高い重要なデータ資産になります。


つまり、地道な入力作業が、後に競合他社との営業力に差をつける大きな武器となるのです。



④メール誤配信事件(2018年10月)

FSメンバーも入力するようになり、少しづつSFAにデータも溜まってきました。そこで色気づいた僕はMA(マーケティングオートメーション)に手を出しました。



溜まったデータから、ターゲットとなる業種でセグメントし、一括メール送付、トラッキングし反応があったリードへコールする・・・



そんなカッコ良さげな事やろうと、あまり慣れないMAの操作を業務の合間にカチカチと行い、メール送付しました。



すると瞬く間に多くの返信が・・・!



「堤さん、変なメールきてるんですけど」

「堤さん、これ大丈夫ですか?」



僕は青ざめました。MAの設定を間違えてしまい、テンプレの英語の文章がそのまま約1000件のリードへ送付されてしまったのです。



誤配信の謝罪対応、状況説明、更には上司からも謝罪など、社内外に迷惑をかけてしまいました。



意気消沈する中、ノリの良い広告代理店の方数名から、こんな返信がきました。



「堤さん!魔法学校入りたいです!どうしたら良いですか?」



誤配信した英語の文章は、日本語訳すると「素敵な貴方に特別なお知らせ~魔法学校入学案内~」といった内容でした。



・・・・・フッ・・・・・・



僕はその日一度だけ、力なく笑った事を覚えています。


★ポイント

MAは便利な反面、誤配信という非常に危険な側面を持っています。

(僕の場合、文面がクリティカルではなかったですが、個人情報など入っている内容だったら大ごとです)


特に導入初期は、とりあえずやってみよう、任せた!となりがちですが、必ず配信前のチェック体制を事前に整え、誤配信を防ぎましょう!



⑤孤独なインサイドセールス(2018年11月~12月)

メール誤配信事件で心に傷を負った僕ですが、それでも明日はやってきます。インサイドセールスをやるのだ・・・。



当時僕は、オフィス内に声が響き渡る状況で1人、電話をするのが嫌だと思っており、1人会議室に籠ってIS活動をしていました。その方が集中できるし・・・



と、思いきや、1人黙々と電話しメールし断られ・・・繰り返している内にこんな感情に支配されていきました。



「辛い・・・つまらない・・・もう帰りたい・・・」



当然、こんなモチベーションでは声のトーンも暗くなり、ますますアポイントは取れなくなります。



実際当時、月でアポイント数合計5件程度というありえない数字を叩き出してしまった事もあります・・・。



この頃、このままでは自分の価値がない事に強く危機感を感じ、何とか脱出する為に、インサイドセールス関連のセミナーやイベントに通い詰めました。



そこで他社のインサイドセールス担当者と交流し、知見を広げた事はもちろんですが、何より同じ悩みを抱えた方達と情報交換する事で、モチベーションを向上させていきました。


★ポイント
よくISは集中できる場所で行った方が良い、とスペースを隔離されていますが、少人数のうちは孤独になりやすく、オススメしません。


メンタルの負荷が大きい仕事なので、気軽に気分転換ができる環境を整える事も大事です。


また、少人数で辛い時は、他社の同業者と交流するのはとてもオススメです。ISは各社でやり方が違う為、様々な発見があります。


現在はオンラインのイベントも増えて非常に参加しやすいので、積極的に飛び込み、登壇者や参加者と交流してみましょう!



⑥マーケティング本部、爆誕!(2019年1月~5月)

僕は気を持ち直し、コールも執務室内で行うようになりました。自然と周りとの雑談が気分転換にもなり、モチベーションの回復と共にアポイント数もどんどん上がっていきました。



そんな中・・・・



2019年1月、外部から個性溢れるマーケター達がホットリンクにジョインしました。



長髪、短パン、サンダルのイケメンCMO

いいたかゆうた_



いいたかさんの良き理解者であり妻想いの男

鈴木脩平_



頭の回転が速すぎて超絶早口なマーケター

ムロヤ_



Instagramを極める男

アサヤマ_



彼らはマーケティング本部を立ち上げ、いいたかさんの強い希望によりインサイドセールス部は営業部ではなく、マーケティング本部に所属する事になりました。



ホットリンクのインサイドセールス部の特徴として、マーケティング部と一体の体制があります。

※2019年5月当時の体制(現在は増員されていますが、当時は少数部隊でした)


マーケティング施策も、インサイドセールスのコンタクト方法もマーケティング本部のメンバー全員で一緒に考えますし、目標数字も共通の数字を追っています。



マーケティングの施策として、WEBサイト改善、WP改善などはもちろん、いいたかさんの怒涛の外部イベント登壇、メディア露出。そして自社セミナーの開催や、ノミナーというホットリンク独自のイベント開催を行いました。

また、BtoBのメルマガで社員の自伝や、自作の連続小説を配信するという前代未聞の手法でメルマガ登録者数を激増させていきました。



その結果、月間の獲得リード数は以前の4倍に激増しました。

アポイント数も3倍に増加しました。



しかし同時に問題も発生しました。リード数が激増した事により、ISの対応が間に合わなくなってしまったのです。



当時の僕たちは、とにかくまずは、やれる施策は全てやる!というスタンスでフルスピードで動いていました。4倍ものリードが獲得できるとは、自分たちでも想定していなかったのです。



当時は対応が間に合わない分をフィールドセールスのメンバーにお願いしてなんとか回すという、ドタバタな状況でした。



大変でしたが、ここで各マーケティング施策に対してどれくらいのリードが獲得でき、インサイドセールス1人あたりの対応数はどこまでが限界かを把握できた事は良かったです。



現在はIS一人あたり、1日50アクションを指標とし、行動量のチェックを行っています。


★ポイント

マーケティングの施策はIS担当者も事前に把握しておきましょう。

いつ、どれくらいのリード数が入ってくるかを常に予測できていればリソース不足を防げるからです。

かつ、FSの状況を見て、アポイントの出荷を調整する事も大事です。FSはとにかくアポの数が欲しい時もあれば、大きい商談抱えていて、ピンポイントで有効なアポしか欲しくない時もあります。

状況に合わせて、場合によってはアポにせず温めるなど、ISで出荷数を調整するようにしましょう。


アクション数は、電話とメールの合計数としています。コール数に意識が向きがちですが、メールで上手くアポイントを取る事も可能ですのでカウントすべきです。



⑦定着期、そしてヴィジュアル系インサイドセールスの活動開始!(2019年6月~12月)

ここまで行ってきた事が定着し、マーケ、IS、FS、CSの連携が上手く回るようになりました。



そんな中、僕はISのイベントに通い詰めていた事がきっかけで、セールスフォース・ドットコムのインサイドセールス分科会に登壇する機会をいただきました。

ここに、ヴィジュアル系インサイドセールスが誕生しました。(この日まで僕は髪も黒く、普通のインサイドセールスでした)



その後もSalesZineさんに取材をしていただけたり



憧れのインサイドセールスカンファレンスに登壇する事もできました。(これは本当に奇跡が起こったと思いました・・・!)



激動の半年間でしたが、多くの方に自分の取り組みを知っていただく機会を得る事ができ、ここまで辛かった事など全て吹き飛ばすくらいに、本当に感動する毎日でした。



インサイドセールスを頑張ってきて良かった・・・!



⑧KPIを有効アポ数に(2020年1月)

ここまでISはとにかくアポイント数に注力していましたが、ホットリンクのソリューションに合っていないアポイントも含まれており、より質の高いアポに転換していく必要性がありました。



ここで現在のISのKPIなのですが、シンプルに「有効アポイント数」1点だけに絞っています。



有効アポイントの定義は

・ホットリンクのソリューションで力になれる課題を持っているか

・決裁権、もしくは推進力がある担当者か

・デジタルマーケティング施策における年間予算(ここでは具体的な数字は伏せますが、弊社支援に必要な予算を持っているか)


★ポイント

ISのKPIは、固定する必要はありません。特に立ち上げ期では、毎月のように状況が変わる為、KPIに縛られずに臨機応変に変化させましょう。



⑨ABMの開始(2020年6月)

アポイントの質を上げる為の施策の一つとして、ABMを開始しました。

(※ABM:アカウント・ベースド・マーケティング。自社のソリューションに合った顧客を選定し、そこに特化し最適なアプローチを行うマーケティング手法)


・ABM対象となる条件を決定(業種、予算、部署)

・全リード、取引先責任者から抽出、リスト化

・ABM対象の状況をウォッチするレポート作成。マーケ、IS、FSで共有

・マーケ、IS、FS合同での戦略ミーティング(ここで話し合い、コンタクトはISに限定せず、FS側でも行う。FSに知り合いがいる場合もある為)

といった事を行っていますが、これもここまで行ってきたSFAへの情報蓄積、データ整備あってこその施策です。

繰り返しにはなりますが、長期的に情報蓄積を行っていれば、打てる有効な施策が増えていきます。

インサイドセールスが本当の価値を発揮できるまでに導入から2年はかかるという説がありますが、その所以は情報蓄積に時間がかかるからです。



■Googleアラートを活用したコンタクト

ABMではないのですが、有効アポを取得する為に行っている事をもう一つ紹介します。Googleアラートの活用です。

(※Googleアラート:Googleが無料提供している機能。特定のキーワードを登録しておくと関連する最新のニュース記事を毎日メール通知してくれます)

ターゲットとなる業界の情報が入るようキーワードを登録しておくと、例えば資金調達を実施した、新サービスをリリースする等を、いち早く知る事ができます。

ニュースを見たら即、該当企業のリードがあるか調べ、コンタクトを行っています。



⑩インサイドセールス部は拡大期に突入(2020年7月~)

こうして、インサイドセールス部は約2年かかり、立ち上げ期と定着期を越える事ができました。



「つつみ、フィールドセールス向いてないよ」



あの宣告を受けた時と同じように、僕はCEOとの面談を行いました。そこで、インサイドセールス部拡大の採用計画の話をされました。その中でこんな話がありました。



「この会社にインサイドセールスが必要だという事を認めさせたのはつつみだ」



その日の帰り道、僕は嬉しくて少し泣きそうになりました。



そして7月からホットリンクのインサイドセールス部は新しいメンバーを迎えます!



確実にこの2年間、インサイドセールス部は周りのメンバーの支えなしではやってこれませんでした。



低迷期にも信じてくれた他部署のメンバーがいた事。そしてマーケティング部と一体になった事により、孤立した部署ではなくなった事が本当に大きかったです。



僕たちマーケティング本部では、7月には新しい企画もスタートさせます!



大好評だったノミナーのオンライン版といった内容になりますので、こちらも楽しみにしていてください!



これから、更なる飛躍をしていく為、頑張っていきます!



最後に改めて、僕の想いを込めた曲を聴いてください。



ありがとうございました。

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