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伝えたいことを、得意な方法で。産学連携を促す“大学の使い方を教える講座”が興味深い。

産学連携や地域連携というフレーズは、どの大学のどの広報物を読んでも必ず一度は出てくるほど、頻繁に謳われるトピックです。実際、民間からの研究資金の受け入れ額は年々増えており、2018年度に総額が1,000億円を超えて、ちょっと話題になりました。

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文部科学省「平成30年度 大学等における産学連携等実施状況について」より引用

これってすごいことなのですが、疑問に思うことがあります。産学連携が盛んだとか、地域連携を活発にやっているとよく聞くものの、どうやったらはじめられるかという情報が、あんまり出回っていないんですね。そりゃあケース・バイ・ケースだから一概に言えないよ、といわれればそれまでかもしれません。しかし、潤沢な予算がある大企業ならまだしも、余裕のない中小・零細企業(うち含む)は、そこが見えないと二の足を踏んでしまいます。ちょっとズレた例えかもしれませんが、産学連携に関する大学は、興味があるけど入れない、ネタが時価の寿司屋みたいなイメージです。

とはいえ、ないものはないわけで、産学連携に興味がある場合は、大学や関連機関に行って個別に相談する、もしくはごくたまにあるマッチングイベントに参加するぐらいしかないのかなと思っていました。ですが、今回、面白いアプローチを見つけ、こういう方法もあるのかと感心したので、こちらをご紹介します(長い前振りになってスミマセン…)。

講座です。講座名は「社会人のためのスキルアッププログラム2019(企業編)『大学を活用した新たな価値創出と組織活性化』」。金沢市近郊 私立大学等の特色推進プラットフォームという、石川県内の12の大学がつくるプラットフォームが主催しており、企業に大学をどのように使ったらいいかをレクチャーするのが、本講座の趣旨なようです。

よく考えると、いや、考えなくてもいいんですが、大学をどう活用できるかを知るための最もシンプルな方法は“教えてもらう”ことです。大学は教育機関であり、教えることは得意中の得意。なら、大学が得意な方法で、社会に伝えるのはとても理にかなっています。

またこの講座は各回のテーマも魅力的です。

第1回 Society5.0社会の実現を目指した企業内におけるAI・IoT・ICTの活用と情報技術教育のススメ
第2回 インターンシップを活用した大学連携と組織活性化
第3回 学生の地域課題解決活動と企業の連携
第4回 分野を超えた連携による新たな価値創出
第5回 履修証明プログラムを活用した人材育成

ほら、多彩じゃないですか? 企業や自治体と大学との関わり方というと、共同研究や学生による町おこしなんかが、すぐ頭に浮かびます。でも、実はそれだけじゃないんですね。どういう活動をしたかという事例紹介は、時折、ウェブ上で目にするのですが、メニューとしてどういうことができるかは、ほとんど目にすることがありません。講座として、毎回一つのメニューを取り上げて深掘りするというのは、企業に大学ができることを、しっかり理解してもらう方法として良いように思います。

私は「ほとんど0円大学」というウェブマガジンを運営しながら、一般の人に向けて大学活用情報を発信しているのですが、ウェブによる情報発信だけでは限界があるのかなと、最近、少し感じはじめていました。もちろん、これはこれで大事なのですが、実際に動いてもらうには、より深く丁寧に教えるリアルの場も必要ではないかと。そういうことを考えていたこともあって、“大学の使い方を教える講座”というのは、なかなかグッとくるものがありました。産学連携しかり、地域連携しかり、一般向けの大学活用法しかり、ウェブで広く、講座で深く、両面での情報発信が大事なんだと思います。うちも講座ができないか、本気で考えなければいけませんね…。

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