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言葉よりも背中で語る?兵庫県立大の学生応援メッセージから考える。在学生に伝える難しさと隠れた波及効果

昨日、今日と大学入学共通テストが実施され、多くの大学のSNSで受験生に向けた応援メッセージが投稿されているのが目につきます。今回、見つけた取り組みも、そんな大学からの応援メッセージ関連なのですが、ターゲットが高校生だけではないんですね。こういう伝え方って、あまり見たことがなかったので面白いように思えました。

高校生と大学生に応援メッセージを発信する

では、どの大学による、どんな取り組みなのかというと、兵庫県立大学による学生に向けて応援メッセージを発信する、という取り組みです。プレスリリースによると、本取り組みの意図が以下のように書かれていました。

学生の皆さんに、自分の本当にやりたいことにじっくりと向き合い、一人ひとりの「私だけの使命」を兵庫県立大学で見つけてほしいという想いを込め、ポスター・SNS動画の掲出、特設サイトの開設を行い、高校生・大学生への応援メッセージとして発信します。

兵庫県立大学プレスリリースより

特設サイトをのぞくと、コンセプトを伝えるテキストとムービー、「兵庫県立大学で見つけた“私だけの使命”」が書かれた学生たちのメッセージカードが掲載されており、さらにその下に入試情報や学部紹介がありました。ターゲットとしては、大学生よりは高校生を意識している印象を受けましたが、それでも複数メディアを使って大学生(≒在学生)に情報発信しようというのはめずらしいのではないでしょうか。

兵庫県立大学特設サイト「私には使命がある」

近くて遠い在学生に情報発信する難しさ

あらためて考えると、在学生に情報を届けるのって、簡単なようでいて難しいんですよね。授業や単位にかかわる情報であれば、学生間で出回るので比較的スムーズに伝わると思います。でも、それ以外の情報、たとえば今回のメッセージであるとか、ビジョンや建学の理念であるとか、学生に知っておいて欲しいけど直接的に何かの役に立つわけではない情報というのは途端に届かなくなってしまいます。

これらメッセージやビジョンというのは、そもそも伝える術自体があまりないとも言えます。だいたいの場合、大学ウェブサイトには載っていますが、在学生がそもそも大学のウェブサイトを検索してこれら情報を探すのかといと、まあほぼないでしょう。かといって、学内イントラに載せたとしても、基本イントラは情報過多になりがちなうえ、載っている情報はすべて在学生に伝えたい情報なので、情報に優劣がつきにくく出した瞬間から埋もれてしまうのが容易に想像がつきます。あと、掲載カテゴリに迷ったあげく、「その他」みたいな、誰がどういう理由で見るのかわからないカテゴリに載り、結果、誰も見ない、というのもありそうです。

在学生に伝えるうえで最もいいのは、イベント等を行って直接伝えることだと思います。でも、これってかなり大変ですよね。費用も人もいるし、時間もかかります。次点として考えられるのが、新聞広告や交通広告、ウェブ広告を使った情報発信です。学内の掲示物に自校のことが載っていても、そりゃそうでしょうよとなり目にとまりません。でも、学外やオンライン上で、ふいに自校の情報が目に飛び込んでくると、けっこう意識が向くのではないでしょうか。しかも、これら広告が高校生に向けたものではなく、自分たちに向けたものであれば、そのインパクトはさらに高まるはずです。

言葉ではなく背中で伝えることで説得力は増す

とはいえ、情報発信側からしたら、在学生に向けてわざわざ費用を使って広告を打つことに、もったいなさを感じる人もいるように思います。でも、これって実はそうでもないと思うんですね。企画として新規性があるので目につきやすいし、何より”在学生と真剣に向き合う大学”を社会に発信することは、在学生以外に向けても強いメッセージを伝えることになります。

ややこしい言い方ですが、必ずしもターゲットに伝えることで、ターゲットに伝わるわけではない。言い方を変えるなら、言葉で説明するより背中で語る方が伝わる。そういったたぐいの情報があって、在学生を大切にするというメッセージは、これに該当しうるし、この伝え方の方が説得力が増すように感じます。

今回の兵庫県立大学の企画やクリエイティブは、高校生と大学生の両方を意識しているため、尖り方がややマイルドです。社会に向けて伝えることをより意識するなら、もっともっと在学生に振り切った企画にした方が効くように思います。ぜひ、どこかでチャレンジしてもらいたいものです。

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