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継続は力なり。コンテンツを資産として巧みに活用した明治大学のブランドサイトが、かなりごっつい。

大学のウェブコンテンツで面白いものがないか、定期的に情報収集をしているのですが、9月末に明治大学がごっついサイトをローンチしました。今後の大学の情報発信を考えるうえでのヒントになりそうなので、今回はこの明治大学のサイト、「Step into Meiji University」について取り上げてみます。

まずは、ドン!サイトをご覧ください。

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明治大学「Step into Meiji University(https://www.meiji.ac.jp/stepinto/)」

このサイトの面白いのは、これでもかと動画が全面に押し出していること。明治大学全体のPV、各キャンパスのPV、各学部のコンセプトムービー、さらには教員の研究を伝えるムービーと、かなりの点数があり、今後もこれらコンテンツは拡充していくとのこと。しかも、ひと通り動画を見てみたのですが、それぞれテイストがまったく違うことに驚き、それでいてどれもクオリティが高いことに、もう一度驚きます。

明治大学全体のPV。浮遊感のある表現は、受験生でなくてもつい見入ってしまう。ただ、動画タイトルが「キャンパスは世界~Go Forward, Go Global~」であるが、グローバル感は薄い。これもコロナの影響か……

理工学部のコンセプトムービー。理系の研究活動は、見ているだけでワクワクするし、音楽と映像の合わせ方が上手い。理工学部には8学科あるが、その多様な学問領域を約2分で表現できているのは素晴らしい

これら充実した動画のラインナップからは、今後、受験生とのコミュニケーションで、動画を主軸に置くという、明治大学の確固とした意志を感じさせます。また、先ほどテイストが動画ごとまったく異なると書きましたが、共通する点もあります。それは、動画から説明的な表現を極力取りのぞき、感覚的にまとめあげていることです。動画の長さが1分半から2分程度と気持ち短めで、場面転換がとにかく多い。言葉による表現は、ほとんどないのですが、それであっても情報量がかなりのものです。

ここらへんの言葉よりも仕草やテンポ、場面転換で表現する手法はYouTubeよりも、インスタ動画やTikTokに近く、動画とひとことでいっても、表現は変わってきているんだと、しみじみ感じます。

とはいえ、文系学部のコンセプトムービーについては、各PVや理系学部のコンセプトムービーに比べると、言葉による説明はそこそこ多め。文系学部をビジュアルで表現するには限界があるのかと思いつつも、魅せるネタのないなかで表現している分、制作に関わるものとしては、こっちの方が参考になったりします。

政治経済学部のコンセプトムービー。文系学部は、座学とゼミ風景とキャンパス風景で構成しがちだが、フィールドワークや学外調査の映像、さらにはイラストをアクセントに上手く取り入れている。他の動画にも言えることだが、1本作成するのに何日撮影に入っているんだろうか……

いま、受験生に伝えるべき手法は動画でいいのか?

今回の明治大学の明確な動画推しを見て、実は、あれ?と思いました。コロナ禍のなか、オープンキャンパスをあまり開催できず、今年、大学は受験生とのリアルなコミュニケーションが十分にとれていません。このようななか、求められるのは、ブランドイメージの訴求ではなく、もっとリアリティのある情報の発信だと感じています。これはコンセプトムービー等によるバリバリのイメージ訴求とは真逆の情報になります。大学によって考え方はさまざまなので、こういうアプローチへの舵の切り方もあるのかと、このサイトを見ていたのですが、学部ごとのページを見て考え方が変わりました。

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「農学部」のページ

見ていただくとわかるのですが、動画の下に「MEIJI NOW」と「Meiji.net」の関連記事が並んでいるんですね。「MEIJI NOW」は、在学生や卒業生の活躍、学生生活などを紹介するオウンドメディアで、「Meiji.net」は研究成果を伝えるオウンドメディアです。「MEIJI NOW」は2016年、「Meiji.net」は2013年に開設しており、それぞれコンスタントに記事をあげているので、かなりの数のコンテンツが蓄積されています。とくに「Meiji.net」は、大学の社会に向けた研究広報の先駆的な事例で、当時かなり注目されました。

ということは、です。明治大学には、すでにリアリティのある記事コンテンツが十分に充実しているわけなんです。なので、あと表現手法として足りていないのが、動画表現だった。動画表現のみで、どうこうしようと考えたわけではなく、最後に動画に手をつけたという方が正しいように思います(最後かどうかは知りませんが…)。伝えられるもの、伝えたいものがいっぱいあって、動画はそれらを読んでもらうための盛大なきっかけ、といえるのかもしれません。

そして、既存コンテンツと新規コンテンツを巧みに連携できているのは、連携させるのに足るコンテンツをちゃんと育てていたから。結局、コンテンツを使い捨てではなく資産にまで高めていかないと、広報に厚みが出ないんだと、明治大学の「Step into Meiji University」という、ごっついサイトを見てつくづく感心させられました。ほんと継続は力なり、です。


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