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Episode 724 成り立ちを知るは大事です。

「個体発生は系統発生を繰り返す」とは、ドイツの生物学者であり医者・哲学者でもある、エルンスト・ハインリッヒ・フィリップ・アウグスト・ヘッケル(Ernst Heinrich Philipp August Haeckel)が、ダーウィン進化論の影響から提唱した『ヘッケルの反復説』で表した有名な言葉です。

ある動物の発生の過程は、その動物の進化の過程を繰り返す形で行われる、というのがこの説の主張である。
ここで個体発生とは、個々の動物の発生過程のことであり、系統発生とは、その動物の進化の過程を意味する表現である。

Wikipedia「反復説」より

この言葉は、あくまでも「生物の進化」についてを扱うのですが、今回ちょっとばかり、その意味合いを拡大解釈してみよう…と思うのです。

私が大学に通ったのは平成元年から4年間で、所属は教育学部の中学校教員養成課程で、社会科の専攻でした。
中学校で教わる(教える)社会科の範囲を広く押さえながら、主に歴史学を学んでいた私は、「歴史の不思議」をいつも考えていました。
それは、多少の時間的な前後はあっても、人による人と土地の統治の歴史に一定の流れが存在する…ということです。

人的交流が今ほど盛んではなく、大陸の横断が命がけの大旅行(大冒険)であった時代に、大陸の西側にある欧州と、東の外れにある島国で、自然発生する統治の歴史の「大枠」が一緒なのは何故か?

農耕の発達による食料(主食)の安定供給は、人々の定住を促した…とした時に、その定住する土地の安全を如何に確保するのか…という問題が発生したワケね。
その土地統治の発達は、地域の文化により風習こそ違えど、「何が必要なのか」の大枠に大差はなく、それ故に発展の方向が同じ向きだったのでしょう。
もちろん、組織化された強大な勢力により淘汰された統治方法もあったのは事実として、それでも島国日本の統治は、大陸西側の諸国が歩んだ「それ」と大差はないように思います。
即ち、ムラから国へ、領主権力の肥大と貴族化、武力(武士/剣士)の台頭からの共和的国家建設といった支配構造と、封建制度の成立~貨幣経済の浸透…という経済的構造に共通の流れがあり、人々はこの進化を経験した結果として現在の社会に生きているように思うのです。

このひとつの地域で安定して暮らすために必要なものとして社会性が重視された、その結果としてコミュニケーションが重要になったとするならば、人の進化にコミュニケーションが追加されるのは道理なのかなぁ…と。

ヘッケルの反復説は、あくまでも個体発生での成長過程に見える特徴が、系統発生を踏襲することを指すのですけれど、人のコミュニケーションの発達が、ある程度一定のパタンをみとめるならば、それも進化の方向性として順当…なのかもなどと思うことがあります。

「農耕」という環境への働きかけによる生産が人類の定住を促したことを発端とする「社会性」の進化が、人の進化の方向性を決定する大きな起点になったとした時に、その進化の方向の大筋から逸脱した人々に対する環境的な厳しさが作られてしまう理由が見えなくもありません。

もちろんこの話は、私の脳内で思う「思考実験」の中身なので、それ以上の意味は持たないのですが、人が言葉を話し、コミュニケーションを求める理由として、そしてそのコミュニティに対しての「異端」に圧力が掛けられる理由として、「歴史学ベースの私の理解」を作り上げる基礎となっているのも事実なのです。

先に貼り付けた note記事「イワシの群れを作るのです。」には、フレデリック・ラルー氏による「組織の発達段階」という考え方が示されています。
こうして組織(コミュニティ)が進化する中で「異端」とされる範囲は変化し、解放された「異端」が獲得したのものは何なのか…を考える中に「基本的人権」が見えてくるように思います。

私は今の世の中がイビツであることを「良し」と思っているワケではありませんが、イビツでありながら今の世の中の形になっているには、それなりの理由がある…と思っています。
つまり私たちの権利を主張するには、今の世界がどのように成り立ち、それをどのように評価するのかを考える必要があるだろう…と。

あけましておめでとうございます。
新年を迎えるにあたり、旧年までの積み上げた歴史を丹念に見定めることが大切であると、改めて感じます。
どうして今の世の中が成立しているのか。
その解析は、「だからどうする」を北極星になる…と思います。

今年が皆様にとって、実り多い良き年でありますように。

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