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恩知らずな私に、任天堂が教えてくれたこと

皆さんには、いつか「恩返し」をしたい相手がいますか?

人は周囲とのかかわりの中で生きていくものですから、”人生を救ってくれた”というような人が一人はいるかもしれません。

仮に人生を救ってくれた恩人がいないとしても、「あの人のおかげで今の自分がある」と思える人はいるのではないでしょうか。

私は、周囲とうまくなじめずに孤立しがちな人間だったので、その分他者に救ってもらうきっかけは多くありました。”自分自身でなんでもできる”というタイプではなく、なにかと手のかかる存在だったのです。

生きていく過程で、恩を忘れていった私

私にはこれまでの人生の中で、その後の大きな分岐点となる出来事を与えてくれた恩人が何人もいます。

当時、自分では自覚していませんでしたが、人生で大きな決断をするときは必ず誰かの助言がありました。

彼らがいなければ、今の自分はいないと断言することができます。

しかし、私はお世辞にも世渡りが上手い方ではなく、いつも輪の端っこのほうで何とか場外へ出てしまわないように踏ん張って生きてきました。

そのため、自分自身が生きることに精いっぱいで、他人に対しての思いやりや感謝を持つ余裕はありませんでした。

「この人にはいつか絶対恩を倍返ししてやる」と強く思った人でさえ、数年後には感謝の念が薄れていく始末でした。そんなことよりもまず自分が幸せにならなきゃいけない、そう信じてきました。

しかし、恩人への想いが薄れていく中で、私は自分の人間性も一緒に薄れていくように感じられました。”私”という絵から色彩がゆるやかに抜けていくようでした。

このままではいけない、と思いつつも結局気になるのは自分のことばかりで、白黒で単調な人間になっていく自分自身を見過ごしてきました。

私の恩知らずな過去を語った下記記事もぜひご覧ください。

恩人を決して忘れない任天堂

そんなある日、なんとなく任天堂に関する記事が目に入りました。

任天堂といえば、世界中に多くのファンを持つ超有名ゲーム会社で、現在でも『どうぶつの森』や『ポケモン』などの大ヒット作を連発しています。

リオ五輪では、安倍元首相がマリオの恰好で登場し世界を驚かせました。

もはや”日本の企業”というくくりでは語れない任天堂ですが、1980年代ごろまでは経営がうまくいかず、さまざまなサービスを手掛けていました。

たとえば、インスタント食品(インスタントライス)の販売やタクシー会社(ダイヤタクシー)、一説ではラブホテルの経営もやっていたといわれています。そのほかにも文房具からベビーカーまで幅広く事業を行っていました。

しかし、どれもこれもうまくいかず、任天堂は窮地に立たされていました。そんなある日、社運を賭けた『レーダースコープ』というシューティングゲームを開発し、アメリカで普及させるというプロジェクトが開始されました。

ついに任天堂の快進撃が始まる、と思いきやこのゲームはアメリカで全く売れず、貸倉庫に筐体が山積みになっていたそうです。しかもその貸倉庫の賃料すら払えずオーナーに待ってもらっていました。

そんな中、いずれ『マリオシリーズ』を生み出す天才・宮本茂氏に新ゲームの開発が託されます。

窮地に立たされた任天堂を復活させるべく、宮本氏が開発したのは『ドンキーコング』という今でも人気が根強い新感覚のゲームでした。シューティングゲーム絶頂期だった当時、ドンキーコングのゲームシステムは斬新で、一気に人気が出て社会現象にまでなったそうです。

宮本氏のおかげで窮地を脱した任天堂でしたが、思わぬトラブルが舞い込んできます。

USJなどでも知られる『ユニバーサル社』から「ドンキーコングはうちの”キングコング”のパクリだ!ドンキーコングで儲けた金と権利をよこせ」と訴えられてしまったのです。

これに対し任天堂の優秀な弁護士は「キングコングのコピーという事実はないし、そもそもキングコングは著作権が切れているだろう」と反撃。

実際に1933年に作られたキングコングの著作権はすでに切れていることが裁判で認められ、無事に任天堂は全面勝利することができました。

ちなみに、よくネット上で「任天堂の法務部は最強」という話を耳にしますが、実はこのときの裁判の影響から法務部を強化したといわれています。

かくして人気ゲーム会社となった任天堂ですが、どんなに大きな会社になっても恩を決して忘れませんでした。

ユニバーサル社を打ち負かした弁護士の名前は、ジョン・カービィ。いずれ誕生する大ヒットゲーム『星のカービィ』の由来になったといわれています。

また、任天堂はかつて貸倉庫で賃料の支払いを待ってくれていたオーナーへの恩も忘れませんでした。オーナーの名前はマリオ・セガール。彼の名はその後世界で最も有名なゲームキャラクターの名前となりました。

恩を忘れないということは、自分のルーツを忘れないということ

このような任天堂の話を聞いていると、過去の恩を忘れずに自分たちのルーツを明確にしているからこそ、現在でもブレない経営ができているのではないかと感じます。

これは会社に限ったことでもなく、一人の人間でも同じことだと思います。

芯が通っている人というのは、自分自身を救ってくれた人に対する恩を決して忘れない。忘れないからこそ、強い芯をもって生きることができる。

私がこれまで出会ってきた”芯が強く自信を持っている人”たちには、皆こういう共通点があったように思います。

あなたには、『恩を返したい』と思える人がいますか?

もし「いない」と答える人がいたら、私と同じように恩人を忘れてしまっただけなのかもしれません。

今の自分がどういう成り立ちでできたものなのか。それを思い出し、大切にすることで任天堂のような”芯の通った生き方”ができるではないか、と私は思います。

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