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インターネットの世界で、宝物と出会えた私はラッキー。

2000年代始め頃、私は個人のホームページを持っていたことがある。

ホームページ、と言ってもゼロから手打ちして作ったわけではなく。

当時、よく使用されていた レンタルサーバーでの 無料ホームページ作成を用いて、少しHTMLで手を加えた程度のものだ。

当時は今よりもインターネット利用人口がはるかに少ないとはいえ、
セキュリティや、ホームページ訪問者内の誹謗中傷や揉め事がないように
管理人として、かなり神経を使ってはいた。


ホームページの管理人になった


ホームページの主な内容は、私の好きな洋楽についてだ。

それに至る以前に よそのホームページを行き来したり、アーティスト関連の情報掲示板で知り合った人たちと沢山交流していた。

しかし、ある時、その仲間たちが共通で集うホームページが閉鎖に追い込まれた。

管理人に対して 根拠のない誹謗中傷があったのだ。

それによって、自分も被害に遭わないよう自身のホームページを閉じてしまう人も後を立たなかった。   

私も含め、親しくしていた多くの仲間が行き先を失った。

どうしよう?

そこで、私は手を挙げた。

「私、制作やってみるよ。あんまり知識はないけどね」

そこで皆、ほっとしていた。

そこから二日でホームページは完成。

すぐにみんな私のホームページに集まった。


一番親しかった仲間


作り上げるまでに2日間全く寝ていないのは、誰にも言わなかった。

「◯日で作るね」
なんて、いい加減なことも言えなかった。

とにかくホームページの形を作ることに専念した。

寝ていなかったのは、その合間に
当時、社会人大学生としてゼミの資料や講義のレポートなどなど作成していたからだ。


「ねえ、ほしまる、大変だったんじゃないの?」

サイトに来てくれている仲間の中でいち早くそうメールしてきたのは
同じ県内に住んでいた音楽仲間の 紗奈さな(仮名)だった。

「え、なんでよ?」

私が返信でそうとぼけると紗奈はズバリ言い当てる。

「だってほしまる、いっつも見えないとこで必ず、私たちが快適にいられるようにしてくれてるもんね」

紗奈はこの頃妊娠していた。

だから私がいけないイベントやライブに当選した時も、会場近くまではついていってあげていた。

オフ会があっても
オフ会の場所を妊婦さんが少しでも楽に座れるようなお店に選んだり
場所も駅からすぐのところにしていた。 

紗奈の安産祈願に、とみんなが地方から集結したときには
ホテルのお得なランチでゆったりしながら話もした。

そういうところを見てくれてるんだな、この子は。

とても嬉しかった。

紗奈の出産、そして家族ぐるみで親しくなる


紗奈の子どもが生まれた時も
病院からメールをくれた紗奈の言葉を伝えると、その時間私のサイトにいたみんなは感激で泣いていた。

一生懸命考えた、という名前も本当に素敵だった。


紗奈と私が住んでいた家は、お互い行きやすい場所だった。

だから紗奈の旦那さまと紗奈、私の夫と四人でよくあったりもした。

紗奈たちの子どもが産まれてからも
何度も会いに行った。

誰かがいつの間にか、うとうとしても、自然。
黙っていても、何か話さなきゃなんていうしめいかんもない。

なんだか落ち着く関係性だった。 

紗奈と私にしても、単に友だちというのだろうかね?なんて話したこともある。

本当にどんな関係だったんだろう。


紗奈は、自然に色んなことを私に話してくれた。

私も紗奈にはかなりいろんな話をした。
    
もしかしたら、昔からの親友よりも
私のことを知っていてくれたかもしれない。 

思いがけないことからのサプライズ

ある日のことだ。

たまたま家にいるときに紗奈から電話がきた。   

「ほしまる!今、家?良かった!
あのね、大ニュース。2月に来日公演決まったって!」

「え、まじ?うそうそ!?
やだ!絶対行く!」

「行こうね!」

そのとたんにすぐに冷静になった。

「ごめん、日にちは?...そっか、行けないや。」

皮肉なことに
大学院の受験数日前だった。

しかも、卒論の仕上げも佳境で
さすがにそれどころではないのが悔しかった。 

「ほしまるの分まで楽しんでくるよ」

電話を切った。

そして、ホームページを更新した。

「来日公演決まりましたね!
私は残念ながら行けないんですが。
チケット取れたら皆さん楽しんできてくださいね!」

涙で文字が何度も誤字になった。


「気分はどう?
明日、気を付けていってきてね」

来日公演の前日、私は紗奈にメールした。

紗奈はいつものように、すぐに私に返信する。

「こんなこと言ってごめんね。
私はほしまると行って、ほしまるの隣で楽しみたかったの。
ほしまるが隣にいるつもりで行くからね!」

また目に涙がたまる。

「おう、じゃあ私の魂、背負っていってね!」


大学から帰宅して、食事の支度をしながら時計ばかりみていた。

もう入場済んだかな

グッズ買ったかな

あそこの席、見やすいといいな

紗奈が楽しんでるといいな

頭のなかはそんなことばかり考えていた。 


晩ご飯を食べ終わって、後片付けも終わる頃、携帯が鳴る。

紗奈からだ。

え、なんで今ライブの最中じゃないの?

「もしもし」

わー!きゃー!という周りの歓声が聞こえる。
  
え、座席から?

混乱した。  

「ほしまる。とりあえず今なら警備員あっち行ったから。
ほしまるに少しでも聞かせたくて。
途中できるかもだけど」

「...うん...うん!ありがとう」

アコースティックギターのイントロが流れる。

紗奈、すごい、これ私が好きな曲なの知ってたとはいえ
このタイミング。

大好きなアーティストの歌声とアコースティックギターの音色に痺れた。

「じゃきるよ」

「サンキュー」   

こんなサプライズは想像していなかった。  

紗奈、なんて素敵なんだろう。

次の日ホームページに正直に紗奈からのサプライズプレゼントの話を書いて、
皆さん昨日は楽しめましたかー?

と書いた。

「ほしまるさん、ごめんねその手があったね」

「いや、それ考えたんだけどね、さすが紗奈、」

そんな言葉が並んでいて。

思わず私は笑ってしまった。

こんなのできるのは 紗奈だけだよ。って思ったからだ。


紗奈にとっての私は...

その後、私は大学院に進み、研究にまっしぐら...のはずだった。

でも、在籍していた研究室、そして指導教官との関係性などなどで
少しずつ、心と体のバランスが崩れ、
壊れた。

休学ののちに中退した私は
ほぼ寝たきりで、空虚な毎日を送っていた。

「うちに来ない?
美味しいお菓子作ったんだ。あとあの子(紗奈の子ども)もほしまるに逢いたがっててさ」

ある日、そんな感じで 以前と変わらずに紗奈が私を誘った。

いや、いかないよ
 
そう言おうとしたら紗奈は一言こう言った。

「来てくれなきゃ私が寂しいの。
待ってるからね」

紗奈が?
私に会えなくて寂しい?

嘘だ。

そう思いながらも、その日は朝から久しぶりに遠出をした。

中退した直後に、ちょうど引っ越しもあり、紗奈の家は私の家から遠くなった。





 

「ほしまるちゃん、久しぶり」 

駅に着くと、そう言って少し大きくなった紗奈の子どもが私に抱きつく。

すると、間も無く紗奈も思い切り私に抱きついて泣いた。

「よかった...また会えた...」


紗奈は沢山手料理を用意してくれていた。

「ルイボスティーとハーブティーも色々用意したよ」

「なんで?」

「調べたの。カフェイン摂りすぎない方がいいんでしょ?」

私の知らないところで一生懸命私のために色々してくれていた紗奈。

その日は 紗奈とも沢山話して
紗奈の子とも沢山話した。

「ほしまるは私にとって宝物なの」

友だち、でもなく親友でもなく
宝物。

なんかそれも紗奈らしくて笑った。 


☆☆今日の一曲☆☆
 

Britney Spears ブリトニー・スピアーズLuckyラッキー

紗奈も私も好きだった Britney。
色んな曲が頭を巡りましたが、
紗奈と一緒によく聴いていたアルバムの中でも「Oops I Did It Again」のLuckyにしました。  
  
今日のような雨でしっとりした日にはちょうどよいかな。

「スター」として有名になり、「ラッキー」であるはずなのに、涙がでるのはなぜだろうという、歌詞はやはり、Britneyが抱いていた気持ちそのものだったかもしれません。

Luckyという女性になりきる姿はビデオにも描かれています。

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こんな感じで、短くとも 投稿毎に今日の一曲をお届けしていこうと思います。   

読んで下さりありがとうございます。
 



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