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母の初恋は時空を超えて。

今、私が洋楽を
ここまで愛しているというきっかけは沢山あるけれど。

やはり一番は両親、特に母親からの影響が
とてつもないくらい大きい。

私がお腹にいるときの母は主にどんな曲を聴いていたんだろう。
よくよく振り返るとその質問はしたことがなかったが、
その頃 特に聴いていたであろう曲やグループ、バンドは不思議と歳が経つほどに自然と想像できるほど、母の好みも幅広く、そしてそれぞれへの愛は熱いものだった。

父と交際していた独身時代、私を出産し、
私が言葉を話し出すくらいまでに聴いていたうちの主なグループは、日本のグループサウンズに加え
ローリング・ストーンズ、ビートルズ、ビージーズ、モンキーズ...などなど。

これらはおそらく全て私が言葉を覚え始めた辺りには、本人としてはワケがわからずとも歌っていた記憶がある。

というか、その頃のおぼろげな記憶では
ステップを踏むように動いたり、手を叩きながらジャンプして歌っている(歌詞はめちゃくちゃ)という私の姿に両親が本当に嬉しそうだったのだ。

そして、そんな歌詞もめちゃくちゃな状態で歌う私も、なんとなく幸せで。

だから、歌えるレパートリー(相変わらず、歌詞はめちゃくちゃ)が増える度に私自身も嬉しかった。

イントロクイズではないが、レコードから
イントロが流れた瞬間にどのバンドのどの曲かわかり、キャッキャしながら歌ったことも覚えている。

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少しずつ、言葉を覚えたり。
父や母から少しずついろんなことを教わる過程で、
母は特に、自分が教えておきたいこと、
私にわかってもらいたいことを一生懸命語りかけてくれた。

だから父方の"ばばあ"に関しても。
(本人の前で ばばあ とはさすがに言わないが、大人になっても、ずっと心のなかではそう思っていた)

"ばばあ" が 母にどれだけひどい仕打ちをしていたのかということも、幼稚園になる頃には全て理解できていたし、
小さい頃から 私は "ばばあ" の作る料理にはひとくちも手につけないようにしていた。

私だけでなく、妹も。

目には目を、ではないけれど 小さな私ができる"ばばあ"への抵抗と、母に対する仕打ちへの仕返しだった。

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そんな母からの言葉の中に、ストーンズやビートルズなどの話が出てくることがあった。 

「今ね、こんな風に言われてるけど、彼らの曲は最高なの」

そんなことや、

「モンキーズは楽器が弾けないとかバカにされるけどね、
彼らは本当にすごいのよ」

といった母の思いというのは、とても強かったのだろう。

40年以上経っても私はこうして覚えているのだから。

だから、そうした遺伝子は間違いなく、私に受け継がれたのだ。

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両親と妹の葬儀には、私は喪主として、
連絡先がわかる人に全て連絡した。

当時はラインもメールもない。

父や母、妹の名簿や連絡網などから辿ったり、母と妹に関しては、パート/バイトの同僚の方や、妹の家庭教師先の生徒さんのご自宅、
そして習い事の仲間の人たちにも。

皆さん本当に多くの方が来てくださった。

母の友人の方々が色々と細かなことを手伝ってくれたこともありがたかった。

多くの参列者。

中でも忘れられなかったのは、妹の大学の教授。

※以前書いた記事はこちら※


そして
母の幼馴染みで小学校・中学校と母と一緒に生徒会・学級委員をしていたナカタさん(仮名)だ。

ナカタさんのことは
母が以前中学時代の同窓会に参加した時の写真や、
母から直線聞いていた話しで覚えていた。

初恋同士、相思相愛なのに
付き合うことなく、母からナカタさんを振ってしまった形になり傷つけたことは
私はずっと覚えていた。

だからこそ、ナカタさんには直接私からお電話した。

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お電話で話しながらも、ナカタさんの嗚咽からどれほど泣かれているかわかった。

「ナカタさん、すみません」
「いえ、こちらこそみっともないところをお聞かせしてしまって」

どれくらい話しただろう。

そこまでながくない時間なのにナカタさんのとはずいぶん前から私も知り合いのような気持ちだった。

「◯◯◯さん(母)の、当時の本当の気持ちをしらせてくれてありがとう、ほしまるさん」
「いえ、遅くなりましたが...訃報のお知らせとなってご気分悪くしてすみません」

沈黙は苦にならなかった。お互い大切な人を亡くしたからだろう。

「ほしまるさん、お母さんはね、本当に学園中のマドンナでした。
だから、僕は、僕は...」
「...」
「同級生でいられただけで幸せですよ。
縁はなかったとはいえ、
お母さんに出逢えたことに感謝してるんです」

私は涙が止まらなかった。
こんな形の愛というのもあるのだと
改めて知った。

式でも夫と私と三人でお話できた。

母の遺影を見つめる ナカタさんが印象的だった。

何を想っているんだろう。
どんなことを思い出しているんだろう。
何を母に伝えているんだろう。

私にはとても素敵な瞬間を見られた気がする。

時を越えて、再会した 初恋の相手同士。

こんな恋愛をしてみたかった。

私はそう思った。

人生で、こんなにも清らかな気持ちで
慕ってくれ続けていたナカタさん。

ナカタさんも、どうか今でも元気に生きていてほしいな、といつも思う私なのだ。

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Monkeys(モンキーズ)/ Daydream Believer(1967)

☆ごく一部の歌詞と 私の意訳☆

Oh, I could hide 'neath the wings
ああ 翼の下の隠れていられたらいいのに

Of the bluebird as she sings.
あの さえずる青い鳥の翼の下にだよ

The six o'clock alarm would never ring.
6時の目覚ましなんて鳴らなければいいのにな 

But it rings and I rise,
でも目覚ましが鳴るから僕は起きる


Wipe the sleep out of my eyes.
眠たい目をこするんだ

My shavin' razor's cold and it stings.
カミソリが冷たくてチクチクするな

Cheer up, Sleepy Jean.
寝坊すけのジーン、目を覚ましなよ

Oh, what can it mean.
あぁ・・それが何だっていうんだよ

To a daydream believer
夢見がちな彼と

And a homecoming queen. 
みんなのアイドルだった彼女

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Spotify

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