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【北海道宇宙サミット2023・全文掲載】宇宙ビジネスが地方を変える!SNET自治体の取り組みと挑戦(Session4)

2023年10月12日に行われた日本最大級の宇宙ビジネスカンファレンス「北海道宇宙サミット2023」の様子をお届けします。

“宇宙を動かせ。”をテーマに3回目の開催となる今回は、日本が再び成長するための戦略や宇宙ビジネスが私たちの生活や仕事をどのように変えていくのか、より具体的な未来像について産学官のフロントランナーたちによる議論が交わされました。

今回は、宇宙ビジネスに取り組む自治体による議論が繰り広げられるSession4「宇宙ビジネスが地方を変える!SNET自治体の取り組みと挑戦」で語られた内容を全文掲載します。


登壇者
井田 広之 氏(鳥取県 産業未来創造課 課長補佐)
江藤 憲幸 氏(大分県 商工観光労働部 先端技術挑戦課 宇宙開発振興班 主幹(総括)) 
片山 俊大 氏(一般社団法人 Space Port Japan 共同創業者 & 理事)
西村 元一 氏(鹿児島県 商工労働水産部 産業立地課 新産業創出室 主幹)
八木 裕輔 氏(北海道 経済部 産業振興局 スタートアップ推進室 主幹)

実は多い! 宇宙ビジネス創出自治体

片山氏: 
このセッションは、宇宙ビジネスを推進している自治体、県庁の皆様で構成されています。
他のセッションは宇宙産業に人生をかけてやってきている人が多いと思うのですが、このセッションは途中からちょっと宇宙をやり始めたような方々になっているかと思います。
なので、このセッションでは、宇宙の専門的な話よりも、宇宙と宇宙ではないものを掛け算して、どう新しい産業を作っていくか、それを県庁の目線で、民間企業とどう連携していくか、ということを話し合えればと思っております。
もし宇宙産業に直接関わっていない方々にとって、このセッションが最も有意義なものになればという願いを込めながら、お話をできればなと思っております。

私の自己紹介をさせていただきます。
片山俊大と申します。スペースポートジャパンの共同創業者で、理事を務めております。
本業は広告会社で広告PRやブランディング、企業連携等々を生業としております。
経産省や内閣府といったところと仕事で携わったことがキッカケで、2015年ごろから宇宙産業などを手がけるようになりました。
その後、2018年に「Space Port Japan」という団体を創業いたしました。
これは非営利のいわゆる業界団体で、会員の皆様の意見などを集約し、政策提言やビジネス機会の創出、情報発信等々を通じて、日本に多くのスペースポート開設を実現していくための団体として7人で共同創業しました。
私はそのうちの1人です。そういう意味では、宇宙ビジネスの話をすると、当然だいたい宇宙の話になるんですが、宇宙って必ず地球上のどこかから行きますし、必ずその結節点があるんですね。
それをスペースポートと最近は呼んでおりますが、その周りには色々な産業がどんどん生まれてくるだろうということで、そういった宇宙と宇宙じゃない方を繋げていくところに、私は注力しております。

ということで、「じゃない方」と接続するということを目的に、『超速で分かる宇宙ビジネス』というイラスト本も出しておりまして、この本を出したら、すぐに韓国や台湾から出版のオファーがありました。
Space Port Japanとしては、日本にスペースポートを作らなければいけないということなのに、すぐに台湾、韓国からオファーがあって、かつ、韓国がすごい勢いで追い上げてきているので、ぜひ負けないようにしたいなと思っております。
というところまでが私の自己紹介で、これからモデレーターを務めさせていただきたいと思います。

早速ですが、ここからは「実は多い!宇宙ビジネス創出自治体」ということで、今日は4つの自治体の皆様に集まっていただいております。
まず最初は北海道庁の八木さんが、今、北海道として何をして宇宙ビジネスを盛り上げているのかお話しいただければと思います。

八木氏:
片山様にご説明いただきましたS-NET自治体について、私の方から紹介させていただきます。
S-NETは、内閣府と経産省が共管して行っている事業で、「宇宙ビジネス創出推進自治体」と連携して、新産業やサービスの創出を広げていく取り組みです。

当初、S-NET推進自治体は4つから始まっているのですが、徐々に広がっていまして、今は13の自治体が指定されております。
図の色が濃くなっているところが、北海道と、本日お越しいただいた鳥取県様、大分県様、鹿児島県様となっております。

続きまして、道庁の取り組みを紹介させていただきます。
道庁では宇宙基本計画と同じように宇宙機器産業、宇宙利用産業の両分野で産業を育てて大きくしていこうということで、産学官が集まって様々な取り組みを行っております。
本日現在で、ちょうど100の企業に参画いただいております。
この図が道が行っている連携会議の全体像です。

みんなが集まってワイワイとやるものなのですが、本日お話しいただいた高橋先生ですとか齊藤先生にもアドバイザーとして参画いただいております。
連携会議では、皆様の取り組みを共有したり、集まって出展を行ったりしているほか、内閣府・経産省にさまざまな補助メニューを用意していただいておりますので、みんなでそれを取りに行こうということをやっております。

片山氏:
北海道としても色々な活動支援をされているということや、政府とも色々と連携を取られているというのはよく分かりました。
続いて、大分県の江藤様ですけど、なかなかアウェイの空気感ですよね。
多分、この北海道宇宙サミットで、大分県がお話をするのはなかなか大変かもしれないのですが、逆にそこをわざわざこう呼んでいただいている、この北海道の懐の深さ。

江藤氏:
呼んでいただきありがとうございます。
隣に鹿児島県さんもいて、ちょっと親近感もあって嬉しく思います。

僕は2003年に県庁に入り、それから20年間働いてるのですが、農林水産部が一番長くて10年間いました。
その他、土木事務所とか市町村振興課とか、色々していたんですけど、4月までは医療政策課で、コロナ対応をずっとしていました。
多分、宇宙に1番遠い人間になっていますが、5月に来てから、皆さんとお話をさせてもらいながら、商工観光労働部も初めてだったので、企業さんとどういう話をしていけばいいのか、どういう方向で行けば良いいのかも、イメージでしかなく、やったこともないような中で始まりました。
大分県で宇宙を頑張ろうっていう話をずっと言われてたので、頑張ろうとしています。

大分県は、一体宇宙になんでそんなに絡みがあるのかというと、実は大分空港に3,000メートルの滑走路があって、「宇宙港にしていこう」という取り組みが始まっています。
2020年にVirgin Orbit社とパートナーシップを結びました。
Virgin Orbit社は、飛行機にロケットをくっつけて飛んで、その後ロケットを離して、ロケットが宇宙に行くような形なんでが、それを、まず大分空港から飛び立とうと。
ジャンボジェットになるので大きな滑走路が必要ということで、目をつけていただいて、知っている人は「あ、大分といえばスペースポートね」、みたいな方もいると思いますし、知らない人は今からでも全然大丈夫です。
写真にもありますが、海に突き出ている空港です。

陸地になく、周辺に民家が少ないのが利点の1つで、それは北海道の大樹町も同じですね。
昨日視察させてもらいましたけれども、海の方に作られていて、南も東も空いている、まさに大分空港も似たような滑走路になっております。
それで、パートナーシップを結んでやっていたのですが、ご存知の通り、Virgin Orbit社の経営破綻がありました。
ただ、Sierra Space社は、去年2月に兼松さんとパートナーシップを結んで、これは今度は降りてくる方ですね。打上げは縦型なんですが、水平で滑空して降りてくるものです。そちらもパートナーシップを結んでいます。
12月には、JALさんも入っていただいて、それを実現していこうとやっております。
3,000メートルの滑走路と観光資源、温泉と、集積している産業、ものづくり産業がある、ということで選んでいただいています。

片山氏:
大樹町の滑走路は1,000mで、将来は延長する構想はあるんでしょうけれど、大分空港の3,000メートルというのは全然違う。ロケットをやるわけではないんですよね。

江藤氏:
そうです。そういう意味で言うと、全然違いますね。
縦型で大樹町から打ち上げて大分に帰ってくる、というのも、当然ありだと思います。

片山氏:
すごいですね。色々な課題は山積みでしょうけど、種子島とか大樹町から打ち上げて、大分に帰ってくるという、サブオービタルでもない、なんか独特のね。もしかしたら、そのまま宇宙ステーションに行って、戻ってくるでも良いし、アメリカから宇宙ステーションに行って、大分に降りてくるということもあり得る。
まずは物資輸送からだと思いますが、将来的には旅行も含めて新しい形が提案できるかもしれませんね。

江藤氏:
やはり当然物資からになると思いますが、最後は人が行って、宇宙ステーションで何日間か過ごして、大分に帰ってくる、ということをイメージしています。

片山氏:
続いて鹿児島県の西村さん、お願いします。

西村氏:
鹿児島の人は北海道が大好きで、鹿児島にある山形屋という百貨店の北海道物産展には非常に多くの方が集まるということで、毎回ニュースになる地域でございます。
それでは、鹿児島県の取り組みを紹介させていただきます。

鹿児島県には種子島と内之浦に、JAXAが所有する射場があります。
種子島は今年で54年目、内之浦は61年目を迎えます。
これまで県庁は、打ち上げにあたって、地域の皆様との調整をさせていただいたんですが、宇宙ビジネスについてはやっていないじゃないかということで、令和2年に経済産業省出身の塩田康一知事が当選されて、「かごしま未来創造ビジョン」を改訂したタイミングで、これまでは農業と観光で稼いで、福祉にお金を充てるというような行政のスタイルに、新たに中小企業の稼ぐ力をつけていこうと、その中の1つのテーマに宇宙が入りました。

それで昨年の6月30日に、この宇宙ビジネス創出推進研究会というのを産学官で設立したところです。
これまで、大体70名ほどの方々に参加いただきながら、まずは宇宙ビジネスについて理解していきましょうというセミナーを中心に、JAXAの皆さんと三菱重工様のご協力をいただきながら、理解を深め、どうやったらビジネスに繋がっていくかというのを研究しています。
昨年度は、スライドの右下に記載がありますロードマップを整理したところです。

S-NET自治体には、実は遅れて入らせていただきました。
今年の3月にようやく入らせていただきまして、宇宙ビジネスに関しては実はまだまだひよっこというようなのが鹿児島県の状況です。

令和5年度の取り組みを書かせていただきましたが、予算規模で1,900万円。宇宙事業としては小さい事業規模なんですけども、ソフト事業を中心に行っています。
宇宙ビジネス研究会とプロジェクトチームということで、プレイヤーはあくまでも鹿児島県庁じゃなくて民間企業。プレイヤーをどんどん育てていこう、衛星データに触れてみよう、とプロジェクトチームを立ち上げ、勉強会をやっています。

人材育成セミナーの開催と宇宙ビジネスマッチングは、去年1年間の研究会で、ビジネスをしていく上での課題を洗い出した際に、やはり人材育成は大事なテーマだということと、どこがビジネスの入口か分からない、というころでビジネスマッチングの場に行けるようにしようと、予算を組みました。

図の右側の2は補助金です。県の補助事業としては破格で、補助率が10分の10になっています。4番目に書いてるのが宇宙ビジネス共創支援事業で、具体的には昨年度、鹿児島大学で開発しているハイブリッドロケットの開発と、地上局アンテナの精度を上げていく取り組みの支援をしております。

5番目は、衛星データ利活用実証補助ということで、こちらは上限額600万円ですが、衛星データを使って地域課題を解決していこうとしています。
昨年度行ったテーマは海況情報、潮流だとか海水温だとかを、衛星データで分析しました。
潮流は表層ので流れと、海中の流れが違う、2枚潮だとか3枚潮というのがあるらしいんですね。それによって漁師の方は、網が綺麗に開かなくて網が切れてしまうとか、魚が取れないとか、そういう課題があるので、海の状況が可視化されるようなデータが取れないかという取り組みと、合わせて赤潮対策として、潮の流れから赤潮の流れをウォッチしていこうという取り組みを実証事業でやってるところです。

片山氏:
内之浦は日本のロケットの発祥の地でもありますし、種子島もあり、昔は「射場」と、今でも言いますけど、今は「スペースポート」という、ちょっと広いくくりになっている。
王道の中の王道、スペースポートといえば、というところがやはり鹿児島にはあるような気がしますね。

西村氏:
打ち上げの実績がはありますので、ハード的な部分はJAXAの施設ですから、あると思うんですけれども、さらに、そこに集められたノウハウ、例えば民間企業が打ち上げようとした時に、皆さんぶつかる障害があると思うのですが、そこを今までの知見を生かして、民間活用を少しずつ広げていきたいです。
鹿児島も射場はあったんだけど、そこが民間として、使いづらい部分があるから、より使いやすい、北海道や和歌山にできたりという動きがあると思うんですね。
ですから、そういうニーズに応えながら、鹿児島の射場の立ち位置も、少しずつ変えていかなきゃいけないと考えています。
なかなか、県としてこうあるべきだという話ができないところを、この研究会という形を取ることで、色々な自由な意見が出せる場があるのが、この研究会の強みでもあります。

片山氏:
JAXAも今、どんどん官民連携を促進させていますし、だからこそ、産業集積の可能性も高まっているとは思いますが、やはり、大樹町もシリコンバレーを目指しているので、官民連携の産業集積の形と、この大樹町の産業集積の形、どう棲み分けていくのか、もしくは棲み分けないのか、みたいなところも徐々に明らかにしていけると面白いかな、と思って聞いておりました。
続いて鳥取県の井田さんより、お願いします。

井田氏:
さっき鹿児島の西村さんもお話しされたので、鳥取県も北海道のことがすごく大好きで、多くの人が頻繁に行く「北海道」が鳥取にあります。
何かと言うと、回転寿司の「北海道」というのがあって、鳥取は日本海に面してるので海鮮が豊富なんですけど、鳥取で獲れたお魚なのに、お店の名前は「北海道」という名前で出していて、めっちゃ流行ってるお店があって、はい、非常に愛着があります。

まず、鳥取県の位置が分からない方もいらっしゃるかなと思って、地図を出させていただきました。
赤く点線で囲ってあるところで、お隣の島根県と、よく間違えられます。位置関係、島根が左側で、鳥取が右側にあります。

鳥取と言えば、鳥取砂丘は皆さんご存知かと思います。鳥取県の東部にあります。
それ以外に食も豊かで、冬は松葉がにがありますし、二十世紀梨、あるいは鳥取和牛等々、色々な食材があるところになります。
県内には温泉がたくさんあるので、出張等でいらっしゃったら、温泉も楽しめます。
鳥取の取り組みは、少し毛色が違います。

鳥取県は、昨年度から「鳥取砂丘月面化プロジェクト」をやっています。
宇宙産業の創出に取り組む自治体が色々ある中で、鳥取県ならではの取り組みだと思っております。
鳥取砂丘内に、月面探査車などの実証試験ができるフィールドを、今年の七夕の日にオープンさせていただきました。
この写真のようなところになるんですけども、鳥取砂丘の砂地を生かして、そこに平らなエリア、あるいは最大20度の斜面ゾーンと、穴を掘ったり山を作ったりして使えるようなスペースを設けております。
規模的には0.5ヘクタールぐらいです。

鳥取県が目指すところとしては、国内外の企業様、あるいは研究者の方に、月面探査等での実証試験で使っていただける場所になれば、ということで、それを支援していこうと思っています。
使っていただくにあたっては、鳥取県と連携協定を結ぶとか、そういうことも含めてお願いをさせていただいて、県内の企業あるいは研究機関を含めて連携いただいて、産業創出につなげようと思っています。
右下の写真が、ブリヂストンさんが月面探査車のタイヤ試験の様子と、東北大学等の学生チームが月面探査ローバーの実証試験をしたときの写真で、今月もいろんな都道府県から実証試験に来ていただく予定になっていますし、今後も続くと思っていて、走り出しとしては、非常に感触が良いなと思っています。

画面上部の月面デジタル化というのは、関連のものになるんですけど、鳥取県は昨年度、「月面と鳥取砂丘はどう似ているのか似てないのか」問題を検討しまして、起伏がある状況であったりとか、砂の性質とかがどう違うのか真面目に研究しました。

グラフがあって、45度ぐらいで上がってるのが、月面のレゴリスという砂、割と縦に上がってるのが地球の砂で、その中の一番左の方が鳥取砂丘の砂、右の方がJAXAさんの月面探査の実証フィールドの砂です。
砂の粒の大きさを比較すると、比較的月の砂と似ていました。
そっくりであることは実は必要なく、違いがデータ的に分かることで、鳥取砂丘のフィールドで実証試験をした場合にこういう結果が生まれた、と分かると、月だとこんな挙動になるよね、みたいなことが推測できるようになります。

片山氏:
はじめ鳥取砂丘を月と見立ててみたいな話を聞いたときはぶっ飛んだことを考えますね、という感じだったんですけど、これがムーンパークとか、ルナテラスとか、どんどん具現化されて、本当にすごい実行力ですね。

井田氏:
鳥取県の平井知事も、この提案を挙げたところ、これはぜひやろうということで力が入っていて、実は実証フィールドの整備は、知事自ら「やろうぜ」という話を投げかけてくださって、そこからスタートしました。

片山氏:
平井知事、めちゃめちゃいいノリされてますもんね。
VIVANTごっことかって、砂丘が月かと思ったら、VIVANTの砂漠だ、みたいなことをおっしゃってましたよね。

井田氏:
乗っかれるものはなんでも乗っかっていこう、というスタンスで、あまりお金をかけずに取り上げてもらうには(どうすればよいのか)、みたいなところに力を入れているといろはあります。

片山氏:
結構ギャグ的なPRのみならず、2020年から30年にかけて、まさにアルテミス計画で、日本も含めて月面に到達するだけじゃなく、基地を作って恒常的に人が暮らせるような状況にしなければならない。
そうしたときに、必要なエネルギーとか食料とか水なども地産地消しなきゃなんない。月面でやることがいっぱいなんですよね。
その時に、鳥取って実はめちゃめちゃポテンシャルあるんじゃないか、と注目しています。

井田氏:
私もそう思っていて、S-NET自治体も10いくつかあって、全国で色々な地域が取り組んでいる中で、鳥取県はどこのポジションを取っていくか考えたときに、皆さんご存じの鳥取砂丘があるので、月面=鳥取砂丘というところで存在感を示して貢献できればと思ってます。

ウチは宇宙をこう使う! 宇宙×○○

片山氏:
次の質問、我が地域の「宇宙×○○」。
最近だと「宇宙×金融」ですとか、「宇宙×旅行」ですとか、「宇宙×ビッグデータ」とか、全ての産業が宇宙に膨張していっている時代になったと思います。
地方自治体はそもそも「宇宙×地域・不動産」だったりすると思うんですけど、そこから宇宙の展開というのを、それぞれの自治体さんで色々取り組まれているということなので、そこをお聞きしていければなと思います。
北海道の八木さんからお話しいただければと思います。

八木氏:
北海道の中ではよく「宇宙の6次産業化」という言葉が使われております。

一次産業がロケット発射場、二次産業がロケット、三次産業がデータ利用という言い方がされておりますけども、それぞれ個別に取り組んでいく必要があると感じておりまして、それぞれ着実に取り組んでいこうと考えております。
データ利用の取り込みを紹介させていただきますと、今年、経産省様のサービス事業の中に、データ利用環境整備事業というものがありますけども、北海道内で実証をしてみたいという企業様が3社いらっしゃって、3社ともめでたく採択されております。
左側のグリーン&ライフイノベーションにつきましては、先ほどご登壇されました齊藤先生の企業です。
この事業自体が、実証が主目的ですので、まずはやってみようという、それぞれチャレンジングな内容になっております。

次はロケット側のお話です。
こちらもつい先ほどご登壇されました森田先生の企業で、今年起業したてのJAXA発ベンチャーです。現在はJAXA内に拠点を置いておりますが、つい先々月、北海道内にあります有名なロケット企業、植松電機様さんと協力協定を結びまして、将来的にはおそらく、ここ大樹町から抜本的な低コストのロケットの打ち上げをしてくれるのではないかなということを、強期待しております。

北海道庁の支援施策をご紹介します。
こういった新しい企業様、新しいことにチャレンジしたいということがありましたら、企業立地補助金という、ちょっと道庁の中では大きめの予算になりますけども、宇宙産業を成長産業分野に位置付けまして、こういった補助金を用意しておりますので、企業の皆様、ぜひご相談いただければと思います。

最後に、経済産業省の支援施策である、事業再構築補助金です。
今、第11回目が終わったばかりです。12回目はまだ発表されていなかったと思いますけども、もともとコロナ予算で、今年度で終わりではないかと言われておりますが、非常に使いやすい事業と言われております。
私は経産省に5月まで出向していたのですが、この事業に深く関与しておりまして、かなり皆様の採択に関与していました。
宇宙分野に新しく参入したい企業様に多く使っていただいている施策になります。
もう使ってしまったという企業様もいらっしゃると思いますが、案件が異なれば、2回目、3回目と申請できることになっております。
ぜひ、2回目、3回目も狙っていただければと思います。

片山氏:
非常に手厚いバックアップを道庁としてされていることがよく分かりました。
続いて大分県の江藤さん、よろしくお願いします。

江藤氏:
大分県からは2つですね。

県の観光プロモーションで「宇宙人割」を打ち出したところ、プロモーションだけじゃなく、実際に実施してはどうか、というご意見をいただいて、旅館組合さん等に流したところ、独自でやってもらえることになりました。
割引の中身は、入浴料を割引いたり、宿泊を1時間延長させたり、それぞれできる範囲でやっておりました。
今年は宇宙人割はやっていませんが、旅館に行ったら、やってくれるところがあるかもしれないです。
そんな形で、宇宙でプロモーションしたところ、広がりがあったっていう話です。

続いて、県立国東高校のスペースコースについてです。
スペースポートは、イギリスのコーンウォール州にもありまして、そこはVirgin Orbit社が1回打ち上げをしています。
まさにスペースポートになったところではあるんですけど、高校同士で交流していまして、それが契機となって、今度スペースコースを作って、教育の分野でも、宇宙人材を作る、宇宙を考えることのできる人間を作っていくということで取り組んでいます。

片山氏:
「宇宙人割」は、宇宙人を対象とした割引制度なんですね。
おいおいなんだよ、と思ったら、これ自己申告なんですって。
「私は宇宙人です」って言ったら割引かれるっていう。
この自らツッコミどころを作り、さらに自己申告っていうダブルツッコミどころでかなりバズって、全国的にも話題になりましたよね。
そのあたりのセンスが秀逸だなと思って、リスペクトして見ておりました。

江藤氏:
これも大分県からお願いはしたんですけど、発想自体は実は色々な人と話をしながら出てきたものです。
実は皆さんも宇宙人なんですね。ま、地球人ではあるんですけど、宇宙の中の地球宇宙人ということで、本当に自己申告で、皆さん利用できるようになっています。

片山氏:
うまいこと言いますね。
続いて鹿児島県の西村さん、よろしくお願いします。

西村氏:
鹿児島県も「宇宙×教育」という部分なんですけれども、内之浦の宇宙観測所がある肝付町に県立の楠隼中高一貫校という、全寮制の中高一貫校があります。
2015年に開校した当時から、JAXA公認の推進モデル校という形で、授業の中にJAXAの職員や大学教授によるシリーズ宇宙学という講義があります。

中学校1年生から高校1年生までが講義を受けています。
2023年からは、新たに九州のQPS研究所様、Fusic様のご協力をいただき、起業とかものづくり、事業戦略、営業、衛星データの活用という、少しビジネスに寄った特別講義を行いました。
2015年から取り組んできた成果なんですけれども、この宇宙ビジネスのコミュニティのど真ん中にありますSPACETIDE様で、ここの卒業生が活躍されてるというのが、1番の成果かなと思っているところです。
この高校は、非常に偏差値も高くて、起業に関しても非常に関心が高い。
宇宙ベンチャーの皆さんとここの高校生を合わせる企画を今後も取り組んでいくことで、どんどん鹿児島から宇宙人材を輩出したいと思っているところです。

片山氏:
宇宙と教育は、実はすごく親和性があるというか、宇宙自体がフロンティア精神の塊みたいな感じなので、そういった人材が自ずと集まってくるし、努力家で優秀な人もたくさん集まってきます。
しかも宇宙って総合的な学問ですよね。なので、宇宙を通じて色々学んでいく。そして実践を通じて学んでいくっていうのは非常に有効かと思っています。

個人的な見解で言うと、若干サイエンスとビジネスに寄りすぎている部分はあると思うんですけど、宇宙って国際政治だったり、もともとはSFだったり、エンターテインメントとか、国防とか、そういうのも昔はもっと密接に繋がってたんですよね。
歴史、政治、エンターテインメント、そして、軍事的なことも含めた、ありとあらゆることを学べる、いわゆる学際的な学問の旗印として、宇宙というのをもっと使っていくような環境ってできるんじゃないかな、なんて思ったりします。そういったのを目指していたりしますか。

西村氏:
宇宙だからと言って宇宙のことだけを学ぶってだけじゃなくて、片山さんがおっしゃったように、プロジェクトマネージャーであれば、このプロジェクトをこの予算で回さなきゃいけないとか、資金調達をしなきゃいけないとか、そういったところを考えながら、何をしなきゃいけないのかっていうことを学べるというのが、宇宙教育の良さというか。挑戦の後押しとなる支援をしていきたいと思っています。

片山氏:
最後に鳥取県の井田さん、よろしくお願いします。

井田氏:
鳥取県は、宇宙産業創出の取り組み自体は、始めてから2年半ほどにはなるんですけど、その下地として「星取県」という取り組みは、実は8年ほど前から始めています。
美しい星を生かして、観光とか宇宙産業、地域振興、子供の教育などに使ってきたということがあります。
行政では星空保全条例という星空を守る条例を、全都道府県で初めて施行したり、星空予報という星が今日、明日、明後日、鳥取県内でどれぐらい綺麗に見えるかっていうのをウェブ上で公開したりしました。
民間連携としては、星空観光メニューを作る事業様のご支援をしたり、あるいは、民間でも星空活用イベント、グランピングとかのイベントが民間主導で行われたり。あるいは、星取県コラボ商品っていうのもありまして、ビールとか、お菓子とか、鳥取県内の色々な企業さんが、星空や宇宙をテーマにした新商品を開発して、星取県、あるいは宇宙産業を含めて、情報発信を一緒にしていただくとともにその商品を売っていくというような取り組みをしてきました。

片山氏:
確かに星が綺麗で、疑似月面体験ができるというのは、それこそ観光資源、R&Dにもなって、かつ観光資源にもなる、そういったところに最大活用できるかなと思いますね。

井田氏:
そうですね、その両方を取りに行きたいなと思っています。

片山氏:
観光だけでも、R&Dだけでも、なかなか難しいですが、これが一元化できると非常に面白い産業に育つと思います。

井田氏:
そうですね、鳥取県自体を底上げするのに、非常に良いテーマだなと思ってやっております。

30年後の宇宙と地方

片山氏:
最後に一言、30年、40年ぐらい先を見据えて、どうしていきたいか、お聞きできればと思います。
八木さん、よろしくお願いします。

八木氏:
まもなく、大樹町からロケットの打ち上げがまた始まるというところまで来ておりますが、30年後は、今日皆さんいらっしゃるすぐ近くにも、素敵なサウナが実はたくさんありまして。ととのいながらロケットの打ち上げが見られる、そういった所になれば良いなと、期待をしております。

片山氏:
この後、サウナでととのう予定の方、この会場でも何人もいるようです。「ととのい需要」をしっかり取っていこうっていうところがあるみたいですね。
続いて、江藤さん、よろしくお願いします。

江藤氏:
30年後、僕は75歳ぐらいになるんですけども、もうおじいちゃんですよね。多分孫ができて、一緒に大分から宇宙に飛び立つのを見ながら、帰ってくる子供を迎えるみたいな、そんな世界になれれば良いなと思っています。
宇宙産業っていう話じゃなくて、普通に皆さんが宇宙を使っている、宇宙が当たり前、っていうような世界になっているんじゃないかと思っています。

片山氏:
西村さん、よろしくお願いします。

西村氏:
30年後と言わずなんですけれども、スペースポートからスペースポートへ、鹿児島から北海道にすぐ行けるという環境が整っていると思いますので、そういう地域間の交流が、より活性化されれば、と思っています。

片山氏:
井田さん、よろしくお願いします。

井田氏:
鳥取県は若者が県外にどんどん出ていって、なかなか県内に魅力的な働き先、仕事がないっていう状況があると考えていて、この宇宙産業を、特に月面分野だと思ってるんですけど、鳥取県に作ることで、若い人たちが帰ってくる、あるいは鳥取にもともと縁がなくても、月面と言えば鳥取ということで就職をするみたいな形で、鳥取が盛り上がればなと思っています。
あと、さっきの鳥取県内にある人気店の回転寿司「北海道」、ここも引き続き流行っていれば良いなと思っております(笑)

片山氏:
会場の方から「知事の反応はそれぞれどうですか」と「火星やりますか」っていう質問が来ているみたいです。

井田氏:
月面も火星も同じ、宇宙の星なので、どっちも全然ウェルカムで、水、金、地、火、木、土、鳥取県としてはどれも対象になり得ると思っております。

片山氏:
鳥取県は、水、金、地、火、木、土、全部取りに行くんですね。でかいですね。
最後に私から、30年後っていうと、もう宇宙ビジネスっていう言葉は死語になって、もうなくなっているんだろうなということはほぼ確信しています。
たとえば、今、「インターネットビジネスカンファレンス」みたいなことはもう無いですよね。
インターネットビジネスから生活から、もう全て使っていて、全ての人にとって当たり前になってしまったからですよね。
それと同じことが、今宇宙に起こっているのかなと思います。
たった上空100キロぐらいから宇宙って言いますけど、大樹町からは東京より宇宙の方がはるかに近い気がしまのです。全ての産業、人、生活が宇宙ともうすでに繋がっているし、今後、ますます繋がってくるようになると思います。
だから逆に、そこに興味も関心もないっていう方は、やばいんじゃないの、っていうぐらいですし、30年後は間違いなく「昔、宇宙ビジネスブームが来てた頃はね」みたいな、今じゃもう当たり前だけどねみたいになっていくので、そのときに、ここにいらっしゃっている皆さんが、おそらく色々なところで、リーダー的に活躍されていることを祈って、セッションを終了させていただきたいと思います。
登壇者の皆様、そしてご清聴いただいた皆様、どうもありがとうございました。

※本記事はカンファレンスでの発言を文字に起こしたものです。編集の都合上、言い回しを調整している場合がございます。

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