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【イベントレポート】北海道宇宙サミット2022 〜Session1 世界の宇宙ビジネスの現在地と未来〜

登壇者

大樹町長 酒森正人氏
経済産業省製造産業局宇宙産業室室長 伊奈康二氏
国土交通省北海道局参事官 米津仁司氏
SPACETIDE代表理事兼CEO 石田 真康氏
SPACE COTAN株式会社代表取締役社長兼CEO 小田切 義憲氏(モデレータ)

SPACE COTAN株式会社代表取締役社長兼CEOの小田切氏

小田切氏:
北海道スペースポート(HOSPO)のミッションは射場整備や営業、調査研究を行い、最終的には北海道に「宇宙版シリコンバレー」を形成することです。宇宙ビジネスを北海道の基幹産業として発展させます。

大型ロケットでの大型人工衛星打上げと並行し、小型ロケットで小型・超小型衛星を打ち上げるビジネスがますます盛んになります。打上げ頻度が増え市場が成長していく見込みです。

世界では約70の発射場が建設・運用されています。特にアメリカでは14カ所が整備され、打上げを開始したところもあります。こうした現在地を踏まえ、皆様にまずは自己紹介と宇宙ビジネスの話を聞かせていただきたいと思います。

SPACETIDE代表理事兼CEOの石田氏

石田氏:
SPACETIDEは東京を拠点に活動している非営利団体で、アジア最大級の宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE」を開催しています。また、A.T. カーニー株式会社というアメリカが拠点の経営コンサルティング会社で仕事をしています。宇宙ビジネスへの熱狂は世界に広がっており、新たに取り組む政府機関や民間企業、投資家を支援するコンサルティングチームをつくろうとグローバルスペースグループを立ち上げました。
日本、欧米だけでなく、中東の政府やインド、オーストラリアなど色々な国から相談が来ています。

政府の委員会でも活動しています。国が50、60年取り組んできた宇宙業界で、民間の活動を盛り上げるには国の政策も変わる必要があるということで、日本の宇宙政策がより良くなり、民間の成長に繋がるよう励んでいます。

経済産業省製造産業局宇宙産業室室長の伊奈氏(中央)

宇宙産業は国としても保持すべき産業基盤

伊奈氏:
宇宙産業は安全保障や経済、社会のインフラとなりつつあり、国としても保持すべき産業基盤です。重要な産業基盤が損なわれないためにも、関係省庁と連携しながら日本の宇宙産業が世界をリードできるよう色々な取り組みをしています。

経産省が力を入れているのが小型衛星を一体運用するコンステレーションです。安全保障や経済、社会の基盤となる見込みで、ミサイル防衛や災害・事故の状況把握、通信を提供する全地球インターネットなど多様なサービスが出てきつつあります。北海道のベンチャー企業であるインターステラテクノロジズ(IST)も小型衛星を打ち上げようとしていますが、政府としても利用できるよう、どんどん打ち上げられるようになると非常にありがたいです。

小型衛星コンステレーションの商流全体を見て、衛星、センサ、ロケットなどのハード分野と、衛星データを利用してもらうための環境整備、ビジネスの補助事業などのソフト分野の両面で開発支援を進めています。

建設、スマート農業、除雪 衛星データで自動化・省力化

米津氏:
北海道はさまざまなポテンシャルがあり、我が国への貢献にいかに繋げるかという視点で北海道開発を続けています。そのために必要な政策を企画・立案し、遂行に必要な予算を確保する仕事をしています。

北海道局の前身である北海道開発庁で、北海道の新産業として宇宙に着目した時代もありました。現在進めている北海道総合開発計画でも宇宙というキーワードが出てきています。

地方は人材不足が課題で、ICTを使った建設工事が盛んです。スマート農業や除雪にも衛星データを使うことで、2名体制だった作業が1名でできるよう自動化・省力化を図っています。社会インフラ分野でも宇宙の影響は非常に大きいです。

大樹町長の酒森氏

酒森氏:
大樹町が宇宙のまちづくりを始めてから37年経ちました。1984年に北海道東北開発公庫、現在の日本政策投資銀行が、北海道での大規模航空宇宙産業基地構想を発表し、1987年に北海道が新長期総合計画戦略プロジェクトに北海道航空宇宙産業基地構想を取り上げ、大樹町がその候補地となったことが始まりです。

HOSPOは東と南に海が開かれ、拡張性が高く、天候が良い。そして帯広空港や隣町の広尾町にある重要港湾を含めた周辺へのアクセスの良さが適地と言われる理由です。ISTが2019年、ロケット打上げに成功しました。国内では種子島と内之浦に続き、3番目に宇宙に到達した射場となり、宇宙への入り口としての地位を築いています。

HOSPOはJAXAをはじめ、多くの団体・企業に実験の場として活用されています。9月には北海道の鈴木直道知事や内閣府の和田義明副大臣を招き、LC-1射場建設と滑走路延伸の着工安全祈願祭を行いました。国の地方創生拠点整備交付金と企業の皆様からの企業版ふるさと納税を活用し、3年後の完成を目指しています。

垂直打上げロケット、滑走路を使った水平発着の往還機、関連工場やターミナル、研究機関等が大樹町、十勝・北海道に集まる。これが地域の大きなエネルギーとなるよう、皆様の応援のもと大樹町の役割を担いたいです。

小田切氏:
日本が宇宙ビジネスで成功するには何が必要でしょうか。

宇宙は大競争時代 日本の成功には投資が必要

石田氏:
宇宙はすごく可能性があり、世界的には大競争時代に入っています。日本が成功するにはもっと投資が必要です。世界がコロナ禍になった過去2年間、あらゆる業界で投資が止まりましたが、宇宙は伸び続けました。世界では民間だけで過去3年で3〜4兆円が投資されています。日本のスタートアップへの投資は過去5年で1,000億円ほどです。世界が勢いづいている中ではまだまだ足りません。

小田切氏:
経済産業省の取り組みを教えてください。

伊奈氏:
先月アメリカで小型衛星の国際会議に出ましたが、新しいビジネスがどんどん出てきています。他方で日本の企業が戦えないかというと、私はやっていけるのではないかとの印象を持ちました。 
小型衛星分野では、2010年代に『ほどよしプロジェクト』という、程よい信頼性で安い衛星を作るプロジェクトをオールジャパンで進めてきました。直近では、10〜30キロのキューブサット及び100キロ程度のマイクロサットの衛星バスや、姿勢制御系、推進系、電源系を含む基盤部品について支援を行い、国内にサプライチェーンを築こうとしています。

小型衛星コンステレーションを重要技術に位置付け
数百億円規模の予算で技術開発

先日国会を通過した経済安保推進法に基づき小型衛星コンステレーション技術を特定重要技術と位置づけ、向こう数年で数百億円規模の予算を活用し、日本が世界で戦える分野に集中して社会実装に向けた技術開発を進めます。また、衛星データが様々な産業分野で使われるよう、今年度から十勝地域を含む日本のいくつかの地域を実証地域とし、商用衛星事業者から衛星データを調達し、ソリューション開発事業者に無料で使ってもらう取り組みを3年間でやっていきます。

小田切氏:国土交通省北海道局での取り組みを教えてください。

国土交通省北海道局参事官の米津氏

米津氏:
宇宙ビジネスが発展するには基盤整備が必要です。帯広から大樹町のちょうど町境のとこまで高規格道路が延びていますが、最終的には広尾まで繋がり、その先には十勝港があります。こうした物流ネットワークを整えることが、我々ができる大きな支援です。

北海道開発を総合的に進めるために北海道総合開発計画という新しい計画作成を検討しており、2つの目標を設定しようと思っています。一つは食料安全保障、脱炭素化、観光立国という北海道が力を発揮する部分をまず大きな目標にします。もう一つは、強靱化、ネットワーク整備といった土台をしっかり作るという目標を立てようとしています。宇宙ビジネスは、前者の目標にしっかり位置づけたいと思います。

小田切氏:
酒森町長に今後必要となる点、課題等を含めてお話いただきたいと思います。

酒森氏:
HOSPOの整備は、今月着工したLC-1射場を計画通りに完成させることが最優先です。また、既存の1,000m滑走路を300m延伸します。2024年からは次の射場であるLC-2の整備を計画していますが、高額な事業費になるので、北海道、そして何よりも国の大きなお力添えをいただかないと実現は無理です。国策としての取り組みをぜひお願いしたいです。

日本の衛星の2割がロシアのロケットから打ち上げられておりましたが、現在はそれがままならない状況です。日本の衛星を国内から打ち上げる必要があり、HOSPOの役割はそこにあります。今後も多くの方々のご協力のもと整備を進め、それが日本の航空宇宙に大きな役割を担っていくとの強い自負を持って取り組みたいです。

小田切氏:
宇宙ビジネスが、日本、北海道にどういった影響を与えるポテンシャルがあるか、一言ずつお願いします。

石田氏:
これから日本は地上ではなく、空のインフラに投資をする時代に変わらねばいけないと思います。人口減少は日本全体が抱える問題で、共通しているのが高度経済成長時代に張り巡らされたインフラの老朽化です。衛星データや衛星通信で、省人化されたインフラ整備や農業の自動化など、色々なものが実現できるので、北海道が空のインフラで地上の課題を解決する先進地域になると、日本全国の明るい未来に繋がります。

伊奈氏:
宇宙産業は日本の総力を発揮しないと戦えない領域です。国内宇宙ベンチャーの技術は、自動車や電気電子、プラントエンジニアリングの技術を活用していたりします。日本の得意分野をうまく組み合わせることが必要です。
霞ヶ関では宇宙関係省庁が非常に良く連携し、一体となって取り組んでいます。この雰囲気を地域まで広げ、日本が一丸となって世界と戦っていければと思います。

米津氏:
宇宙産業はロケット打上げだけでなく、製造業、観光業など色々な産業に繋がる可能性があります。様々な形で支援し、宇宙ビジネスを盛り上げたいです。

酒森氏:
宇宙のまちづくりは大樹町だけの取り組みではありません。道民のご理解をいただきながら、オール北海道で拡大することが求められています。北海道経済連合会と日本政策投資銀行の試算では、HOSPO整備による北海道への経済効果は年間267億円になります。2,300人の新しい雇用が生まれ、観光客が17万人増えます。当初は夢物語でしたが、今は北海道にとって大きなエンジンとなる、実現すべき取り組みです。

北海道宇宙サミット2022全編
https://www.youtube.com/watch?v=tlT_RPJ6AUQ&t=133s

HOSPO整備へふるさと納税募集中

大樹町、SPACE COTAN株式会社は、HOSPO施設の拡充のため企業版ふるさと納税や、個人版ふるさと納税を募集しております。
「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョンに共感いただける皆様のご協力をお待ちしております!

〈ふるさと納税詳細〉https://www.town.taiki.hokkaido.jp/soshiki/kikaku/uchu/hokkaidospaceport.html
〈ガバメントクラウドファンディング〉
https://camp-fire.jp/projects/view/637366?list=search_result_projects_popular

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