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夜にまつわる私の好きなもの

夜といえば、燃え殻さんのエッセイ「すべて忘れてしまうから」の「あの夜、『ナイトクルージング』を一緒に聴いた」という話が好き。

東日本大震災後、本当の情報と嘘の情報とグレーな噂が深夜まで飛び交う日々、心も体も限界なのに全然眠れない夜に、「今夜眠れない人へ」という気持ちで、Twitterにフィッシュマンズの『ナイトクルージング』のYou Tubeを貼り付けたという話。

疲れましたね。今夜、すべての人が、深い眠りにつけますように。

これは好きな優しさだなぁと思う。


フィッシュマンズの『ナイトクルージング』。
この燃え殻さんの話がきっかけで出会ってから、夜になるとよく聴いている。

誰のせいでもない、誰のためでもない、そんなふうに夜はある。
そう、夜はただある。だから、夜と一緒に漂う。
これも優しい。そんな感じがする曲。

UP AND DOWN, UP AND DOWN
SLOW FAST,  SLOW FAST
STAY TOGETHER
ナイトクルージング

この部分が気持ちよくて良く口ずさむんだけど、最近はうちの2歳の息子も一緒に歌えるようになってきた。


優しい夜といえば、岡野大嗣さんの歌集「たやすみなさい」に収録されているこの短歌。

たやすみ、は自分のためのおやすみで「たやすく眠れますように」の意

「たやすく眠れますように」って、ちょうどいい。眠れない夜はつらい。

自分のためのおやすみが、贅沢になるのは良くないなと思う。
誰かに優しくしたいなら、まずは自分に優しくしないと。
「誰かのため」と「誰かのせい」は隣り合わせかもしれない。


眠る夜もあれば、眠らない夜もある。
眠らない夜といえば、くるり「Tonight Is The Night」。

眠ろうとしなければ、独りぼっちの夜は楽しい。

Tonight is the night
独りぼっち
楽しくて楽しくて
すぐ朝が来る

ここのところ、私にはいつも「トゥナイト、誘い」って聞こえる。だから好き。
夜の世界に誘う曲。
石鹸が意味深に香り、ギターがぎゅわんぎゅわん響く、特別な夜の世界。


夜の世界といえば、穂村弘さんのこの短歌。

ハロー 夜。 ハロー 静かな霜柱。 ハロー カップヌードルの海老たち。

この歌は、宇宙と交信してるみたい。
この夜は、暗くない夜。カップヌードルのカップみたいな白い発泡スチロールでできている夜。
白い夜は、音を吸い込む、静かな夜。
白い発砲スチロールの世界はしんと冷えている。霜柱には、触ってみないと気づかない。霜柱に触っても、音は吸い込まれていく。
この白い静かな夜に、カップヌードルのあの小さな海老たちに、そうっと声をかける。
あのくるんと丸まった海老は、実はどこか遠くの宇宙ステーションに繋がっている。
「ハロー」。交信する。「ハロー」。耳を澄ます。
たぶん、すごい世界の秘密の話。

この短歌は、Twitterの短歌botで「いいね」し続けるうちに覚えてしまった一首で、実は歌集は読んでいない。
歌集を読むと、またイメージ変わるのかも。


以上、夜にまつわる私の好きなもの連想ゲーム、今日はここまで。

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