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【SS】知らないアリアと白黒の鍵
その都には、あまりにも大きな教会があった。
澄んだピアノの音が中から絶えず響きつづけ、離れた場所からみると建物の形はどこかパイプオルガンを模したようにも見える。
周囲には歌劇場や楽器屋などがひしめき、かごいっぱいに抱えて大通りへと出てきた花売りの娘も、歌うように楽しげな声で季節の花束を宣伝して回っている。おおよそこんな光景が、どの地域でも見られる世界。
この星は、当たり前のように音楽に支配
[SS]宙にクリオネ
見上げた海に、悠然と泳ぐクジラ。
日の光は今やあまりにも遠く、ささやかだ。
スクラップにされた機械たちの山の上。現状だと、この世界でもっともソラに近い場所。
その天辺に佇むひとつの人影は、悪気なく視界を塞ぐクジラの向こうに、一昨日や五日前と同じように、かつてのささやかな思い出を探していた。
「⋯⋯今日も、見えないや」
彼らのあまりに利己的な生命活動は留まることを知らず、ツケはどんどんと押