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妹からの贈りもの

私には3つ年下の「いい意味でとんでもない妹」がいる。

まず、頭がめちゃくちゃ切れる。
私が小学校5年生で学校で割合の計算を習っていたとき、
それにつまずいて四苦八苦している私の姿を見ながら、
当時2年生だった妹はどや顔ですべての問題に瞬発で答えてきた。
暗算能力が桁違いだ。
悔しくてめちゃくちゃ泣いていた覚えがある。母は妹がすごいのと、私が悔しくて泣いている姿に笑っていた。
割合の計算を習ってもいない妹がなんでわかるのか…。

記憶力も桁違いだ。
神経衰弱では生まれてから1度も勝ったことがない。
負けるたびに悔しくて泣いた。その悔しがっている姿を見た母や祖母はゲラゲラ笑っていた。
チンパンジー並の瞬間記憶力を持ち合わせているため、私は時々妹のことをおちょくって『チンパ』と呼んでいる。
妹が「明日大事な試験だ」と言えば、
家族皆が口を揃えて「チンパ!!能力発揮しておいで!頑張って!」…といった具合に、この『チンパ』という単語が我が家では日常茶飯事に使われる。


そして小柄な私に相反して体の大きい妹であったため、喧嘩ではどうあがいても太刀打ちできない。
私も負けじとやり返したが、めちゃくちゃ強い。
何回も蹴飛ばされてきたが、あんなにキック力の強い妹はこの世にいないと思う。5メートル先に吹き飛ぶような勢いで蹴り飛ばしてくる奴だ。

ちょいちょいたくましく男勝りなところもあったため、いろいろなところで頼りになる。
そして私とは性格も真反対で、とても社交的で、ユーモアあふれ、決断力や自立心、行動力に優れ、
常にたくさんの友達に囲まれていた。
私の持っていない真逆のものを全て持っている。

その上、瞳は大きく、透き通るような色白の肌を持つ。
姉バカ丸出しだが、妹は猿顔の私とは違ってとても可愛い。

生まれ変わるなら妹になりたい。
…そんな憧れの妹だ。

ある日のこと、
私が高校受験を迎える日の朝、妹が「合格お守り」と称して手作りお守りを私にくれた。
こげ茶色の地味な(失礼な!)お守りで、不器用ながらも一生懸命裁縫道具を使って縫ってくれたようだ。とてもうれしかった。

妹「のぞみ(妹には舐められているため、私をお姉ちゃんとは呼ばない)、このお守りを持っていくと、絶対合格するで!中は絶対見んといてな!」

私「わかった!それじゃがんばってくるね。本当にありがとう!」

…そう言葉を交わすと、私は受験会場に向かった。
運悪く、受験当日に風邪をひいてしまった私は、鼻が詰まっていてその影響で耳があまり聞こえないためリスニング問題に支障をきたすは、
その上お腹を壊して、試験どころではない最悪のコンディションだった。

「これは落ちたな…。」と試験終了後うなだれ、試験会場を去ったの覚えている。

そして1ヵ月ほどして合格発表の日。

私は絶対落ちたと思っていたので、怖くて見に行けなかった。
臆病者の私に代わって母が見に行ってくれた。

「おめでとう合格してたよ!」…母から連絡がくる。
「え、本当に!」なんだか実感が湧かないまま、入学手続きなどを済ませ家路に着く。

妹がどうだったと駆けつけてくる。「合格してたやろ?おめでとう。」
私「ほんまにありがとう。あのお守りのおかげやわ。」

すると、妹は誇らしげな顔をして、「お守り開けてみて。」と私に伝えた。
早速開けてみると中には小学校6年生の妹にとっては大金である、
大切に貯金していたしなびた1000円札と
「のぞみ、合格おめでとう!」と大きな文字で書かれた手紙が入っていて嬉しくて泣いた。

妹「絶対受かると思ってたから。」
私…「(涙目)ありがとう。」

私はとても粋な、可愛い妹を持ったものだ。

妹がプレゼントしてくれた大切な1000円札ではじめに買ったもののことを今でも鮮明に覚えている。
念願の合格した高校の購買部で初めてバニラアイスを買った。
妹のことを思うと涙腺が緩む。
バニラアイスはちょっとしょっぱい涙と青春の味がした。

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