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hoshikuzu
2024年9月13日 02:02
見舞いの言葉というのは、本当のところ、存在しないのかもしれない。思わぬ病、災害、事故、そんなものに巻き込まれたときに、自分ならどんな言葉を望むだろう。そもそも、苦境にある人に、励みにこそなれ、負担をかけず、気を回させず、それでいて気の利いたひと言をかけるというのは、相当の経験値が必要なのではないか。正直、見舞いの言葉など要らないのでは、という気すらしてくる。大丈夫なのか、大丈夫ではないのか
2024年5月24日 02:12
バチン、と音がしたと同時に、指先にちいさな衝撃が走る。砂糖の袋を閉じようと捻っていた輪ゴムが切れた。あぁ、切れたか。そんな時、決まってぼんやり浮かぶ人がいる。彼は輪ゴムを持っていなかった。買い置きがなくなったとかではない。彼の家には輪ゴムがなかった。「輪ゴムは劣化するから。」劣化したものを直すことを生業としている人だったから、自然な感覚だろう。では彼は輪ゴムの代わりに何を使っ
2024年3月12日 02:19
光陰矢のごとしとはよく言ったもので。10年という桁の時間が過ぎていたことを、これほど意識していなかったことに驚いた。ほんの一、二年ご無沙汰しているくらいの感覚だったのだ。加えてこんなご時世。ディスプレイには懐かしい顔がつい数日前にも映し出され、その人の今が手に取るようにわかる。そのくせ、彼らといざ面と向かって再会すると、奇妙な心持ちになる。それはまるで、浦島太郎のあの玉手箱のように、