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訳わからん、こともある

「訳わかんね」

そう、訳わからんのも当然だ。
僕だってあなたのこと、訳わかってないから。

お互い、訳わからんのはしょうがないんだ。



実家の車庫にアリジゴクの巣があった。
すり鉢状に整えられた巣が隅の方にちょこん、と。
子ども心には、不思議な光景としか映らない。


どうやって作ったんだろうか。
アリジゴクってどんな姿なんだろうか。
本当にアリが落っこちるのだろうか。
この巣の下はどうなってるんだろうか。


きっと想像もつかないカラクリがあるんだろう。
きっと素敵な世界が広がっているんだろう。

しゃがみ込んでキラキラした世界へと思いを馳せた。
時間は現実世界に忠実に流れていく。

考えていてもどうにもならないと、はたと気づく。
ヒョロヒョロの枯れ枝を小さく折ってアリジゴクの巣をほじくり返した。
中心をゴリゴリと掘り進めても、そこには何もいなかった。

きっと強引すぎてどこかに逃げてしまったんだろう。
今度はもっと優しく…
(巣を壊している時点で優しさの欠片もないんだけど。)

そろりそろりと掘っていく。
すると中から黄土色をしたヘンテコなクワガタみたいなのが出てきた。
ツンツンと突っついてみても動かない。

…なんだ、これだけか。
妙に幻滅した。

きっと巣の奥には素敵な世界があって、アリジゴクによる豊かな生活が繰り広げられているんだろうな。

そんな淡い期待は、脆く細い枝によって砕かれた。




うめぼしたべたい僕は 今すぐ君に会いたい(うめぼし/スピッツ)


『うめぼしたべたい僕は 今すぐ君に会いたい…?』

思い出した時の甘酸っぱい感じ。
それはうめぼしを食べた時に似てるってこと?
個人的には、それが一番納得いく解釈かな。


「そういうことを考えるのって意味あるの?」

そう聞かれると意味があるかは分からない。
だけど、必要な人もいるんじゃないかな。



きっと、訳わからんことはたくさんある。
自分にとって重要だったことが、他の誰かにとっては訳わからんことだったり。

今、みんなが見てる自分は海に浮かんだ氷山のように、ちょこんと顔を出した一角に過ぎない。
そんな風に黄昏ている人もいると思う。

残りの大部分は水中でひっそりと『みんなの自分』を支えているかもしれない。
それとも「自分はそうじゃないんだ」ともやもやして、荒波を立てようと目論んでいるのかもしれない。

色々思うとこはあるはず。
それは、他人では計り知れないこともある。


(いつにも増して散文的になってしまった…)






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