美を追い求める心(映画「写真家ソール・ライター〜急がない人生で見つけた13のこと〜」を観て)
「写真家で誰が好きか?」
と問われたら、ソール・ライターさんの名前を挙げています。
ちょっとベタですが、数年前のBunkamuraミュージアムの企画展で、彼の繊細な色彩感覚に魅せられました。
今回はソール・ライターさんを取り上げたドキュメンタリー作品を紹介します。
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穏やかな写真家が、「穏やか」であろうとした理由
映画「写真家ソール・ライター〜急がない人生で見つけた13のこと〜」は、全編を通して、創作に携わる作家の穏やかな人格を目の当たりにするような作品でした。
「(自分自身のことを)映画にされる資格なんてない」と語るように、(特に)晩年のソール・ライターさんは、なるべく人目につかないような生き方を志向しています。
「本当の世界は隠れたものとつながっている」という発言から分かるように、華やかさから縁遠い世界を切り取るための処世術だったのかもしれません。家族やパートナー以外に特定のモデルを持たなかった彼の作品は、どこにでもある日常にまなざしを向けている。そこに必然のようなものがあったのかもしれません。
「なぜ」と問われても困る
「写真を少し知っていれば、新しいものなんてほとんどないことが分かる」と断言するソール・ライターさん。
彼は作品の中で「『なぜ〜〜したんですか?』という質問が嫌だ」と率直に話しています。インタビューする機会のある自分にとって、ハッとする回答です。
芸術は語るものではない。そもそも芸術を、100%正確に言葉に置き換えることはできないのではないか。
そんな前提も踏まえておかないと、ただの傲慢な鑑賞者になってしまうと感じました。
美意識=何を「美しい」と感じるか
ソール・ライターさんは映画の中で「美の追及」について以下のように言及しています。
ソール・ライターさんには、確固たる美意識が存在しています。一方で「美しい」と感じる心は人それぞれ、だと語っています。
芸術に携わる人間として、「何が美しいか」「それはなぜ美しいと感じられるのか」ということにはあまり関心を持っていないし、議論をするつもりもないようです。晩年まで、自分の作品を積極的に世に出さなかった謙虚な姿勢にも表れているのでしょう。
それはきっと、後世の人たちに、彼の美意識を託しているということでもあるように思います。「時間を経れば、本物の芸術は必ず評価される」という普遍は、きっとこれからも続いていくだろう、というような。
そんなソール・ライターさんの自信を感じる作品でした。写真や芸術を愛する人はぜひ観てもらえたらと思います。
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(Amazon Prime Videoでレンタルの上、視聴することができます)
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