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フランス革命前夜を「料理人」の視点で描く。(映画「デリシュ!」を観て)

「デリシュ!」
(監督: エリック・ベナール、2020年)

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フランス革命前夜に、宮廷料理人だった主人公が世界で初めてレストランをつくったという物語。

昨年9月に映画館で鑑賞したかったものの、機会を逸してしまい。Amazon Prime Videoレンタル配信で鑑賞した。

映画の半分くらいは、料理と食事と給仕のシーンだ。最初は宮廷料理を、中盤から終盤にかけてレストランの原型となる形で大衆料理が展開されていく。18世紀後半まで、ジャガイモを食べることは貴族にとってタブーだったというのも驚きだが、主人公のマンスロンが腕をふるってつくるジャガイモ料理は非常に美味しそうだった。

マンスロンが、助手のルイーズに料理の要諦について教示するシーン。目を瞑らせて、「音楽家が耳を大切にするように、料理人は味覚を信じるべきだ」と食材を味見させる。確かに僕らは食事をするとき、視覚に頼っているきらいがある。僕も食材の特性など気にせず、とりあえず塩や醤油、創味シャンタンなどをまぶせば良いかと考えている節があって。日頃、料理をする立場からも「気付き」を得た作品だった。(ちなみにこの後、主人公はルイーズに対して最低の行為をする。まじで興醒めでした)

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フランス革命といえば、ルイ16世と王妃のマリー・アントワネットがギロチンにかけられたことが頭に浮かぶ。

幼少期に僕は、『学研まんが世界の歴史』を読んで、フランス革命のことを学んだ。天真爛漫に王様として振る舞っていたルイ16世が、流されるままにギロチンにかけられるシーンは、子ども心ながら恐怖を覚えたものだ。

「パンがなければケーキを食べればいいじゃないか」と、困窮に喘いでいた民衆の反感を買った言葉がある。

まさに特権を有していた宮廷貴族の横柄な態度を象徴するものだが、『デリシュ!」でバンジャマン・ラベルネさんが演じていたシャンフォール公爵は、まさに横柄の極みのようなキャラクターだった。

フランス革命は、歴史家の中でも評価が分かれる出来事だ。おびただしい血が流れ、フランス革命が成立した後も、何名かの政治家による恐怖政治が続いた。フランス革命は王政から共和制にうつったタイミングで、現在も共和制国家を堅持しているフランスにとって大きなターニングポイントになったことは間違いないだろう。(だが、その後も何度も「負の歴史」が重ねられ、フランスとしての共和制は徐々にアップデートされていった)

ある意味で「デリシュ!」とは、そういった複雑な背景を極力排し、横柄な貴族に対立する庶民としての料理人という構図で作品がつくられている。

それはそれでユニークな視点かもしれないが、せっかくフランス革命前夜という時期を描くのならば、もうひとつ物語に厚みを設けても良いのではないかと正直感じた。

それはそれとして、エンターテイメントとしての歴史映画として少なくない価値はあるのだろう。ただ僕には、もうちょっと濃いめの味付けが良かったなということを添えて、本作の映画感想文としたい。

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ちなみに先日、ビストロを経営している方にお話を聞く機会がありました。フランスでレストランといえば「しっかりと食事をするお店」だそうで、映画で描かれているような庶民に開かれたお店=ビストロなのだとか。

時代も変われば、食事のあり方も変わります。機会があれば、「世界で初めてビストロをつくった」人の映画も観てみたいです。

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