見出し画像

奇跡と呼ぶのは簡単だけど。(映画「雪山の絆」を観て)

1972年に発生したウルグアイ空軍機571便遭難事故。何度も映画化されているモチーフだが、事故から50年が経過したタイミングで新作が登場した。製作はネットフリックス。

「雪山の絆」
(監督:J・A・バヨナ、2023年)

──

大学のラグビー部が、チリ遠征に向かうために準備されたチャーター機。しかしアンデス山脈を通過する中、悪天候とミスによって乗員5名を含む計45名を巻き込んだ飛行機事故が発生してしまう。

幸いなことに生存者が残ったものの、極寒の高山&雪山での72日間のサバイバルを強いられてしまう。じわじわ押し寄せる空腹に耐えきれず、すでに遺体となった犠牲者の「肉」を食べるなど、状況は過酷そのもの。それでも16名が生還を果たしたことで、この事件は「アンデスの奇跡」と呼ばれ、現在に至るまで語り継がれている。

*

昨年上映された「サバイブ 極限死闘」。

この作品では、生存できた男女ふたりが救助を求めて下山を試みる。その過程で様々な困難にぶち当たるわけだが、「雪山の絆」ではその場に留まり救助を待つという選択をする。事情が異なるのは承知の上だが、極寒で現在地さえ分からない中で、あえて機体から離れるのは確かに無謀で、彼らの選択こそリアル(妥当)と思わなくもない。

そういったサバイバルという文脈で、エンタメ作品として楽しむこともできるが「雪山の絆」で特筆すべきは神への信仰が描かれていることだろう。

ラグビー部のメンバーが在籍していた大学は、カトリック系。事故直後から神に祈りを捧いできたが、無常なことに救出の部隊は訪れない。カトリックの教えに反し、人肉を貪る彼らだが、常に罪悪感と対峙していた。

鑑賞直後に読んだ、こちらのnoteの解釈が腑に落ちる。僕自身も、「友のために命をささげるほど偉大な愛はない」という言葉にはグッときた。

*

なぜ、そこまでして生きようと思うのか。

家族への愛や、神への信仰、そして生きることを諦めたくない者たちの壮絶な闘いの記録から、生物の根源的な渇望を垣間見ることができる。

僕はたまたま上映されている映画館で、本作を鑑賞することができた。暖房が効いている場所だったのに、凍えるような寒さが伝わってくる。撮影も大変な困難を伴っただろう。

演出陣の気合いを感じるだけで、すでに一見の価値があると僕は断言したい。

──

主演とナレーションを務めていた若手俳優のエンゾ・ヴォグリンシクさん。

時間の経過とともに、表情がどんどん険しくなり、怪我した辺りからはじわじわと衰弱していく様子が印象に残りました。本人の演技力はもちろん、プロダクションデザインやメイクアップなど、スタッフとキャストが一丸となって「良い作品をつくろう」と努力した結果だと思います。

「ナショナル ジオグラフィック」の本記事も、事故後の過酷な72日間について克明に記しています。「こんな事件があったのか」と、事故当時の様子に思いを馳せてみてください。

#映画
#映画レビュー
#映画感想文
#ウルグアイ空軍機571便遭難事故
#実話
#雪山の絆
#J・A・バヨナ (監督・脚本)
#パブロ・ビエルチ (原作)
#ベルナ・ビラプラーナ #ハイメ・マルケス・オレアラガ #ニコラス・カサリエゴ (脚本)
#ペドロ・ルケ・ブリオッツォ (撮影)
#アライン・バイネ (美術)
#マイケル・ジアッキノ (音楽)
#エンゾ・ヴォグリンシク
#アグスティン・パルデッラ
#マティアス・レカルト
#エステバン・ビリャルディ
#Netflix で観れます

この記事が参加している募集

#映画感想文

65,899件

記事をお読みいただき、ありがとうございます。 サポートいただくのも嬉しいですが、noteを感想付きでシェアいただけるのも感激してしまいます。