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#ローソンPBに思う で語られていないシンプルな視点

ローソンのプライベートブランド(以下「PB」といいます)が今春リニューアルされ、賛否両論の意見が交わされています。

ぼんやりとこの件について僕なりの解釈も持っていたのですが、今夜ハフポストさんの仕切りでローソン代表取締役の竹増さんが出演される番組があるようで。実際に「仕掛けた」側の意見を聴いてから、正しくデザインを見る / 理解しようと考えていました。

そんな中、番組に出演予定の最所あさみさんが中心になって(?)、#ローソンPBに思う というタグが広まっているのを目にしました。このタイミングで、かつ、デザインの素人である僕が口を挟むべきではないと思っていたのですが、ここで語られていない1つの視点(僕の違和感)があるのでnoteに記します。

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・あなたはローソンに行きましたか?
あなたはローソンで、実際のPB商品を見ましたか?
PB商品を購入する / 購入しそうなお客さんの行動を観察しましたか?
あなたはローソンのお客さんである、おじいさんやおばあさんに話を聴きましたか?あるいは論点で挙げられている視覚障害者や色覚障害者の感想をきましたか?
あなたは品出しをしているローソンの店員さんの話をきましたか?
あなたは商品を購入した人の話をきましたか?
あなたは商品を「間違って」購入した人の話をきましたか?
・上記に関して、何人くらいの話をきましたか?

ザッと書き出しましたが、最初の2つについてはローソンに足を運び、PBの棚に行けば誰でもできることです。程度の差こそあれ基本的にコンビニのレイアウトというのは各店統一ですから、ローソンにおけるPBの「立ち位置」の確認や、「視認性」が高い / 低いかは、実際に行くことで判別できると思います。

それくらい手軽な行為を省略してデザインを評価しているとしたら(SNSなどインターネット上で画像を見ただけで善し悪しを判別していたとしたら)、あまりにデザインに対するリスペクトがない。

(実際に僕がローソンに行って感じたことは、PBの視認性ではなく、PB以外の商品とのバランスです。PB商品の世界観とあまりに乖離があって、陳列されている状態はあまり美しくないなと思いました)

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僕は視力は低いですが、幸いなことに矯正器具であるコンタクトを装着することで普段の生活は支障なく過ごせています。いわゆる健常者という立場なので、あらゆることが健常者ファーストになっている世の中の偏りに気付くことができません。悲しいことに、利便性や合理性の名の下に、偏りに対して加担している側面があるわけです。

その前提に立っているからこそ、ダイバーシティが求められる世の中で「商品とはどうあるべきか」「デザインとはどうあるべきか」「会社とはどうあるべきか」を考え抜かなければならないし、更には「僕自身はどうあるべきか」を問い直すのは責務です。できる限りあらゆるケースを想定し、できることなら直接話を聴く。もちろん限界がありますから、いずれかのフェーズになったら想像力に頼るしかありません。正しく想像するのは大切です。

言わずもがなですが、ユニバーサルデザインを志向しながら、実際にディスアドバンテージを受けている人たちの声を聴かずに、ディスアドバンテージを受けている人たちの代弁者になろうとするのは正しい姿勢とは言えません

(またこういう話は「批判」ばかりが目につきますが、実際に購入した人が蔑ろにされるケースがあります。もしかしたらとても幸福な購買体験だったかもしれないし、家についてからPBの牛乳を手に取るたびウキウキしているかもしれない。あるいは既に生活に馴染んでしまったかもしれない。良い意味で)

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どうしても僕らは主観があるし、最初の第一印象を拭えずに物事を判断してしまう傾向があります。なのでいくら上記の声を集めたとしても、都合良く自分の解釈を補強してしまうことはあるでしょう。

とは言え、人間の英知を信じるのであれば、ファクトを集めることは意味があるはずです。短期的な解釈は変わらないかもしれないけれど、長期的な学びには繋がるかもしれない。普段の生活においてちょっとした行動変容があるかもしれない。「これちょっと気に入らないけど買ってみた」ら、新しい発見があるかもしれない。

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牧野圭太さんが書かれている通り「デザインが議論にあがること自体は悪いことではない」という点に僕も同意です。あなたという「n=1」の感覚はとても尊いし、その感性は大切にすべきです。そしてインターネットで自由に発言するのも素晴らしいことだと思います。

今回は #ローソンPBに思う というタグがつけられた記事を幾つか拝見し、またSNSなどで言及されている様々な事柄、ひいてはその「空気」について違和感を覚えたのでnoteに記しました。

Twitterやnoteなどで感想を直接いただけると嬉しいです。

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最後に読書ブログらしく笑、今回のPBを手掛けたnendoの佐藤オオキさんの著書から引用します。このプロジェクトに携わった全ての関係者の方々に賞賛の思いを込めながら。

しかしプロジェクトが進めば、当然ながら色々な人から多くの情報がもたらされるようになります。(中略)
実際、すでに世の中に出ているものはなかなか合理的にできているもの。バランスがよく、収まりがいいのです。「業界の事情」を汲み取れば、着地点が既存の商品に近づくのは自然なことともいえます。
しかし、「人の心に刺さる、どこかに引っかかりのあるデザイン」を生むためには、そのバランスを無視する必要があります。そこで重要なのが、子供のように何も知らない状態に自分を持っていくことです。よけいな情報をそぎ落とし、プロジェクトスタート時に気づいたことや考えたこと──つまり、プロジェクトの「核」になる部分──を大切にしなくてはなりません。
(佐藤オオキ『400のプロジェクトを同時に進める 佐藤オオキのスピード仕事術』P28より引用。太字は私)


6/9 9:28追記
noteでも「最終的にはどれくらい売れたかが成功、失敗の判断軸だ」と書かれているのを時々見掛けます。とても正論ですし、売上はとても大事な要素ですが、やや寂しい意見だなと思いました。

デザインは顧客とのコミュニケーションを図る方法の一つですが、同時にコミュニケーションを楽しめる数少ないテクニカルな方法の一つでもあります。「私のことを気に入っているなら商品を買ってね」という売上至上主義なメッセージだけが込められているわけではないはずです。デザイナーの皆さんが数多く指摘している通り、今だけでなく、未来を見つめたコミュニケーションであるべきだと思うし、このデザインリニューアルがそのきっかけとして機能してほしいと切に願います。

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