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19歳で池田晶子さんに出会っていたら、彼女の言葉に頷けていただろうか。

少し前に、池田晶子さんの『41歳からの哲学』を読んだ。

『14歳からの哲学』『14歳の君へ』などが有名な池田さんだが、こちらのエッセイ的な1冊も読み応えがあった。

この本が発売されたのは2004年だ。池田さんが亡くなったのは2007年のときなので、間もなく病魔に襲われたということになるのだろうか。本書でも身体の不調に言及する場面もあったが、一貫して「全く死ぬのは怖くない」と言い切っているのが印象的だった。

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PCも携帯電話も必要ない。

少子化だろうが、高齢化だろうが知ったことではない。

池田さんの言葉は表面的には過激だが、本質をつく。

リニアモーターカーができれば、東京大阪間が1時間で移動できるのも夢ではない、なんて誰の夢だというのだ」とは、鋭い指摘ではないだろうか。

だけど、この本が書かれた2004年、僕が19歳のときに池田さんの本を手に取ったら、素直に頷けていたのだろうか。まったくもって自信がない。それこそ夢のない「おばさん」だといって鼻で笑っていただろう。

笑われているのは自分だと気付きもせずに。

こういう盲点を、恥ずかしげもなく晒せるのが10代の特権なのかもしれないけれど、多少なりとも知識や知恵がついてきたときに、遅まきながら池田さんの至言に耳を傾けると、やはり10代の自分は赤面するほど浅はかな人間だったなあと気付く。

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池田さんの厳しくも優しい言葉は、今を生きる人たちにとっても支えになるはずだ。ただ生きるのではなく、善く生きる。

哲学を愛し、哲学に愛された池田さんが、次世代に託した希望の灯を、絶やさずに繋いでいきたい。

食えるか食えないか、すなわち生きるか死ぬかということは、人生の価値とは実は関係がないということがわかるのである。ただ生きているということと、善く生きているということは、まさしく違うことではないか。ただ生きている人にとって、生きていることが、どうして価値であることができるだろう。

池田晶子(2004)『41歳からの哲学』新潮社、P79より引用)

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*おまけ*

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