ググるな、感じろ。(映画「日日是好日」を観て)
映画のタイトルにつけられた「日日是好日」。
禅語で、にちにちこれこうにち、と読みます。「どんな意味だろう?」と思った気持ちをグッと堪えて、ぜひ前情報抜きにNetflixやAmazon Prime Videoで作品を観てもらえたらと。
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「星の子」とはかなり違う作品で、監督を務める大森立嗣さんの引き出しというか、得意分野の所在が良い意味で分からなくなるような作品でした。
恋愛も友情も親子関係も、瑣末なもののように扱う大胆さ。もちろん主人公・典子(演・黒木華さん)が20代から30代へと移行していく中で、それらの要素が少なからず影響しているんだけど、どれもほんの「ワンシーン」的な扱いで。父が亡くなった後、海辺で絶叫するシーンはどうかと思ったけれど、それ以外はちゃんと抑制して、茶道が真ん中にあるような厳かな雰囲気を保っている作品です。
茶道をはじめ、日本に古くから伝わっていく伝統芸能の数々。所作も仰々しくて取っ付きづらいのだけど、無駄だと思える全ての行為に何かしら意味がある。(「意味がない」という意味がある、というべきか)
物語はちゃんと前に展開するんだけど、本当に前に進んでいるのか分からなくなる。黒木華さんが少しずつ大人びていく以外は、コツコツと時計が周回するような感じなんです。四季は巡るだけで、前進もしないし後退もしない。茶道としては「上手く」なってはいるものの、典子が茶道に没頭している間だけは、時空が静止しているのかもしれない。成長とか成熟とか、社会の物差しに抗うような物語は、ある意味でアナーキーだといえなくもないような気がします。
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黒木華さんと樹木希林さんが出演しているなら「間違いない」のですが、そこにはどうしても、演出に関して抜きん出た筋の良さを感じてしまいます。
作中の黒木さん、樹木さんの関係性に引き摺られている感もありますが、黒木さんが樹木さんの俳優としての系譜を受け継いでいく予感もしました。もし40〜50年後、本作がリメイクされることがあれば、黒木さんが樹木さんの役を演じることになるかもしれません。
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ググるな、感じろ。
茶道を続けていると、考えなくても身体が所作を憶えていて、すんなりとことを進めることができるそうです。
余計なことを考える必要はありません。ただただ作品の持つオーガニックな流れに身を任せれば良い。毎日は、日日是好日なのだから。
(Netflix、Amazon Prime Videoで観ることができます)
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