小説から着想!夏を閉じ込めた黄金色の「たんぽぽのお酒」HOPPIN’GARAGE ビール第16弾・TAMAEさんの『Dandelion Beer』乾杯レポート
**この記事は、2020年2月に実施したイベントレポートの、note転載記事となります**
2018年10月に始まった『HOPPIN’ GARAGE』。
「こんなビール、あったらいいな」という熱い想いを持った人が、つくりたいビールをサイト上で応募して、HOPPIN’ GARAGE事務局の審査の上で選ばれた人がサッポロビールのブリュワー(醸造責任者)と一緒にオリジナルビールを製造するという、ビール好きにはたまらないプロジェクトです。
https://www.hoppin-garage.com/
「夏を閉じ込めた黄金色のお酒
口に含むと凝縮された思い出が色鮮やかに甦る…!
そんなビールを造りたいと思いました」
と語るのは、HOPP’N GARAGEオリジナルビール第16弾の「Dandelion Beer」を企画したTAMAEさん。SF作家のレイ・ブラッドベリ著『たんぽぽのお酒』からヒントを得たビールです。
小説から生まれたビールって?? 斜め上からの着想で生まれた「Dandelion Beer」。
それでは、お披露目イベントの様子をご案内します。
子どもの頃からの夢、「たんぽぽのお酒」
以前、とあるHOPP’N GARAGEオリジナルビールお披露目会に参加したTAMAEさんは、誰でもオリジナルビール企画に応募できることを知ります。そして、「私もオリジナルビールを作りたい!」と思ったときにふっと出てきたのが、レイ・ブラッドベリ著『たんぽぽのお酒』に登場するたんぽぽのお酒。「このお酒を本当に飲めたらいいな」と子どもの頃から願っていた夢が、今日、叶うのです。
それでは、「Dandelion Beer」の完成と、TAMAEさんの夢が叶ったことを祝し、みんなで乾杯!
夏をびんにつめた、黄金色の「Dandelion Beer」
TAMAEさんが「Dandelion Beer」でこだわったのは、黄金色と苦み。小説には「たんぽぽのお酒」は、何百ものたんぽぽの花を圧搾しきれいな雨水を加えて醸すお酒との説明があり、花のきれいな黄金色と苦みは、小説にとってもオリジナルビール醸造にとっても大事なポイントです。
黄金色は、花の色だけではありません。主人公ダグラス少年が子どもから大人へと成長する特別な夏の経験を象徴する色でもあります。夏の貴重な体験と弾けるパワーにあふれた様子、かけがえのない楽しさを表しているのです。
苦みは味だけではありません。人生の苦みも象徴しています。「ダグラス少年は、子どもながら人生の苦みを知っていたと思います」とTAMAEさんは読み解きます。
Dandelion Beer」を飲んだ感想を、TAMAEさんに聞いてみました。
TAMAEさん:『Dandelion Beer』はとても黄色がきれいで、思っていた通りの色になりました。味はたんぽぽらしい苦みを感じて、小説の中の少年をイメージしている味です。
と感激してるようす!
TAMAEさん:レイ・ブラッドベリは好きな作家で、なかでも『たんぽぽのお酒』は好きな作品です。中学生になる前に読んだときは夏を象徴する金色のビールをイメージしていたのですが、企画を機に読み返したら、たんぽぽのお酒は、実はビールではなくワインでした(笑)。この小説はダグラス少年の夏の体験を描いていて、作家ならではの独特な表現で想像力が掻き立てられます。『Dandelion Beer』は、夏を思い浮かべながら冬に飲みたいですね
たんぽぽの黄金色を楽しむ
たんぽぽというと春のイメージですが、小説では夏に咲く花として設定されています。たんぽぽの花の香りと人生の苦みをイメージした味、そして夏を表現する黄金色。この黄金色がとても美しい。会場のあちらこちらでビールを注いだグラスを照明に当てて黄金色を見ている姿が見えます。
参加者に感想を聞いてみました。
「たんぽぽの花はかわいいから軽い感じのビールかと思ったけれど、飲んでみたら苦みがあって野性味のある味ですね」
「きれいな色ですね。飲んですぐは苦みがありますが、最後にまろやかさや甘みを感じます。ピルスナーが苦手な人も飲めるのでは」
「ビールの黄色がノスタルジックで、セロファン用紙の色みたい。きれいです」
と、皆さんそれぞれ、「Dandelion Beer」を楽しんでいた模様。
たんぽぽのビールって? 初めての素材でドキドキの醸造
HOPPIN’GARAGEでは、今回、初めてお花がテーマになりました。ブリュワーの蛸井 潔さんは、「Dandelion Beer」をどう開発していったのでしょうか。
「打合せをする前に、使える素材があるかどうか調べてみました。たんぽぽを使った食品は、根を焦がしたたんぽぽコーヒーが多かったですね。根はハーブティーにも使われているのですが、花そのものを使った食品はありませんでした。
この透き通った黄色は、たんぽぽをイメージしています。色がちゃんと出るか心配で、もっと濃い黄色と薄めの黄色の2種類を用意しました。色は、実はたんぽぽではなく紅花からとっています。
たんぽぽの花の味を感じられるよう、花を使ったハーブティーに共通する味としてエルダーフラワーを使っています。材料は、たんぽぽの根、紅花、エルダーフラワーです。
HOPPIN’GARAGEのオリジナルビールは一発勝負で失敗が許されません。初めて使う素材ばかりだったので、色はどう出るのか、味はどうなるのか心配でした」
初めての素材だと、プレッシャーは相当なもののようですね。
そして、SF小説好きでもある蛸井さんのブリュアー以外の顔もちらほら。実は、蛸井さんは高校生の頃から『たんぽぽのお酒』を知っていたそうです。
「『たんぽぽのお酒』は、SF小説の大家であるレイ・ブラッドベリらしい話です。ビールはSF小説の素材にはならないと思っていましたが、こんな形で実現できるなんてうれしいです」と目を細めます。
ちょっと変わったものが入っている”木曜特別料理”
『たんぽぽのお酒』に出てくる木曜特別料理。主人公のおばあちゃんが作ったという料理で、ちょっと変わったものが入っていておいしいという記述があるのみ。がじゅま~るのお二人が、イメージをふくらませて今回ならではの”ちょっと変わったもの”を使って、作ってくださいました。
*フリカッセ
フランスの料理でチキンのホワイトクリーム煮。ホワイトクリームに白味噌を入れて、こくを出しました。
*ラグー
フランスの料理で肉の煮込み。今回は、ラム肉を使ってブルスケッタに。
*サルマグンディ
イギリスの料理で海賊が食べていたそうで、サラダの発祥と言われる料理です。基本のサルマグンディはドレッシングは白ワインビネガーと塩、コショウですが、今回は塩こうじを使いました。
*杏入りミートローフ
ミートローフはアメリカの家庭料理ですが、南アフリカでは杏を使っています。今回は、お肉の中に杏を入れ、ソースにも杏ジャムを使いました。
*レリッシュ
キュウリのピクルスをみじん切りに。こちらはTAMAEさんのリクエスト。さっぱり味のピクルスは、お口直しにぴったりです。
*オールドファッション=ライムバニラアイス
昔からのバニラアイスのレシピにライムを入れました。バニラアイスのこっくりと、ライムのさっぱりが合わさって食後のデザートにピッタリなバニラアイスになりました。
*一口コットンキャンディ
たんぽぽをイメージして、たんぽぽ色のコットンキャンディにしてみました。
カラフルに素材を使っていて、どんな味なのかワクワクしながらいただきました。「Dandelion Beer」に合う味わいでフォークが進みます。TAMAEさんは、「盛り付けがきれいで、小説の中にある料理がそのまま出てきてびっくりしました」とほほをゆるめます。
古い本をイメージしたラベルデザイン
今回のラベルデザインを担当した黒田さんが、デザインのポイントを話してくださいました。
「初めに話をいただいたときに、イメージしたたんぽぽを描いたのが出発点です。小説が出版されたのが1957年なので、古い小説の世界を取り入れて表現しました。
例えば、更紙みたいな質感を出して小説が古くなった様子を出してみたり、タイポグラフィーを写植したようなフォントにしてみたりしました。
本を読んでみると意外と残酷で、主人公が死に直面する場面があります。その情景を苦みや切なさととらえ、発色をぼやっとさせたり影を感じるようにしました」
TAMAEさんは「小説をイメージしたラベルデザインをリクエストいたしました。最初に黒田さんが描いたたんぽぽのイラストは、イメージ通りでしたね。小説の言葉をラベルに入れてもらっています」と、小説の世界がビールのラベルデザインにもしっかり表現されていることに満足な様子。
ピンクは愛 好きなカラーで性格が分かる!?
そして今回用意されたスペシャルコンテンツ、カラー診断!
カラーコーディネーターの資格を持ちカラーの講師としても活躍するTAMAEさんがカラー診断を行います。
会場に着いたときに好きな色のカードを選んだ参加者は、同じ色ごとにグループを作っていきました。同じ色を選んだだけあって、なんとなく雰囲気が似ていると感じるのは筆者だけでしょうか。
TAMAEさんの診断を聞いてみると、ピンクは愛をイメージしているとのこと。女性らしさを感じる色です。
色の解釈は国や文化で異なるとのこと。自分や相手を知るきっかけとして使ってみたいですね。
ちなみに、TAMAEさんはブルー系の色が好きだそうです。今回のイベントで黄色も好きになっていったそうです。黄金色が弾けるパワーを与え、かけがえのない楽しさを感じさせてくれたのかもしれませんね。
友人に作ってもらったというタンポポのイヤリングを身に着けたTAMAEさん。「今日は、『Dandelion Beer』を飲んでいただき、ありがとうございました。夢のようで、自分が考えたビールができるなんて、すばらしい企画だなと思いました」と、HOPPIN’GARAGEオリジナルビールで自分の夢が叶ったうれしさを話してくださいました。
ビールを通じて夢がかなったTAMAEさん。気になった方は、ぜひ応募してみませんか?