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春霖が穴をくだってゆく

春の長雨を「春霖(しゅんりん)」と呼ぶ

関東が強風続きの日
広島は雨が降りしきった

特に理由がないのだが、春霖になると
無性に聴きたい曲があり
透明な線が降りてくるのを、冬との別れに感じる

季節の変わり目は、雨がカーテンをひく

心胆へは敏感に重さを得てゆく
寂しさや悲しさが重力になる
これといった憂鬱がないのに
表と裏のあいだには、底が見えない穴が開いて

埋めようとせず、春霖が穴を降ってゆく