ショート: 勝手すぎるふたり
「ちょっと待って!話を整理するよ?
推しがインド行くからときめきビザ持って出たけど肝心のパスポートがないから持ってこい?」
一気に捲し立てた。
「そう、話が早いね」
「インドへ行くのも聞いてないし、
今から成田に行けってか」
うちの嫁が勝手すぎる。
推し活するのは自由だよ、自由。
だけど、こっちも都合がある。
一時が万事、そんな感じ。
いや、結婚してから「こんなヤツだったのか」
行動力があるのは凄いと思っていたよ、だがな?
こんなのをうちの親や友達に話せば、
「離婚しな」って言われるのが目に見えている。
嫁が家に居ないと楽っちゃラクなんだよなぁ。
スマホを切って、ソファにもたれる。
無造作に右手を伸ばしてTシャツを手に取り、まだ温もりが残る着古したものへ袖を通す。
「奥さんから?
今日は一緒に居れるって言ったじゃない。
あなたって勝手すぎる。
私を彼女にするのは自由だけど、
私にも都合があるの」