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短編: 恋愛体質の母を捨てる

 ホームルームで配られた用紙は、文理選択を問うもので、担任は
「大学受験に関係するから、お家の人にも相談しなさい」と言う。
 しかし相談できる人がいない私は、一人で決めなければならない。
 四つ折りにした紙をクリアファイルに詰め込み、ため息が漏れた。

 うちは母子家庭。母は一人で私を育てているが、恋愛体質で、私のことは必要な時にしか寄ってこない。

 いつも彼氏の話ばかりで、ブログでは子育てについて偉そうに語っているが、実際は、彼氏中心の生活。理想は誰にでも語れる。

 母のSNSには恋愛ポエムと私への愚痴が並び
「娘は言うことを聞かないから可愛くない」と書かれているのを見て、心が冷えた。

 下校途中、スマホが鳴った。
「友理、学校は終わった?今からママとお茶しない?」
彼氏とケンカしたのだろうか。

 こうして私にすり寄るときは決まって彼氏の愚痴をこぼす。そんな男なら別れたらいいのに、母は身体が空くのは寂しいのだろう。

 苛立ちが湧いてくる。
「行かない」返信を打つ手が止まる。

「ママ、寂しい」
母は自分のことだけ。でも私が一緒にいると母の孤独は和らいでいるかもしれない。
「了解」と送信した。

 カフェに着くと母はすでに席へついており、
私を見ると笑みを浮かべたが、その裏には疲れた様子が見え隠れする。

「今日はどうだった?」珍しく母が尋ねる。
私は素直に学校のことを話す。
 すると母の目が輝き
「友理はすごいね」
私の話へ耳を傾ける母の姿に戸惑った。

 その後、母は彼氏の愚痴をこぼし始めたが、私は母の話を聞きながら自分の気持ちを整理できた。

 帰り道は、母の目に私への期待が宿っているように思えて、悪い予感が胸を掠める。
 志望の選択を考えると未来はどちらに進むのか。母との会話を通じ、自分の気持ちが少しずつ固まってきた。

 帰宅し、クリアファイルから用紙を取り出す。
私たちの関係が変わると、未来も変わるのかもしれない。

(792字)