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hidemaro2005
ショート:愛してるのタイミング
文芸部出身だからか、妙なタイミングで
「愛してる？」
結衣は僕に問いかける。
付き合い始めは
「信じてないわけ？」
僕が突っかかったばかりに痴話喧嘩へなり
結衣がやたらと不機嫌で困った。
映画館でチケットを買う前、カフェの行列
「愛してる？」
結衣からの投げかけには、真剣な眼差しを作り
「愛してる」
結衣の表情は柔和に変化し、言動が寛容になるのを、結衣の不安から脱却させるための魔法の言葉として、多少の僕が犯すミスを誤魔化せるようになった。
僕の心へ余裕がないときも、「愛してる」だけに集中すれば、お安いものだと思う。
逆に「今、それ聞きますか」
言い放ち、禍根を拡げるより僕自身のためにある。
僕の価値は、「愛してる」のタイミングで
左右されているとしても過言ではない。
つまり、今、
政治記者である結衣が出した不倫の暴露本は
僕が結衣への「愛してる」をしくじり、
結果、僕の政治家生命が迷走する、
最悪の事態を招いた、ということさ。