ショート: 夢のあとさき
舞うイチゴの葉を、呆然と見るだけ。
茎から千切れた葉は、白く丸く乾燥して、
出かける前の原色に近い緑色が、そこにはない。
あるのは、バレーボール大の
既に熟れたイチゴが鎮座している。
現実が現実離れをし、これをSNSに投稿しても
「加工でしょ」意地悪な声は癪に障る。
現実は小説より奇なりというが、
忘れられた言葉なのかもしれない。
両手に抱えたイチゴを割ってみる。
中から子どもが出てきたら、桃太郎?
いや、イチゴ太郎だろう。
イチゴの種まで大きく、これを蒔いたら
来年もまた、こんなイチゴが食べられる。
イチゴが好きな、自分の夢を叶えた今日。
「この種、あの子に贈ったら喜ぶかな」
いつも明治神宮から、猛ダッシュで降りてくる
傘をささない、コンビニバイトの子に渡したら、
あの子は笑って受け取ってくれるだろうか。
種を乾燥させて、あの子に渡そう。
🍓小牧さん、ありがとうございます🍓