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アンデルセンが書いた童話
『人魚姫』
令和が舞台ならどうなるのか
興味があって、書き換えてみた

閲覧注意だ。始まり 始まり〜


地方の海沿いで育った私は、
進学を理由に上京した。
目的は動画で観た、ホストのスバルに会うために。

ホストに行くにはお金がかかり、こんな垢抜けない女子が入れる場所ではない。

スバルの店の前を何度も通った。

通りすがりの私と目が合い、スバルはほほ笑む。
小首を傾げ、僅かだが手を振ってくれた優しさに私はスバルへのめり込んで行った。

「亜由ちゃん、変わったね」
美容院やジムへ行くようになると、周りの友達が
褒めてくれる。
「そのネイル、かわいい」

しかし出費は嵩み、とてもホストクラブで遊べるだけのお金はない。
バイトを掛け持ちするも、化粧品だけでも高価なものだ。

「マル横にいれば、お金になるかもしれない」
女子高生に見える女子の隣へ私は立つ。

スマホを触っていると肩を叩かれ、ビクッとする
「亜由?なにやってんの?」

同じ大学の子だ。
「もしかしてパパ活する気?」
何も答えられず、黙っていると
「悪いこと言わないから、やめなよ。
うちの大学は割と大企業に就職できるけど、
亜由が就活するとき、会社の人事にバレたら、内定を取り消されるかもしれないんだよ。いいの?」

スバルに会いたい一心の私は
「学費が、親が病気になって学費がね、払えないんだ」嘘をついた。
「奨学金は借りられないの?」
なんだかウザったい。

「私のことは放っておいてくれないかな」
声を荒らげると友人は
「ごめん」私から目を逸らし、去って行った。



パパ活も1ヶ月すると胸のモヤモヤが晴れていく。
これだけ稼いだんだから……。

初めて行くホストクラブへスバルは居た。
低い椅子へ跨り、接客している。

魅力的なスバル。彼のカリスマ性に惹かれ、私はもっと夢中になる。だがスバルは多忙で私の気持ちに応える余裕がない。

私はスバルに振り向いてもらうため、自分を変えようと努力し、髪型や服装を変え、スバルの好みに合わせようしたのに、次第に自分を失っていく。

スバルとの関係を深めたい一心で突き進む。

朝が起きられない。
久しぶりに大学へ出ても、みんなが何の勉強をしているのか分からない。
まだ教養過程だと思っていた私は、ホワイトボードに書かれた数式が全然理解できずに座っていた。

「単位、計算してんの?」小声で同級生から聞かれたが、「まあね」嘯いた。

学食でおにぎりを齧っていると
「聞いたよ?アンタ、ホストに行くためパパ活してるんだって?
噂じゃ、ヤバいビデオにも出てるらしいじゃん」
どうしてそんなことを知っているの?

でもどうでもいい。
目いっぱいのオシャレをしてホストへ行ってみるが
スバルは卒のない対応と、私の耳元で
「どっかで観たことがあるんだけど、気のせい?」

シャンパンタワーが見たいなぁなど、
私に対して愛情を持っていないことに気づく。

私はスバルが好きなのに、
羽振の良いキツネ顔の女とスバルが、
VIP roomから出てくることはなかった。



錆びた非常階段を昇る。
オーマビル。ここが有名な名所か……。

どこからかネコの鳴き声に似た甘い声や
甲高いカモメが鳴くような声もする。
ホストと女がこんな場所で愛を交わすのか。

手のひらぐらいのショルダーバッグと靴を踊場へ揃えると、目を瞑り私の身体は風を切った。