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桜の下で、教授を偲ぶ

先週の金曜日。3月31日
母を通院へ送る中、車内では
“Merry Christmas, Mr. Lawrence”をかけていた
わたしにとって、桜と一番よく似合う

母へ告げると、クリスマスの曲なのだから
静謐に積もる雪の様子だと譲らなかった
母の意見はそうだとして

わたしは芸術に疎い
申し訳ないほどに知識が乏しく、会話もままならず
人様の蘊蓄に耳を傾けるが
よく判ってない

桜を美化しているわけではないが
“Merry Christmas, Mr. Lawrence”は
開花から花びらがこぼれ落ちるまでが
わたしの感覚に似ていて
テストがあれば、大きなバツ印がつくだろう

そんな出来事があってからの、教授の訃報は
涙さえ出ないまま、動画を再生している

思えば小学4年生の頃、友達が
お母様のアルバムを録音したカセットテープを
「凄く良かったから、あげる」
プレゼントしてくれたのが嬉しかった

新譜のアルバムではなかったが、大人になった気分

カセットテープには
『未来派野郎』と手書きのタイトルが貼ってあり
収録された“Ballet Mécanique”は、何度も再生し
マセた子どもだった、と振り返る

昼間に見た桜は、まだ葉もついてない
新鮮な花びらが見る者へ手を振っている

今日のわたしは、スマホで
“Merry Christmas, Mr. Lawrence”を聴きながら
桜の下で、教授を偲ぶと決めている