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ショート: しゃべらなくていいよ

「銀河売りに出されるってさ」
「月面の次は、銀河なんだ」
大雨の日曜日。瑛二はパソコンを、私はスマホを
目的がなく見続ける。
イチャイチャする時期は、もう過ぎた。

「優花、銀河を買おうよ」
「買って、どうすんの?」
地学に興味のない瑛二が何を言い出すのやら。
「ずっとさ、俺らが夜空を眺めるとか良くね?」

「ずっと?」「ずっと」
瑛二のセリフに私はガッカリした。

「『ずっと』は、もしかしてプロポーズじゃん?
もっと綺麗な景色を見ながら『結婚してください』とか、薔薇の花束と婚約指輪を差し出すとか…
えー? こんなプロポーズ…」

「あっ、いや、ごめん。
でもね、銀河が売りに出されなくても、
優花のお骨と俺の骨を混ぜて、
ロケットで飛ばしてもらおうと考えていたんだ」

今度は、死んだときの話ですか…。飛躍してる。
もう、しゃべらなくていいよ。
ソファの隣にいる瑛二へ向き、
私の胸へ瑛二の顔を埋めた。

(瑛二の気持ちは分かったから…)

将来、二人で天の川に佇むのもいいかもしれない。

#シロクマ文芸部
#小牧幸助さん