ショート: 作品を世に送り出す
また読書か…。
政樹はベッドを背にして、
「おはよ」口元や目線は本に向いている。
政樹の脳内では、感性が育っており、
自身の内に拡がる世界を、映像化する日を
待っている。
政樹は一見、どこにでもいる男性で、
体内には神秘を生み出し、
政樹が生きていく為に必要な気力を生産している。
一方、私は、自分で何かを生み出す
内なる力を持っていない。
私だけでは、創造も啓蒙もできなく、
自力で作品が完結しない気がする。
だから、私は政樹を狙い捕食していく。
本当は、政樹ひとりで他人の力を使わずとも、
アイデアの燈を灯し続けられるのに…。
草原で佇む草食動物をじっと見つめる、
私はライオン。
瞳を潤ませ、そっと近づく。
「政樹、好きだよ」
草食系男子に教えられたことは、
こうやって互いを補填し合い、私は養分を活かして
新しい作品を世に送り出す。
政樹の才能や消極性は、行動力のある私が、
『クリエイター』として、体現していく。