見出し画像

短編: ひとすくいした嘘の中

朧月
きみの溶かした
あやまちは
こんなに綺麗
こんなに醜い

https://note.com/rira_ikeda/n/nebdcddfdd916

上京する機内で、卒業文集を開く。
文集の最後のページは、
クラスメイトからの寄せ書きが添えられ、
きみは私へ達筆な字でメッセージをくれた。

クラスの子はそれぞれに
「卒業しても仲良くしてね」「頑張って」

きみだけは
「ごめん」

https://note.com/rira_ikeda/n/nebdcddfdd916

朧月
ひとすくいした
嘘の中
まぎれこまれた
たったひとつの

期待しながら手元に届いた卒業文集を開いた
ホームルーム。
きみからの「ごめん」に
「何かあったの?」友達はざわついて、
咄嗟に出たセリフは
「私は覚えてないけど?」

きみに振られたことを忘れたかった。
今もきみが好きで、歯がゆい。

朧月
もういいよって
夜の声
ほしいものは
春に置いてく

きみと塾は一緒に帰ったり、デートしたり、
花火大会は人に隠れてキスをした。

高校3年になったばかりの春。

「今日で付き合って1年目だね」私が告げると
「俺ら、付き合ってないじゃん」
どういうこと? 問い正したかったが
でも笑顔で
「冗談に決まってるじゃん」

ははは……笑い顔の先には月が見えた。
「お前、冗談は顔だけにしろよ」
人間不信になりそうな言葉まで私は背負い、
鼻の奥がツンとする。
「もういいよ」

https://note.com/rira_ikeda/n/nebdcddfdd916

機内からの月は並行に見えて、
卒業文集を閉じて、膝の上に置く。
ほしいものはあの春に置いてく、戻らない春へ。

⭐️*:.。. riraさん.。.:*⭐️

riraさん、作品をお借りして
タイトルはriraさんの作品を用いました。
ありがとうございます🎶
長い間、いつも親切にしていただいて
本当に本当にありがとうございます🎵

#riraさん
#シロクマ文芸部
#小牧幸助さん