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Photo by
hidemaro2005
逃げる夢特有の、足が沼地に取られるような
前に進みにくいもどかしさ
右手に握るスマホは、何度も操作して
でも、誰にも繋がらない
逃げる夢を見ると、決まって登場するのは
古民家の小さな住宅で
玄関の引き戸を閉めると消音されて
ガラスがひしめくものを遮断した
ひしめくものは、やがて虹に変わって夕陽になる
黒に近い濁流から逃れたときに見た夢
引き戸の向こうは、トパーズのような透明な青と
気泡が、古民家ごと飲み込んだ
逃げ込んで見えた向こう側は
わたしを追いかけてきたものと違い
透けるような色と光になっていた
わたしが逃げ込む古民家は、どこの家か
レンガ張りの三和土は2畳ほど
左手には大きな水槽があり、30センチ大の金魚
靴を脱いだ先には、天井から床まで
百科事典が並び、柱時計の振り子が生きている
そう、いつもこの家で
木枠の引き戸を閉めて、難から救われた
逃げる夢
古民家へ帰るための手段が目的化した
夢は何を啓示しているのか、最早分からない