見出し画像

まだ3歳にも満たない子ども


©️石垣りん


幼稚園に入る前
実家では石油ストーブが重宝されていた

ストーブから餅や芋を焼く香ばしい匂いが漂い
大人たちはスルメを炙って暖をとっていた

暖かさだけでなく
家族の団欒を感じる道具だった

元旦、私はバランスを崩し
顔面から石油ストーブに突っ込んでしまった

顔の右側は、涙袋から鼻、耳元にかけて大きなヤケドを負い、顔の半分がズル剥けの状態

アイスノンを押しつけられた時の冷たさと
痛みが混じった記憶は今でもある

近所に住む叔母が看護師だったので
母に抱えられて叔母の家で処置を受けた

顔は黄色の油紙で包まれ、包帯でぐるぐる巻きへ

子ども心に「何かが終わった」と感じ
「もう外で遊べない」「お出かけにも行けない」
お友達から露骨に距離を置かれた気がした
そりゃまあ、わたしは化け物だ

大きなヤケドは小学生の間に綺麗になった

成人し、右頬に変わった色のホクロができた
テレビでそれが皮膚がんの疑いがある異物だと知り、念のため皮膚科へ行くと切除が決まった

その結果、右頬には刀傷のようなケロイドが残る

傷を見て、女性たちが笑うのを何度も経験し
笑われ揶揄されるたびに
「人は見た目なんだ」と痛感した

冒頭の詩は、わたしが中学3年の模試で
非常に感銘を受けた作品だ

わたしの顔面が熟し柿のようになり
刀傷を見て、他者がバイアスをかけ
人の痛みなどを無視して
好き勝手な悪い物語を作り排除する

わたしの「表札」は自分でかけよう
アイデンティティを守ろう

愛や内面の美だって信じてないもの

まだ片言しか話せない年齢で
当時を鮮明に憶えている
これらを叩き込まれて良い経験したわ