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「粋」という風情が

深夜の月は、ひときわ大きく見えた
「月が綺麗だな…」

月が綺麗から想起するのが
夏目漱石の逸話がある「月が綺麗ですね」
こちらへの返しは
二葉亭四迷が直訳した「死んでもいいわ」だという

「死んでもいいわ」を更に奥ゆかしくしたのが
「私はあなたのものよ」なんだとか
わたしも深夜に知ったばかり

自然や四季、事情になぞらえ
粋な言葉をもらったとき
趣味とは言え、文章を書いているなら
趣のある返事がしたい

来世に期待しよう、来世があるなら

「月が綺麗ですね」
「死んでもいいわ」が言える人を粋いうのかな

粋な人といえば
お蕎麦を音を立て勢いよく食する人や
姿勢正しく、江戸の人や堂々とした人などをいう

わたしが想像する粋な人は
周りの空気を読み
心を思いやりながら、大胆に手を差し伸べる

押しつけがましさがなく、さっぱりとした様子で
プラス、色気を基盤としたもの

仕草や言葉に惹き付けられるような
魅力が感じられる、他人に気を遣わせない
心配りができる、そういう人と言いそうな

「月が綺麗ですね」に「死んでもいいわ」と
返せなくても、怒らない人など

人の心を縛ることのない自由な有り様が
「粋」ともいうのかもしれない

月を見て、そのセリフが言える人は希少で
気づく人も希少なので
もう「粋」という風情が
お蕎麦やお寿司の食べ方や着付けを指し
人と人との心の交換は
絶滅危惧種みたいなものかもしれない

「好きだよ」「愛してるよ」だけじゃ…
贅沢な注文だね