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すぐに燃焼する情しかない

所謂、大企業に勤務していたら
事実は小説よりも奇なりを目の当たりにする

愛と情はワンセットだなと学んだのもそう
わたしは狡いので、他者が踏んだ地雷で学習する
素知らぬ顔をして自分に刻む

フレックス制度が導入されたとき
17時半は全員、休憩時間が取れた
わたしは総務にいた親友と備品室で落ち合い
業務の進捗度や予定について話していた

総務は情報の宝庫かと思うほど
プライベートなことまで、よく知っていた
誰と誰が不倫して、誰と誰がセフレまで耳にした

背徳感は快感に繋がり、盲目となるのか
本人達だけがバレてないと思っていたようで
プロジェクト会議が開かれると心浮立つ自分がいた
「誰と誰」をしっかり観察するために

結果的に「誰と誰」は上手くいかない
少しの情があれば繋がっていたのかもしれないが
側から見ると、片方のご都合主義で切られる

わたしと親友が「姐さん」と慕う先輩も
不倫が破綻し、居辛くなり退職した
独身で献身的に尽くしていたように見えたのが
わたし達には哀れに感じた

破綻の原因は姐さんの相手
秦野さんが姐さんと同じ部署の新人に
さっと乗り換えた
休憩室で煙草を吸う秦野さんは既婚者でありながら
わたし達の前で、その子に電話で約束していた

のちに、秦野さんの部下である、わたしの同期が
自死した日も、通夜までケロッとした顔をし
ヤフオクの話でバカ笑いしたのが忘れられない

葬儀の翌日の会話は聞くに堪えられなかった

先輩のノリちゃんにわたしは秦野さんの苦言を吐く

ノリちゃんは
「秦野は、すぐに燃焼する情しかない
性格上のことで、俺らには理解できない
秦野の幼少期の育成状態が問題で
秦野自身は悪くないよ」何か知っているようだった

もうすぐ他界した同期の誕生日が来る
愛を知らないと
情も希薄なんだと痛感した出来事だった