宮藤官九郎の「季節のない街」〜仮設住宅に生きるエネルギー
ディズニー+で配信中のドラマ、「季節のない街」。監督・脚本を務めるのは宮藤官九郎である。再放送中の「あまちゃん」、Netflixの「離婚しようよ」、そして本作とクドカンのドラマばかり観ている。
配信前に発売された週刊文春、クドカンは連載の「いま なんつった?」で、番組の宣伝告知として、<黒澤明監督の『どですかでん』のリメイクで、電車バカの六ちゃんを濱田岳くんが演じてます>と書いていた。
あっ、そういうことか。私は今年に入って、三谷昇の逝去のニュースに導かれて、未見だった「どですかでん」を観ていた。その映画の中でも、頭師佳孝演じる六ちゃんは、印象に残る存在だった。その原作が、山本周五郎の小説「季節のない季節」。クドカンはこれをそのままドラマのタイトルにしている。
第1話は、黒澤オマージュという感じで、六ちゃんの造形も黒澤流を踏襲、映画では母親役を菅井きんが演じ、ロクちゃんとともに、太鼓を叩きながらお題目を唱えるシーンがあるが、これもそのまま濱田岳・母親をアンべちゃん、じゃなかった片桐はいりで再現している。
8月29日の朝日新聞に、本ドラマに関する、“宮藤官九郎X池松壮亮 語る“と題されたインタビューが掲載されている。
その中で、クドカンは、<大学をドロップアウトしかけていた時に、原作小説を読みました。『何かやらなきゃ』という焦りがあったんでしょうね。小説の持つエネルギーにやられ、『大人計画』に入りました(笑)>と話している。
クドカンは、季節のない街を仮設住宅とする。そこに暮らす人は、ひと癖もふた癖もあり、普通では生きづらい人も多い。 しかし、“街“は彼らを暖かく、時には冷淡に包んでいる。
その一人、ホームレスの男は黒澤版では三谷昇だが、本作では又吉直樹が演じる。皆川猿時(猫の役)、荒川良々、伊勢志摩といった「大人計画」陣に加え、ベンガル、藤井隆(怪演!)といった個性派がただでさえ混沌とした街の生活を盛り上げる。
中でも、映画「ドライブ・マイ・カー」に出演した三浦透子が凄い! 彼女にしかできない役作りである。
彼らを、作者の視点・視聴者の視点で見つめるのが池松荘亮。前述のインタビューで、こう語っている。
<人をいたわるとか、全然頭にない人々がわあわあ言って、そのことで勝手に救われる人たちがいるんです>
みな自分が生きることに必死である。それでも、周囲の人々への好奇心・興味は持っている。そして、それぞれの利害で行動を起こす。それが、不思議と調和し、生きるためのエネルギーが増幅される。それが、コミュニティというものかもしれない。
明日は、原作について少々書くことにする
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