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神田伯山が絶賛していたので〜山本薩夫監督・橋本忍脚本の「白い巨塔」は面白い!

昨年、春日太一が脚本家の橋本忍について書いた力作「鬼の筆」(文藝春秋)が出版された。未読なのだが、今年中には読もうと思っている。

橋本忍は黒澤明監督とは多くの代表作でタッグを組み、野村芳太郎監督とは「砂の器」(1974年松竹、山田洋次と共同)などを手掛けるなど、日本を代表する脚本家である。前述の評伝出版を記念し、池袋の「新文芸坐」で記念の上映会が行われているようで、それを見た神田伯山が、ラジオである作品を絶賛していた

山本薩夫監督、山崎豊子原作、そして橋本忍脚本の「白い巨塔」(1966年大映)である。

原作は読んでいるが、この映画は未見。ハワイ行きの飛行機で観ようと、iPadにダウンロードしておいた。

キネマ旬報ベスト・テン1位を含め、数々の賞を獲得した作品にコメントするのはいまさらだが、滅茶苦茶面白かった。

主人公の財前五郎には田宮二郎、彼と対照的に描かれる医師が里見だが、これには田村高廣。どちらも、ピッタリとハマる。

財前五郎は浪速大学医学部第一外科教授の座を、とてつもない貪欲さで求めていくのだが、それを取り囲む同大学の教授陣が、これ以上ないほどのアクの強さでドラマを盛り上げる。その代表が東野英治郎と小澤栄太郎。さらに、1974年から「男はつらいよ」のオイちゃん役をつとめる下條正巳が、渋い役どころをこなしている。

極め付けは、財前五郎の舅であり義父の財前又一(石山健二郎)。産婦人科医院の院長で、大阪医師会の副会長だが、教授選で苦境に立つ五郎に、「なんぼや、なんぼいるんや?」と迫る。その野心・欲望が画面から飛び出さんばかりである。

小説「白い巨塔」は、正編が1965年に刊行されており、本映画は正編を描いている。続編は1969年に出版され、今は一つの作品として文庫化されているが、私は断然正編が好きであり、その意味でも映画「白い巨塔」を好む。

この記事の本旨は、“「白い巨塔」はやはり名作、見るべき一編だった。是非ご覧ください“なのだが、後日譚を記す。

当時の田宮二郎は、「悪名シリーズ」(1961年〜)で、勝新太郎の弟分を演じるなど、大映の看板役者だった。しかし事件が起こる。先日紹介した中川右介著「社長たちの映画史」(日本実業出版社)にも、そのことが記述されていた。

1968年今井正監督の「不信のとき」。<田宮二郎は映画の中では主人公だったが、ポスターでは、岡田茉莉子、若尾文子、加賀まりこに次いで四番目だった>。これに田村は撮影所長に抗議する。自分はスターだし、<一九六六年の「白い巨塔」では俳優としても評価されたとの自負がある。何しろベストテン一位映画なのだ。それなのに大映では女優の下という扱いなのが、我慢できない>。

大映の永田雅一社長は、田宮の主張を認めるも、<「私が辞めるか所長が辞めるしかない」>と迫る田宮二郎との契約を更新しなかった。<会社の人事に一俳優が口を出すことを認めなかった>のだ。永田は、

<各映画会社に対し、田宮を映画とテレビ映画に出さないように通達した>。幸い、五社協定も実質的な効力を失っており、田宮二郎は1969年東映映画で復帰する。とはいえ、3年間は干されたことになる。

1978年田宮二郎主演で、テレビ・ドラマ版「白い巨塔」が始まる。続編も含む完全映像化で、田宮の他、映画版に出演した小沢栄太郎、加藤嘉も出演する。大いに話題になっていたが、高校生の私はドラマ離れしており観ていない。しかし、放送終了間近のタイミングで、田宮が猟銃自殺したというニュースは、鮮明に覚えている。

ドラマ版も観たいのだが、オフィシャルな配信にはなっていないようだ


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