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監修…笹井勝子『不思議の国の〝アリス〟 ルイス・キャロルとふたりのアリス』

 ナンセンスをセンテンスにした作家ルイス・キャロル…本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジスン。

 アリスのモデルとなった少女アリス・プレザンス・リデル。

 これは、二人の生涯についてまとめた本。

 もしもドジスン先生と現実のアリスが出逢わなかったら?

 もしも不思議の国のアリスの物語が即興で浮かんでこなかったら?

 もしも現実のアリスがその物語を気に入って、「アリスのお話を書いて欲しいの」とドジスン先生に頼まなかったら?

 もしもそうだったら、世界中の人々がこんなにもアリスの世界を愛することはなかったのだ…と思うと、不思議な気分になります。

 本当に偶然生まれた傑作なのですよね。

 …けれど…、ドジスン先生と現実のアリスの距離はどんどん離れていってしまったそう。

 ドジスン先生は現実のアリスに恋をしていたけれど、二人が結ばれることはありませんでした。

 それも哀しいことですが、もっと切ないことがあります。

 現実のアリスは、『不思議の国のアリス』の基となった『地下の国のアリス』の、ドジスン先生によって現実のアリスのためだけに手作りされた世界にたった一つしかない本を、大人になってからお金に困って売ってしまったそうなのです。

 幸い、「手稿本はやはりイギリス国民のものであるべきだ」という、アメリカの善意ある人々によって、その本は大英博物館にて現在も保存されているそうですが…。

 …うーん…、何だか複雑…。

 寂しいけれど、でも、ドジスン先生も、自分の贈り物が、大好きな人の生活の足しになって喜んだ…かも? 

 なんだかモヤモヤしますけれど…。

 さて、この本、ページを捲っているだけでも楽しいです。 

 白ウサギ、ハートの女王、チェシャ猫などなどオリジナル挿絵も掲載されていますし、物語の舞台となったイギリスの風景写真も載っているしで、ページを捲る度に、自分も不思議の国を旅をしている気分になります。

 画家ジョン・テニエルによるオリジナル挿絵だけではなく、アリスに魅せられた他の画家たちが描いた色んなアリスが紹介されているのも素敵!

 現実のアリスは黒髪だけれど、物語のアリスが金髪なので、さすがにみんなそれに影響されてしまって金髪のアリスを描いていますが、画家によってイメージが違うアリスが出来上がっているので、見ていて楽しいです。

 例えば、マリー・ローランサンやサルヴァドール・ダリも!

 それぞれの持ち味が出ていて味わい深いです。




 〈こういう方におすすめ〉
 『不思議の国のアリス』シリーズが好きな方。

 〈読書所要時間の目安〉
 3時間くらい。

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