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著…葉室麟『洛中洛外をゆく。』

 葉室さんが自身の小説にゆかりのある京都の名所を巡りながら、主人公たちに託した想いを語る本。

 どの名所も、和の空間特有の、静謐な中にも底知れぬ力強さを秘めています。

 その中で葉室さんが紡ぐ言葉は、哲学的なものばかり。

 例えば、仁和寺「遼郭亭」、養源院といった地に関連して書かれた『乾山晩愁』の中で、こう書いています。

 「光り輝くものだけが、この世に存在するわけではない」

(葉室麟『洛中洛外をゆく。』 単行本版P45から引用)

 と。

 痺れます!

 きっと闇の美しさや、光とも影とも呼べぬ揺らぎの儚さも見つめていらっしゃったのでしょう。

 わたしはもっともっと葉室さんの作品を読んでいたかった。

 亡くなられたのが非常に残念です。

 「僕は今、六十六歳。友松が『雲龍図』を描いたのが六十七歳のときです。彼のエネルギーには及ぶべくもありませんが、僕自身、五十代で小説家としてデビューして〝小説を書く〟ことに自分自身を見出したのなら、とことんやり尽くしたい。何があろうとも、見えているものがあるならば、書いて書いて、書き通したい」

(葉室麟『洛中洛外をゆく。』 単行本版 P103から引用)

 と語ったその年に、まさか病気のためお亡くなりになるとは…。

 命というものは本当に不思議ですね。

 この世で為したいことがあり、それを応援したい人たちが沢山いるにも関わらず、こうして志半ばで亡くなることもあるわけですから…。

 病は、人間の都合などお構いなしですね。

 誰もが明日をも知れぬ命を生きていて、だからこそ命を大切にしなければならないわけですが、何とも言えない気持ちになります。

 「悔しい」と言うべきか「悲しい」と言うべきか、分からないけれど…。

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